トキムネのお父さんの弟のショゴおじさんからトキムネのお父さんの携帯に、キッザニアへいっしょに行かないかとの誘いがあった。

 

そしてすぐに、せっかくの機会なので行ってみようかとトキムネのお母さんに相談した。

トキムネのお母さんは、一度トキムネをキッザニアへ連れて行ってみたいと思っていたので、その話にすぐ賛成し行くことが決まった。

 

ショウゴおじさんはトキムネのおじいちゃんとおばあちゃんも誘って、大所帯でのキッザニア参加となった。

 

当日になってトキムネのお父さんは、トキムネとトキムネのお母さんを車に乗せ、おじいちゃんの家に向かった。

昨晩からショウゴおじさんの娘のユキちゃんとアイちゃんはおじいちゃんの家に泊まっていて、おじいちゃんの車でキッザニアに向かうことになっていた。

 

「やあ、おはよう! キッザニアでパパたちが待っているから、すぐに向かおう!」

 

トキムネのお父さんは、ユキちゃんとアイちゃんに声をかけたあと、トキムネのおじいちゃんに後ろからついてくるように言って車を走らせた。

 

2台の車は連なって順調に高速を走り、現地近くの高速出口で降りて、そのまま施設の駐車場の中へ入った。

 

トキムネのお父さんたちは駐車場から施設内に入り、すでにキッザニアの列に並んでいるショウゴおじさんとチヒロおばさんに合流した。

 

Van Gogh - Bildnis Josepf Roulin1
フィンセント・ファン・ゴッホ 作成: Arles, 1888年8月初頭(Wikipediaより)

 

 

 「朝早くに整理券もらったから、そんなに時間かからないで入れるよ。」

とショウゴおじさんは言って、みんなを列に並ばせた。

 

「まさかキッザニアに来るとは思ってもいなかったよ。誘ってくれてありがとう。」

とトキムネのお父さんは、ショウゴおじさんに言った。

 

「自分の周りの親たちが、キッザニア面白いって言っていたから、話のネタに行ってみようかと思ったんだ。」

ショウゴおじさんが言った。

 

「・・・しかし、"仕事" ということがどういうことなのか、"仕事" の本質について深く考える前の子どもたちに、ぼんやりとした、"労働観" を植え付けるような場所なんだよね。ここは。」

 

「は? 今さらここに入ることに反対なの? ここは、勤勉に働くという部分と社会の繋がりみたいなものをざっくりと学べるということでいいと思うけど。」

 

「確かにそう。子どもたちが社会の中での繋がりを学ぶという部分は、おれもいいと思っている。

"誰かがやらねばならないことを誰かがやることで社会は動いている" ということを学ぶ場としては、とてもいい施設だと思う。

問題なのは、実際の労働現場とあまりにも掛け離れた良いイメージと報酬レートだろう。

しかも、ここ数年で労働人口も労働の担い手も変わってきている中、ここでやるOJTの多くは、近い将来、AI等の現場導入が進んで別物に変わる可能性が高い。

だから、今こそ、社会構造の中での、"仕事" と、"自分を自分としているものとは?" ということを深く考える時ではないだろうか?」

 

「いや、だから、これは役割の参加型テーマパークみたいなもので、あまり深く考えないほうが楽しめるよ。」

 

キッザニアの入口へ向かう列が動き出して、熱弁をふるっていたトキムネのお父さんは、ユキちゃんとアイちゃんに押されてゆっくり歩きはじめた。