どんなに幸せそうに見える人であっても、人間は皆、例外なく苦しんでいます。

芥川龍之介は「人生は地獄よりも地獄的である」と表現しています。本当の死後の地獄を知らないから彼はこのように言っているのですが、このように表現したくなるくらい人生が苦しいところであるという点ではその通りです。

苦しみばかりで、たまに無常の幸福があるというのが人生です(幸福が無常であることについては第2巻)。

そのことを様々な人が様々な言葉を使って表現しているので少し紹介します。

 

「人生とは自転車のようなものだ。倒れないようにするには走らなければならない」(アインシュタイン/物理学者)

 

「人間に課してきた人生を神も生きてみよ、という判決が突きつけられたら、神は自殺するだろう」(アレクサンドル・デュマ/小説家)

 

「我々は泣きながら生まれて、文句を言いながら生きて、失望しながら死ぬ」(イギリスの諺)

 

「人間の生活は、男性にとっても、女性にとっても初めから地獄なのだ。絶えざる労苦、病との戦い、死の恐怖、産みの苦しみ、社会や国家の重圧、習慣や道徳の拘束、人間は初めから地獄の中に生まれ、地獄の中で活きているのだ」(石川達三著「幸福の限界」より)

 

「たぶんこの世は、別の惑星の地獄に違いない」(オルダス・ハクスリー/作家)

 

「どうしても、万事は享楽というよりは骨折りであり、心労である」

「結局、わたしの75年の全生涯で真の幸福を感じたのは、4週間もなかっただろう、残りの人生は苦悩に満ちたものだった」(ゲーテ/詩人)

 

「国を建つるには千年の歳月も足らず、それを地に倒すには一瞬にして足らん」(ジョージ・ゴードン・バイロン/詩人)

 

「生きるということは大変なことだ。あちこちから鎖が絡まっていて、少しでも動くと血が噴き出す」(太宰治/小説家)

 

「人間にとって一番善いことは生まれないことであり、次に善いことは一日も早く死ぬことである」(テオグニス/哲学者)

 

「人の一生は重荷を背負うて遠き道を行くが如し」(徳川家康/武将)

 

「智に働けば角が立つ。情に棹せば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角にこの世は住みにくい」(夏目漱石/小説家)

 

「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」(林芙美子/小説家)

 

「大多数の人間は、静かな絶望の生活を送っている」(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー/作家)

 

「私も青春のことを懐かしみ、若い人を羨むことがある。しかし、もう一度若くなって世の中を渡ってこなければならぬと思うと、何よりも先に煩わしい思いがする」(正宗白鳥/小説家)

 

「生は苦だと言うこと。明白に知ることが必要だ。生ある限りは戦である」(水木しげる/漫画家)

 

「人間には進歩か退歩かのいずれかがあって、その中間はない。現状維持と思うのは、実は退歩している証拠だ」(森信三/哲学者)

 

「青春の時期は、いつの時代でも恥多く悩ましいものだ。もう一度やれと言われてもお断りしたい」(吉行淳之介/小説家)

 

「準備十年、成功五分」(ロアール・アムンセン/探検家)

 

・誰でも1度は死にたいと思っている

どんな人でも「死んだほうが楽だろう」と1度は思ったことがあるものです。

たとえば、お笑いタレントの松本人志は、あるテレビ番組で、「自殺を考えたことなんてないでしょ?」と質問されて、「いや、そんなことないよ俺。何度かはあるよ」「もうええかって思った瞬間みたいなのは、生まれて・・・・ないですか?1回か2回ない?」と答え、共演者であるタレントのヒロミも「もういいかなって思ったことはあるね」と同意していました。松本は、女優の竹内結子が自殺した際にも「やっぱり、何度か俺もちょっとそういうことがね。自分で終わらしたると思った、よぎることって実は何度か俺もあるのね」と語っています。

また、ビートたけしも、バイク事故で重傷を負った時に、次のように「(事故は)無意識の自殺みたいなものだった」と自殺しようと思って自ら引き起こしたのではないかと振り返っています。

「今になって考えてみると、オレは自殺したんじゃないかって思うことがある。あれは自殺だったと考えるのが一番無理がない。自殺したいって意外に理由が見つからないから」

そして、次のようにも語っています。

「急に爆発するから怖いよね。俺、電車に乗るの怖いもん。ホームから飛び降りる気がしてイヤなんだよね。なんかフワッっとなるときあるじゃん。だからすごく怖いの。そういうことをあんまり言わないようにしてんの。ほんとになっちゃうとイヤだから」

イギリスの元首相ウィンストン・チャーチルは、BBCが行った「100名の最も偉大な英国人」の世論調査で1位にもなった人ですが、彼は次のように自殺の衝動に対する恐怖を語っていました。

「私は、特急列車が通り過ぎるときに、ホームの前の端に立っているのがいやだ。後ろのほうに立っていたい。できれば列車と私の間に柱をはさんで立っていたい。私は船のへりに立って海をのぞき込むのがいやだ。一秒の行動がすべてを終わらせてしまう。ほんの少しの自暴自棄な気持ちが」

実際、自殺者は多く、日本では2万1321人(2017年)となっており、10~39歳の各年代の死因の第1位です。

また、「日本財団自殺意識調査2016」によれば、53万5000人が自殺未遂を経験、25.4%(約4人に1人)が「これまでの人生の中で本気で自殺したいと考えたことがある(自殺念慮)」と答えています。

人間には無有愛といって、無になりたい(死にたい)という煩悩があります。

「死にたいと思ったことがない」などと言う人は気づいていないだけです。

「私は精神科医、また1人の人間として、この世には自殺願望から常に離れられない人々がいることを知っている。私はそうした人々に、精神科医がよく言う、あのありきたりの決まり文句を捧げたい。

『もし100人の人に、あなたは自殺したいと思ったことはありますかと聞けば、90人はありますと答えるでしょう。そして残りの10人は嘘をつくでしょう』

笑い話のようだが、これは真実である」(レイモンド・ムーディー/精神科医)

 

・自殺は愚か者

ちなみに、どんな理由があろうと自殺は愚か者がすることです。感情的な反発が聞こえてきそうですが、客観的にはこう言えます。自殺者は、意識するとしないとにかかわらず、死ねば今の苦しみから解放されると期待して自殺します。しかし、死後は地獄なので、楽になるどころか「飛んで火に入る夏の虫」で、今とは比較にならない苦しみを受けることになります。

「地獄などというのは、自殺を防止するために釈迦が説いた架空の世界」と思っている人もいますが、そうではありません。結果として自殺の防止になるだけです。

ちなみに、「死後が良い世界」だと信じていれば、ギリギリの状況に追い込まれた時に自殺しやすくなるでしょう。現代超心理学は、「死後が良い世界」という主張で溢れていますが、これは現代超心理学の弊害の1つといえます。

そもそも、死後がどういう世界か明らかになっておらず、そして死後が今よりも苦しい世界であるかもしれないのに、今、苦しいか否かだけで判断して自殺しようとするのは博打のような危険極まりない行為です。

また、第2巻でみたように、人間に生まれる有難さを知らないという点から見ても自殺は愚か者です。

他にも理由はありますが、自殺は無知からくる悲劇なのです。

もっとも、こういったことをほとんどの人は知らないのですから、愚か者は自殺する人だけではありません。

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1.1どんな苦しみがあるか
四苦八苦
煩悩
例外なく苦しんでいる
老苦
病苦
愛別離苦