天才というものはどの世界にも存在する。僕たち凡人にはとても思い付かないモノを創り出し、世に出す。頭の思考回路がまるで違うのだ。


お笑いの世界でもそう。僕なんかはすぐ
お客さんに伝わるか?とか
ネタ時間は大丈夫か?とか
単純に面白いのか?とか考えてしまうものだ。

しかし、彼は違う。
自分のしたいことをする。
もう理屈ではないのだ。


彼の名前は「まりさんこん」
同期の芸人である。


彼は自分では認めないが、他では私を含めごく数人が認める天才である。否、奇才ともゆうべきか…


そのエピソードの1つにNSCの講師の方から
「お前の笑いは10年早い」と言われている。事実彼はNSCの時ずっと一番下のクラスであった。
出る杭は打たれるものだ。



そんな彼はNSC卒業時に今でも語り継がれる伝説の一言を残して去って行った。


「ニコニコ動画があれば、お笑い芸人の存在なんて意味を為さない」


それから一度も彼を見かけることはなかった。
そうして半年が過ぎようとしていた。


しかし、昨日彼はお笑いの舞台に復帰した。
もう引退したものと思われていた彼の姿に私は当然驚きを隠せなかった。
そして何故突然復帰したのか訊ねてみた。


「え、同期に誘われたから…」


天才とは気まぐれである。


現役時と何の遜色もない素晴らしいネタを披露していた。
勿論お客さんには全く伝わっていなかった。


そんな彼の姿を観て、現在私はお笑いを続けるか正直迷っている。


やはり勝てないものは勝てないのだ。


相手は天才なのだから。