前回の記事で、宿が無しとかホームがレスとか書いてましたが、公園で寝たりダンボールで家作ったりとかではないのでご心配なく。
心配させたお詫びにショートショートをひとつ。
(ちなみにショートショートとは、短編小説より短い小説のことです)
明日はハロウィンですよね。
私は北海道の田舎育ちなので、ご近所さんをまわってお菓子を貰ってくるというのは、子供の時にやっていました。
あれは確か私が小学校3年生の時だったと思います。
何がきっかけだったのかは憶えていないのですが、「誰が一番多くお菓子を集められるか」という勝負を、同じクラスの仲の良い友達でやることになりました。
10月31日、ハロウィンの夜。
夜と言っても、小学校3年生の夜だから、たぶん夕方6時とかだったと思います。
私は自分の家の近所をまわり、お菓子を集めました。
近所のおばさん達は、お菓子を用意して待っていてくれたので、すぐに1日じゃ食べきれないほどのお菓子が集まりました。
これだけあれば私の優勝だろうと、意気揚々と家に帰る途中、「誰が一番多くお菓子を集められるか」の勝負に参加している友達のAちゃんと会いました。
Aちゃんは両手に抱えきれないぐらいのお菓子を持っていました。
話を聞くと、他の友達も同じぐらいお菓子をもらっているとのことでした。
このままでは私の負けになっちゃう、でももう近所の家はほとんど行ってしまいました。
そんなとき目に入ったのは、近くにある大学の学生寮でした。
お母さんからはなぜか、この学生寮には近寄ってはいけませんと、よく言われていたので最初は躊躇しましたが、勝負に負けてクラスでバカにされるのは嫌だったので、学生寮へと足を進めました。
「とりっく・おあ・とりーと!」
玄関を開け、元気よく叫ぶと、数人のお兄ちゃんが驚いた顔で私を見ました。
一瞬の静寂が流れたあと、急に賑やかになって、たくさんのお兄ちゃん達が集まってきました。
当時小学校3年生で、何も知らない子供だったのですが、本能的に危険を感じました。
次の瞬間、1人のお兄ちゃんが言葉を発しました。
「なつかしー!俺も子供の頃よくやったよー!」
その一言をきっかけに、私の頭の上で、たくさんの声が飛び交いました。
そして、一度奥に行き、戻ってきたお兄ちゃんたちは、たくさんのお菓子をくれました。
お菓子と言っても、チョコやクッキーの他に、スルメとかジャーキーとか当時あまり見たことの無いお菓子もたくさんありました。
私はお兄ちゃんたちにお礼を言い、玄関を出ました。
帰ろうとすると、1人のお兄ちゃんが声を掛けてきました。
「寄り道しないで帰るんだよ、決してこの奥の第2寮には行っちゃいけないよ。」
私がなぜかと尋ねると、そのお兄ちゃんは言葉を濁しながら言いました。
「第2寮にはね、ロリ研の人がいるからね、危ないんだよ。」
「ろりけん?ろりけんってなーに?」
「えーとね、子供が好きな人たちの集まりっていうか、とにかく近寄っちゃダメだよ、わかった?」
私は素直に返事をし、お兄ちゃんとバイバイしました。
そして、そのお兄ちゃんが寮の中に入るのを確認すると、Uターンをし、第2寮に向かいました。
もっとお菓子を貰うんだ、子供が好きな人たちの集まりだったら、もっとたくさんのお菓子がもらえるはずだ。
「とりっく・おあ・とりーと!」
さっきより元気よく叫ぶと、薄暗い廊下の奥のほうから数人のお兄ちゃんが出てきました。
「とりっく・おあ・とりーと!お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ!」