次の日の午前中に、トキムネたちはショッピングモールへやってきた。
おもちゃ売り場でガンプラを見て、フードコートで早めの昼食を食べてと、トキムネたちはパターン通りの行動を済ませ、最後にゲームコーナーで遊ぶことにした。
さっそくトキムネは、トキムネのお母さんに預けていたカードゲーム機のカードを出してもらい、ムッちゃんに見せた。
「あ! トキちゃんも、"ガンダムトライエイジ" をやっていたんだ!」
と言って、ムッちゃんも、ママからカードを出してもらってトキムネに見せた。
ムッちゃんのカードは、プラスチックのケースに入っていて、ざっと100枚以上はありそうだった。
トキムネのカードは20枚しかなくて、しかも持っている中の最強キャラが、"フル・フロンタル" という、渋めの顔ぶれだった。
「ちょうど2台空いている!」
ムッちゃんは、すぐにゲーム機のイスに座り、トキムネを隣のイスに手招きした。
「さいしょは、ムッちゃんがやるのを見てる。」
トキムネは、ムッちゃんのゲーム機の横に立って観戦することにした。
トキムネのお父さんは、トキとムッちゃんの2人を見ているから、他の場所へ行ってもいいよと、トキムネのお母さんとケーコおばさん、ハルちゃんに言ってトキムネの後ろに立って同じように観戦を始めた。
Van Gogh - Das Nachtcafé in Arles
フィンセント・ファン・ゴッホ 作成: Arles, 1888年9月(Wikipediaより)
「ムッちゃんのカードは、キラキラしているものばかりだね。相当このゲームをやり込んでいるでしょ?」
とトキムネのお父さんがきくと、
「・・・ぼくの小遣いでやってるだけだよ。」
とムッちゃんはこたえた。
・・・そうは言っても、キラキラカードたくさん持ってるじゃないの。この前、トキとやった時は、赤鼻とか、ガルマ・ザビとか、キラキラしとらんやつしか出てこなかったぞ・・・。
ムッちゃんは100円玉を投入して、手慣れた調子でゲームを始めた。
ムッちゃんのゲームの展開に合わせたリアクションは、ゲームが進むにつれて大きくなっていった。
・・・トキが見ているから、ムッちゃんもゲームのリアクションが大きくなっていくのだろう。
1人でやっていれば、黙々とやっているだけだから、見られていることで楽しいと感じるのだろうね。
・・・これはまさに、この前テレビで見た、"Watch Me Play!" ではないか・・・。
子どもの遊んでいる所を5分でもいいから見ていてあげると、感情が安定して爆発が減るみたいな・・・。
しかし、ムッちゃんは、オレたちが真剣に見れば見るほどリアクションがデカくなって感情が爆発していくぞ・・・。な、なぜなんだ・・・?
「うわぁ! くっそーーやられたー!」
ムッちゃんは、イスの上でバタバタ暴れていた。
ムッちゃんのゲームが終わるとトキムネは、おもむろに隣りのゲーム機に座り、トキムネのお父さんから100円玉をもらってゲームを始めた。
すぐにムッちゃんは、トキムネのゲーム機の横に立ち、観戦側に回った。
最後までトキムネは、ゲームの展開に対するリアクションなしで、黙々とゲームを終えた。