まだ、日本に住んでいた青年時代。
長兄は、統合失調症で自宅療養していた。
長兄は、２階の部屋に住んでいて、
たまに幻聴が聴こえて、
母が長兄の悪口を言っていると、怒って、
２階から足音をドタドタと響かせて走り降りて、
母を乱打。
僕が、止めに入ると、
キッチンの包丁を振りかざして、僕を脅（おど）した。
その間に、母は、地下に逃げて、
長兄は、僕に包丁をかざしながら、
ゆっくり、地下への階段を降りて行った。
間も無く、母の「お兄ちゃん、やめてー」と言う
悲鳴が聞こえた。
僕は、居ても立ってもいられなくなり
地下に急いで走り降りると、
長兄は、包丁をどこかに放り投げて、
母を乱打しているところだった。
僕は、一喝、「やめろっ！」と叫んだ。
僕は、昔から、声は大きく、
その一喝は、長兄を怯（ひる）ませた。
長兄は、目から覚めたように、
２階の自分の部屋に、戻って行った。
けれど、
みなさんは、ここで、話を切り取って欲しい。
長兄が包丁を振りかざして、
地下への階段をゆっくりと、降りて行く。
間も無く、母の悲鳴が、聞こえる。
この光景だけ、
フラッシュバックのように、
僕の記憶に、呼び覚まされる。
当時、統合失調症の孫が、
祖母を殺害、
と言う事件も、あった。
僕の日常は、普通では、なかった。
いつ、長兄の幻聴が聴こえるのかと、
怯（おび）えて、生きていた。
だからこそ、
精神障害者や、家族を嘲笑（あざわら）う人達を、
容易（たやす）く、許すことが、できない。
お前ら、健常者に、何がわかる、、、
人の痛みのわからない、、、鬼めが、、、と。
鬼武彦 拝
