トキムネのお母さんは、トキムネがいない朝は久しぶりと思いながら、幼稚園にお泊まりした次の日を迎えた。

 

それならば、和顔小学校までの通学のシュミレーションをしてみようと、トキムネのお母さんはトキムネのお父さんを送り出したあと、自転車で駅に向かった。

 

和顔小学校は最寄りの駅からみんなが通勤・通学で向かう方向とは逆の方向なので、ピークの時間でも乗客は少なく座って行ける感じだった。

 

和顔小学校に1番近い駅までは、15分もしないうちに到着した。

 

トキムネのお母さんは、駅の改札口を出て和顔小学校行のバス停に向かった。

バス停にはすでに目的のバスが停まっていて、トキムネのお母さんは急いでそのバスに乗った。

 

料金箱にお金を入れバスの奥に進むと、和顔小学校の生徒さんらしき子どもたちがたくさんバスに乗っていた。

 

自分たちに楽しいことがあれば、他の乗客のことは見えなくなって騒いでしまう年齢の子たちだけど、みんな行儀よくしていた。

バスの中ではおとなしくしているというようなことをしっかり教育されているようだった。

トキムネのお母さんは、その光景にとても好感を持った。

 

バスはしばらく走って何か所か停留所に停まり、何人かの乗客が乗り降りした。

そしてそのあと、バスは和顔小学校の校門から少し離れた場所のバス停で停車し、和顔小学校の生徒たちが、バスの運転手さんに、ありがとうございました、と言って1人1人降りて行った。

みんなの一番後ろについて、トキムネのお母さんも運転手さんに会釈して降車した。

 

Van Gogh - Ein Paar Schuhe4
フィンセント・ファン・ゴッホ 作成: 1888年7月31日(Wikipediaより)

 

 

 校門の前で和顔小学校の先生が立っていて、バスから降りて元気よく歩いて行く生徒さんたちを迎え入れていた。

 

トキムネのお母さんは、バス停からその様子を遠目で見ていて、来年の4月からトキちゃんはあの中に混じっているのだろうかとぼんやり思っていた。

 

・・・わたしたちのお受験が始まったキッカケは、"少し難しいことを共に学ぼうとする仲間が集まる場所" を求めることだった。

 

電車やバスの中という社会を意識した行動や、先生にみんなちゃんと挨拶している様子を見ていると、わたしたちの求めているものがここにあるような気がする・・・。

 

トキムネのお母さんは、どこの集団も中に入ってからの印象が変わるものだから冷静に見る目は持っていないといけないと思いつつも、社会性が身についているように見える生徒さんを見ると、いいなと思ってしまう。

 

・・・まだここに通うと決まった訳じゃないのに、わたしは何をしているんだろう?

まあ、この時間帯にここまで見にきたのも、普段の生徒たちの様子を見られてよかった・・・。

 

そして、トキムネのお母さんは、反対側のバス停で駅行きのバスに乗り、すれ違うバスの窓から見える生徒たちの様子を見ながら帰った。