脳の同期現象も興味深いです。
1960年代、心理学者のチャールズ・タートによる実験です。
ある部屋で参加者に電気ショックを与える実験を行ったところ、別室にいた他の参加者たちも、実際に電気ショックを受けたのではないにもかかわらず、非局在的なレベルで痛みを感じることを発見しました。参加者が痛みを感じたかどうかは無意識的な肉体の反応を記録することで明らかになったのであり、意識的なレベルでは、彼らは他人の状態を知覚していたわけではありませんでした。
1970年代、物理学者のラッセル・ターグとハロルド・パソフも同様の実験を行っています。
ある部屋で被験者の目に光りを点滅させ、別の隔離された部屋で別の被験者の脳波を脳波図によって記録する、という実験を行ったところ同じような結果が得られています。
この種の実験は他にもなされており、今はfMRIを導入してより科学的に行われています。
また、1965年に一卵性双生児で脳の同期現象が確認されて以降、「夫婦」「カップル」「友人間」などでも起こることが報告されています。親しさが深いほど同期しやすいようで、たとえばエジンバラ大学の心理学者マリオス・キテニスらによれば、感情的なつながりのあるペアと無作為に割り当てられたペアとで違いが現れたといいます。
「自然発生的な脳機能のコヒーレンスは、遺伝的には関係のない人間どうしのあいだでも起こることがある。実験室内で行われた事件で、個人的な結びつきや、感情的な結びつきなどがあるだけで、2人の被験者のあいだで刺激を転送するに十分である場合が多いということが明らかになっている」(アーヴィン・ラズロ/ニューヨーク州立大学教授)
ラズロは次のような話もしているので、ここで紹介します。
「平均的な一人の人間が生涯に経験するすべての知覚、感覚、感情を保存できるような容量は脳にはなく、このことは大きな謎であった。コンピュータ科学者のサイモン・バーコビッチは、一人の人間の生涯の経験すべてを生み出し保存するには、脳は毎秒10の24乗もの操作を行なわなければならないことを計算によって明らかにした。
オランダの神経生物学者ヘルムス・ローミンは、脳内に存在する1000億個のニューロンすべてが関与したとしても、このようなことは不可能だと示した。そして実際、脳内のニューロンのすべてがそのような活動に関わっているわけではない。大脳皮質には200億個のニューロンしか存在せず、しかもその多くは、はっきりした脳の機能を担ってはいないのである。
しかしこれは何ら問題ではない。なぜなら、長期記憶は脳の内部に保存されているのではないからだ。長期記憶は体外に保存されているのだ」
3歳の女の子が難治性てんかんのため右半球を切除、その頭部CT写真が公開されました。女の子は手術後に一時言語を失いますが、その後回復し、7歳の時点では言語機能に大きな障がいはないと報告されています。(ランセット,2002)
その他、大人の言語機能の回復例も多数報告されています。
「この分野の専門家であるカッパ博士は、言語機能の回復の説明の1つとして、脳のある部分が担っていた言語機能を別の部分が担うようになるという可能性を挙げています。もし、この考えが正しければ、抽象的なレベルの言語機能は別の次元にあり、その役割を担う場所が変更されただけだということになります。そして、失語症は、言語そのものを失うことではなく、脳内に存在する言葉を、必要な時に自由に取り出す神経回路に、何らかのトラブルが生じている状態だと考えることができます」(大門正幸)
また、同じくランセット(2007年)には、脳疾患を疑って調べたところ脳内がほとんど空洞だったという男性の事例が紹介されています。
無脳症という症状もありますが、人間は脳が無くても生きていけるのかもしれません(もちろん健常者ほどではないにしても)。
そして、神経科学者のアンドリュー・ニューバーグ(トーマス・ジェファーソン大学医学部教授)によれば、霊媒が無意識に意味のある文字を書く、いわゆる自動書記中の脳をスキャンしたところ、筆記という言語活動の最中であるにもかかわらず、言語に関する領域である側頭葉の活動が劇的に減少していたといいます。