「心常念悪」と最初に説かれており、心が根本であることを表しています。ですので、火の元である心の悪を消す必要があります。
安土桃山時代の大盗賊、石川五右衛門は釜茹での刑に処される前に、次の辞世の句を詠んだといわれています。
「石川や 浜の真砂は 尽きるとも 世に盗人の 種は尽きまじ」
これは、「私を処刑し、砂浜の無数の砂がなくなっても、世に盗人の種は尽きないぞ」という意味です。つまり、人間の心に盗人の種があるのだから盗人は次から次へと出てくるぞと言っているのであり、心が火の元であると言っているのです。盗みは悪いことですが、真実を衝いた句です。
ユネスコ憲章には、「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」とあります。
アインシュタインは、「科学が戦争という脅威をもたらしたが、本当の問題は、人々の頭と心の中にある」と言いました。
東条英機は、「人間の欲望は本性であり、国家の成立も欲からなり、自国の存在だとか、自衛というようなきれいな言葉でいうこともみな国の欲であり、それが結局戦争となるのだ」と言いました。
戦争を体験した、ある女性兵士はこう語っています。
「戦争中どんなことに憧れていたかわかるかい?あたしたち、夢見ていた、『戦争が終わるまで生き延びられたら、戦争のあとの人々はどんなに幸せな人たちだろう!どんなにすばらしい生活が始まるんだろう。こんなにつらい思いをした人たちはお互いをいたわりあう。それはもう違う人たちになるんだね』ってね。そのことを疑わなかった。これっぽちも。
ところが、どうよ・・・・え?またまた、殺し合っている。1番理解できないことよ・・・・いったいこれはどういうことなんだろう?え?私たちってのは・・・・」(「戦争は女の顔をしていない」より)
ストーカー被害を受け続けた末に殺害された、逗子ストーカー殺人事件。被害者の夫は、「殺意が消えない限りいつか殺されていた」と語ります。また被害者の兄も、「警告があって、逮捕もあって。ある意味、やれることは、かなりやっているわけですよね。それでも、まったく止めることはできない。それを考えていくと、単に相手に罰を与えるとかいうことよりも、もう加害者を止めるしかない」と語り、「治療やカウンセリングなど、罰則だけでなく最悪の事態になる前の措置が必要」と訴えます。
口や身体の悪の1部を取り締まるのが法律です。心は対象外で、どんなに悪いことを思っても捕まりません。これから心の科学が進み、心も法律の対象となるかもしれませんが、進んだ法律というのはそうであるべきです。
・心の悪が見えてくる
肉眼では見えなかった小さなものがルーペ(虫眼鏡)で見えるようになり、ルーペでも見えなかったものが顕微鏡で見えるようになります。ちょうどそのように、法律では見えなかった口や身体の悪が道徳・倫理で見えるようになり、道徳・倫理でも見えなかった心の悪が仏法で見えるようになります。
また、顕微鏡の倍率が上がるほど、より小さなものが見えるようになるように、聴聞して自己を知るほど、より深い心の悪が見えるようになります。
そして、肉眼で見えないからといってウイルスやガンを放置しておけばやがて重大な結果をもたらすように、無明という重い病(詳しくは第3巻)を放置しておけば地獄という重大な結果をもたらします。
・心の悪は消し難い
しかし、これまで様々な事例で見たように、心の悪は消し難いものです。
「見ざる、聞かざる、言わざる」はできても「思わざる」だけは難しいことです。
「悪性さらにやめがたし こころは蛇蝎の如くなり」(悲嘆述懐和讃)
(訳:悪性はどうしても止め難く、心は非常に醜い)
よく「戦争は人の心を鬼に変える」といわれます。この表現だと、もともと善人だった人が戦争という悪縁によって悪人に変わると聞こえますが、そうではありません。人間は皆、元より極悪人なのです。