9月6日 部屋と絵と登場人物をみっちり紹介——物語は始まらない | 「白鯨」日記

9月6日 部屋と絵と登場人物をみっちり紹介——物語は始まらない

 さてさて「白鯨」。実は訳文がかなり古式ゆかしい。
 主人公イシュマールがたどり着いた宿は、旅宿「汐吹亭」。
 さて、ここからも延々と部屋の描写が続く。っつうか、宿の壁に架けられた絵の描写。
 何を隠そう、鯨が書かれている、ってことを伝えるために2ページくらい割くんだから、現代の小説ではおよそ考えられない悠長さだ.

 イシュマールは部屋を借りたいがない。
 夕食(肉と馬鈴薯と蒸し団子)をとり、「銛打ちと同じベッドで寝るのを我慢するなら一泊できる」と言われる。同じベッド(ちなみに同衾と表現)。穏やかじゃない。

 イシュマール、一度は木のベンチで眠ることも考えたが、さてさて、銛打ちと会ってもいないのに悪い想像ばかりして柔らかいベッドに眠るのを拒むこともあるまいと気を変える。
 ああ、はっきりすりゃいいじゃん。眠る所に悩むことがそんなに物語と関係あるんかい。

 さて、部屋で待つイシュマールのもとへ銛打ちが現れる。差別用語の連続だ。
 ビーバーの毛皮の帽子を取ると髪の毛は一本もない。なもんでイシュマール、たまげてしまう。
 そんなにびっくりするか?

 服を脱ぐと市松模様のくろいものが付いているってことは入れ墨と思うが。
 イシュマール、「南海の捕鯨船に乗せられて来た、このキリスト教国に上陸した忌まわしい蛮族かなにか」っつうんだから穏やかじゃない。

 そんな銛打ちがベッドに潜り込んで来たもんだからイシュマール、叫び声を上げてしまう。
 宿の親父を呼ぶと親父、無責任に大笑いする。
 この銛打ちが、どうやらこの小説「白鯨」の主要人物になるらしいクィークェグだ。

 夜中は「殺すぞ」なんて大げんかをしておきながら、朝起きたらクィークェグはイシュマールを抱きかかえるようにして寝ている。
 こでイシュマール、「わたしの受けた感動は異様なほどであった」って、なんでよ。

 イシュマールが言うには、継母に受けた罰を思い出すんだそうな。
 午後2時からずーっと寝てなくちゃいけない罰。
 そのとき、何やら幽霊のような超自然的な何かに手を握られていた恐怖を感じた、とイシュマールは言う。
 そのときを、クィークェグに抱きしめられて寝ていたことで思い出した、っつったら普通、感動するんじゃなくて怖いんじゃないの?

 ということで、なんでこんなに長い文章をかけて登場人物を紹介するのか、高スピードで駆け抜けて行く現代人には理解できぬまま、新潮文庫版上巻79ページまで。
 426ページまでたどり着くのはいつ?