「生まれ変わり研究」で知られるヴァージニア大学の児童精神科医、ジム・タッカーは、「心が体に変化を生み出し、たとえばストレスが病気の一因になるが、そのことよりもはるかに認識度が低く、その重要性がまったく理解されていない概念」として、「頭に描いたイメージが、体に非常に明確な変化をもたらすことがあるという考え方」を挙げています。
私の実感としても、まだあまり知られていないように感じるのでここから取り上げます。
・プラセボ効果
・催眠
・信念
・多重人格
・心の力で脳が変わる
「偽薬(プラセボ)の投与によってみられる治癒効果。薬物そのものの効能ではなく、投薬された安心感や医師への信頼などの心理作用によって症状が改善する状態をいう」(大辞泉)
たとえば、ノンアルコール飲料を飲んで、ほろ酔いと同じような気分の変化が起きるといった実験など、数多くの事例がありますが、ここでは少し劇的なものを紹介しましょう。
まずは、心身医学の草分け的存在である池見酉次郎(九州大学医学部教授)が紹介している事例です。
漆にアレルギーを持つ人の片方の腕に漆を擦りつけ、もう片方の腕には漆に似た別のものを擦りつけます。漆をつけた腕に発疹ができ、そうでないほうの腕にはできませんでしたが、実はラベルが逆に貼られていたことを被験者には知らされていませんでした。漆でないものに触れたのに、漆に触れたと思ったために発疹ができたのです。
次のクレビオゼンの実験も有名です。
ある悪性リンパ腫がかなり進行した患者がクレビオゼンを懇願しました。この薬はガンによく効く新薬として開発され、この患者に投与したところ効果があり腫瘍がなくなりました。しかし、後日、この患者がクレビオゼンの効果を否定する情報を知ったとたん容体が急激に悪化してしまいました。そこで次に、医師が嘘をついて、プラセボをクレビオゼンの2倍の効果のある新しい薬として投与したところ今度は好転しました。しかし、クレビオゼンはガンの治療にまったく効果がないという医師会の最終報告を知るや悪化し死亡してしまったというものです。
他にも、偽の手術でも本物の手術と同等か、それ以上の効果があったという報告もあります。(New EnglandJournal of Medicine)
たとえば、「火傷が起こります」と暗示をかけると火に触れていないのに実際に火傷ができたり、ロープに縛られた時の体験を暗示するとロープの跡のように見える深く細かい凹凸がたくさんできるといった事例があります。同様に、体に文字を浮かび上がらせたり、女性の乳房を大きくしたり、出血を抑制したりといった事例もあります。
ハーバード医学大学院の心理学者、ディードリ・バレットによる、ある同性愛者の男性に催眠術を施した事例も変わっています。彼は長い間、子供を身ごもりたいと願い続けており、暗示をかけたところ、妊娠したわけではないのに腹部が大きく膨らみ、乳房ができて母乳が出て、つわりまで起こったといいます。
ちなみに、モントリオール大学の神経科学研究センターにて准教授を務めるマリオ・ボーリガードによれば、「現在西欧においては、局所麻酔と催眠術との併用がどんどん一般的になってきている」とのことです。
次の事例はスタンフォード大学医学部などで教鞭をとる細胞生物学者のブルース・リプトンが紹介している、いわゆる火事場の馬鹿力です。
「車に閉じ込められた息子を救おうとしたアンジェラ・カバロは、意識のない息子を救い出すまでなんと5分間もシボレーを持ち上げていた。また、排水溝に閉じ込められた同僚を救おうとして、墜落した約1.4トンもあるヘリコプターを持ち上げた作業員もいる。この場面はビデオに残されており、画面では同僚が助け出されるまで作業員が確かにヘリコプターの残骸を高く持ち上げていた」
「火渡りを体験した人、毒を飲んだ人、車を持ち上げた人、さらに治療も何もしないで病気を鎮静化させた人には共通する特徴がある。それは、自分がやっていることをやり抜こうとする強い『信念』があったことだ」
同じ人でも出てくる人格によって身体的変化が起こります。
「母親によって何度もタバコを押しつけられた経験を持つある女性の場合は、ある交代人格が表に出てきた時にだけ、皮膚に赤い傷跡が浮かび上がったのである。また、ヘロイン依存症の交代人格を持つ女性の場合は、その人格が出てきた時に限り、注射針の痕が皮膚に現れた。現れる交代人格によって異なる身体的変化が起こるのは、動かしがたい事実である」(マリオ・ボーリガード)
心は首から下の身体だけでなく、脳へも影響を与えます。
「自分がどのような行動をとり、何を感じ、何を考えるかに依存して、脳はどんな方向にも変わることができるのだ」(茂木健一郎/脳科学者)
「見るもの、聞くもの、感じるもの、味、匂い、すべてが脳の回路を形成する可能性をもっている。脳の回路は文字通り経験によってできていく」(ジェフリー・M・シュウォーツ/カリフォルニア大学精神医学研究教授) 「現代の脳科学の最大の発見のひとつは、神経可塑性だ。それは変化に対応するために脳がもつ能力で、人の脳は体験や環境の必要に反応して新たな神経回路を形成できるのだ。もうひとつの発見は、遺伝子の発現を変えるエピジェネティクスだ。神経可塑性とエピジェネティクスは、祖先の病気に悩まされ続けたり、祖先の信条に永遠に縛られる必要はないことを私たちに示している。決して可能だと思わなかった健康状態や精神的鋭さ、想像もしなかった叡智を手にすることができるのだ」(アルベルト・ヴィロルド/サンフランシスコ大学教授)
イメージ療法のサイモントン療法で知られるカール・サイモントンは、「ポジティブとネガティブ、これらのイメージはすべて、あなたのからだに細胞のレベルに至るまで影響を及ぼしている」と言っていますが、この分野は、「ポジティブに捉えれば健康になり、ネガティブに捉えれば病気になる」という単純なことを示しているといえます。
ちなみに福来は、よく接する人や生き物と顔が似てくる理由について、「強い観念となって精神中に印象され、観念が顔の細胞に働きかけるからだ」と言っていますが、これを裏づける分野でもあるでしょう。