キノコをかじるアリスの映像の後、舞台は暗くなって、元のサイズのアリス役の女の子がスポットライトを浴びながら舞台上手から歩いて現れてきた。

 

「やっと、元の体に戻れたわ。・・・でも、これから先、どこへ行けばいいのかしら・・・。」

 

アリス役の女の子がスポットライトと共に進んだ先に家があり、そのドアの前で魚の女王様の使いの役の子が、カエルの公爵夫人の召使いの役の子に、女王様からのクロケーの会の招待状を渡しているところだった。

 

「侯爵夫人様、女王様よりクロケーの会の招待状でございます。」

「これはこれは、まことにありがとうございます。」

 

魚の女王様の使いの役の子は大きな封筒を渡して舞台の上手へ消え、カエルの召使いの役の子はすぐに家の中に入らず、ドアの前で大きな封筒を持ったままボーッと立っていた。

 

アリス役の女の子は、カエルの召使い役の子のそばに近寄っていき、「なぜ公爵夫人にその手紙をすぐ渡さないのですか?」 と言った。

 

「今、家の中に入ると危険だ。」 とカエルの召使い役の子は言って、再びドアに背を向けボーッと空を見上げた。

 

「早くその招待状を届けないと、女王様のクロケーの会に間に合わなくなってしまうわ。」

とアリス役の子は、ドアを開けた。

 

「おい、お前。なぜ、その手紙が女王様のクロケーの会の招待状と分かったのだ?」

カエルの召使い役の子が言ったその時、家の中からお皿やフライパンの絵が描かれた小道具が飛んできた。

 

Van Gogh - Hütten zwischen Olivenbäumen und Zypressen
フィンセント・ファン・ゴッホ 作成: 1889年11月30日(Wikipediaより)

 

 

 「ほら見ろ。家の中は危ないと言ったじゃないか。」

とカエルの召使い役の子が続けて言った。

 

「それでも、女王様からの手紙は早く公爵夫人に届けるべきだわ。」

アリス役の子が言い終わると舞台の照明が消え、次に、家の中の場面に切り替わって照明がついた。

 

家の中には、赤ちゃんらしき人形をあやしている公爵夫人の役の子がいて、その横のかまどの前に料理番の役の子が大鍋をかき回しながら、辺りにある皿や調味料入れなどが描かれた小道具を投げていた。

 

「赤ちゃんがいるのに、乱暴に物を投げるのはやめて!」

とアリス役の女の子は、家の中に入ってセリフを言った。

 

そこに、舞台の下手からゆっくりと、黒タイツを履いたニヤけた猫の大きなお面をつけたチェシャーねこ役の子が現れ、「そうさ。みんな、自分のやりたいことをやりたいようにやっているのさー。」 とセリフを言った。

 

「みんながみんなそうだと、この部屋のようにめちゃくちゃになってしまうわ。」

とアリス役の女の子は言った。

 

「・・・この部屋のどこがめちゃくちゃなんだい? みんなそんなこと言っていないじゃないか。」

 

「確かに言っていないけど、そう思っているに違いないわ。でなかったら、みんな頭がおかしいわ。」

とアリス役の女の子は言って、カエルの召使いに待状を早く公爵夫人に渡すよう促した。