集団行動のテストは、ショッピングモールの無料遊戯場にあるような大きなソフトブロックを使ったテストだった。

 

かけっこをした時の5人ずつのチームに分かれ、ソフトブロックが用意されたそれぞれの場所へ移動した。

 

「それではまずはじめに、みんなで協力して橋を作って下さい。」

 

・・・はし?

トキムネは橋の形を思い浮かべてみた。

 

だいぶ前に買ってもらったプラレールの立派な鉄橋を思い浮かべてしまったトキムネは、ありゃムリだと思っていきなり詰んでしまった。

 

その間に同じチームの女の子が、長方形の長いブロックを間を開けて横に並べ、その上に長方形の長いブロックを方向を変えて乗せた。

 

チームの他のみんなはハッと思って、その形を基本に立派な橋を作り上げた。

2人の先生は、それぞれの子どもたちの動きを詳しく書き留めていた。

 

「はい。よくできました。次作るものは、何でもいいですから、みんなで相談して作って下さい。」

と先生の1人が指示を出した。

 

チームのみんなは、顔を見合わせて誰かが何か言うのを待ちはじめた。

 

「ここに大きなお城を作ろう!」

今までの運動テストを上手くこなして調子に乗っていたトキムネは、ここ1番で下剋上武将の大風呂敷を広げるような提案をした。

 

「いいよ。お城を作ろう!」

とチームのみんなが同意してくれて、トキムネたちの築城が始まった。

 

レゴランドでムッちゃんと城を作った時のことを思い出しながらトキムネは、土台から作り始めた。

 

チームの他のメンバーは、うまいことそれぞれ役割に分かれて、いろいろな形のブロックを集めてきたり、キレイに積み上げるのを手伝ったりした。

 

最終的にトキムネが思っている日本風の城と、もう1人の積極的に作っている子が思っている西洋風の城が合わさって不思議な形に仕上がった。

 

Van Gogh - Blick auf Saites-Maries1
フィンセント・ファン・ゴッホ 作成: 1888年5月31日(Wikipediaより)

 

 

「はい。よくできました。」

2人の先生は、出来栄えよりも子どもたちの行動を見ていたので、どんなものを作ってもその言葉で締められた。

 

「はい。みんなよく頑張りました。これで今日の予定は全て終わりです。」

 

長い試験が終わり、安堵した表情の子どもたちは再び先生の後ろについて廊下を連なって歩き、親のいる教室へやってきた。

 

子どもたちは親の横に用意された椅子にそれぞれ座り、最後の先生の説明を聞いた。

 

「・・・結果は、後ほど郵送にてご連絡致します。本日は長い時間、お疲れ様でした。」

 

以上で、全て入学試験は終わり解散になった。

 

しかし、最初に配られたものの中に、アンケートが入っていて、これが曲者で、すぐに書き上げられるような内容ではなく、書き終わっていない親が居残って書き続けていた。

 

あらかじめ相性塾で何パターンかのアンケートの予想を聞いて、下書きを書いて持っていたトキムネのお母さんは、難なくこのアンケートはクリアしていた。

 

・・・知っているか、知っていないかということで差がついてしまうのはタテの平等で、ヨコの平等からすれば、せめて前提だけは同じでなくては、となるのだろう・・・。

 

タテの意識とヨコの意識が入り混じった世界で結果を求めるとすれば、ヨコだと思うところをタテで出し抜くという、何だろう、これでいいとは思わないけど、誰もタテとヨコについて厳密に考えさえしないから皆、羅生門の老婆のように仕方ないじゃないかという方向に向かっていってしまう・・・。

 

トキムネのお母さんは、そんなことをぼんやり考えつつも、駐車場まで歩く間、とりあえず、やり遂げたぞという感慨にふけっていた。