91章、化学者は従える | アヴァベル×ラノベ

アヴァベル×ラノベ

アヴァベルをラノベにしてみました(`・ω・´)
といっても完全に2次創作に近い感じになってますが(´・ω・`)
念のために言っておきますが、非公式です。

コウガはカナエの耳元で囁いていた。

「…今はカナエちゃんの気持ちがわかっただけで嬉しいよ」

コウガは顔を離した。アツミには、角度のせいもあってか、その光景が丁度キスをしているように見えたらしい。

「俺も…こんなことしてる状況じゃないって思ってるから。続きは…全部済んでからね」

「うん…」

2人は自然と体を離した。
2人の間に沈黙と、妙に気まずい雰囲気が訪れた。
その時間が永遠に続くかと思われたその時、カナエのうなじに、1滴の滴が落ちてきた。
それに気づいたカナエは、空を見上げた。
夕焼けの空はいつの間にか、局所的な分厚い雲によって、見えなくなってきた。

「夕立…?」

カナエがそう言った途端、激しい、大粒の雨が降り始めた。

「あー、降ってきた!」

「早く戻ろう!」

2人は急いで宿の方へ走っていった。













「じゃあ、言い訳を聞かせてもらおうか」

シルキスエルダ学園の学長室にて、バルバロスは応接用のソファに座った。

「言い訳も何も、我々はやましいことなど一切しておりません。未来の世界を担う可能性がある子供たちの成長の場を、我々は提供しています」

木の彫刻が施されているテーブルを挟み、その向かいには、学長の女性が座っていた。

「冗談。何の下調べもせずにこんなところにのこのこ出向くと思ってんのか?ここの実態はあらかた頭の中に入っている。いじめや暴力行為を始め、薬物乱用してる連中もいるらしいな」

「あなたは何か勘違いされているようですね。少なくとも私の目が黒いうちはそんなことさせませんし、あったとしても早急に解決させています」

バルバロスはテーブルの上にある、出された飲み物に手を伸ばした。

「(あくまでしらを切り通すつもりか…)」

バルバロスがコップに口をつけようとしたとき、バルバロスは飲み物の異変に気づいた。

「(これは…!)」

バルバロスは飲まずに、コップをテーブルに戻した。

「(俺まで手をかけるつもりか…。あいつらに『出された物には絶対手をつけるな』と言っておいて正解だったな…)」

バルバロスは動揺を悟られないように平静を装った。

「もう1度言う。俺たちは下調べをしてここに来ているんだ。ここの元学生の娘から話を聞いてな」

「その元学生とやらが嘘をついているのでは?」

「そう思うか?他にも証言者はいるぞ?」

「信憑性がありません。あなたがその現場を目撃した訳ではないんでしょう?バルバロスさん」

バルバロスは学長の女性が心のどこかで笑っているのを感じ取った。

「(遊んでやがる…)」

バルバロスはここで揺さぶりをかけることにした。

「大した自信だな。そこまで言うのなら、ここの人間たちはさぞや、レベルが高いのばかりが勢揃いしているんだろうな」

「お分かりいただけましたか?」

「ああ、わかったとも。偽装工作のレベルが高いのばっかりだ」

バルバロスはニヤリと笑った。

「おっしゃっている意味がわかりません」

バルバロスは学長の女性の微かな動揺を感じ取った。

「嘘をつけ。なあ、リアさんよ。何で校門を閉鎖してたんだ?しかも強引に入ろうとするなら力で解決しようとする。やましいことがないなら、こんなことする必要なんて無いんじゃないのか?」

学長=リアの目付きがわずかながら厳しくなった。

「外部からの侵入者による、犯罪の防止のためです」

「こんな砂漠のど真ん中にあるのに、か?」

両者は睨み合った。バルバロスはもう1押しで何か尻尾が掴めるのではないかと考えていた。
その後、2人の話し合いと言う名の、腹の探り合いは夜遅くまで続いた。
話し合いはリアが強引に終了させた。
バルバロス一行は、例の宿泊棟に案内されたが、バルバロスがそれを拒否し、校門の近くで野宿を選んだ。バルバロス曰く「いつ殺されるかわからない」ということであった。













深夜、日付が変わってかなり経った頃。バルバロスは固く閉ざされた校門を、腕を組んで眺めていた。

「さてと、どこから入るか…」

魔力が張り巡らされたフェンスは、さすがのバルバロスでもどうにもできないほどであった。

「仕方ない…。できれば跡を残したくは無かったが…」

バルバロスは拳銃に弾を込め、出力を最小に調整した。

「やむを得ん」

バルバロスは校門の鍵に向けて、弾を数発発射した。鍵は完全には壊れなかったが、こじ開けるには十分であった。
バルバロスは力業で鍵をこじ開けた。そして音をたてぬよう校門を開け、敷地内に入った。
バルバロスはリアを十分揺すれるだけの情報と物証を集めた。













翌朝。
宿の部屋にてソウマが目を覚ますと、アツミの姿がなかった。
ソウマはアツミを目で探した。するとベランダで海を眺めている姿を発見した。
ソウマは他のメンバーを起こさぬようベランダに出た。

「早いな」

「あっ、おはようございます。なんだか眠れなくて…」

「蒸し暑いからな…仕方のないことだ」

「いえ、ちょっと1人で盛り上がりすぎてしまって…」

「お前なぁ…」

そこに、ユキミチが肩のストレッチをしながら現れた。

「おはようございます。お2人とも早いことで」

ソウマはアツミに言った言葉をユキミチにも言った。

「蒸し暑いからな」

「確かに。では私はランニングに行って参ります」

ユキミチは一旦部屋の中に入っていった。













ほぼ同時刻、エスナは喫茶店『トゥルムス』の、2階の住居スペースで目を覚ました。隣ではメロウが寝息をたてていた。

「…久しぶりだなぁ…こんな安らかな顔…」

タンス等がところ狭しと並んでいるので、メロウとの間はほとんどなかった。

「(…起きる前に帰らなければ)」

エスナは静かに立ち上がり、床の上ではあるが、綺麗に畳まれた着替えに手を伸ばした。
エスナがそれに着替えていると、ブーカが目を擦りながら部屋の中を覗いてきた。

「ブーカ君、おはよう」

「…おはようございます、エスナさん…」

ブーカは深々と頭を下げた。

「…ご飯どうしますか…?」

「いらない。私は戻らなければならない場所があるからな」

「…オゼロ城ですか…?」

ブーカの言葉に、エスナはシャツのボタンを閉める手を、一瞬止めてしまった。

「…似たような場所さ」

エスナの言葉に、ブーカは首をかしげるだけであった。

「じゃあ」

エスナはブーカに一瞥もせずに、部屋を後にしようもした。

「…1つ教えておこう」

エスナは意を決したように足を止め、ブーカの方を向いた。

「べノンから逃げた方がいい。今すぐに」

「えっ……?それはどういう……」

「死にたくなかったら…な…」

エスナはそれだけを言い残し、『トゥルムス』を後にした。
玄関の前で、リグルが腕を組み、壁に寄りかかってうたた寝をしていた。
ドアが開く音がすると、リグルは目を覚ました。

「…やっと来たか」

リグルは背伸びをして、エスナに近づいた。

「朝っぱらから何なんですか…。他にやることはないんですかねぇ…」

「お互い様だろ?それに、今日から暇じゃなくなるぞ」

「…準備が整ったんですね」

「大体は、な。後は俺たちが乗り込むだけ、だってさ」

「乗り込む?」

「でかい船を使うらしい。俺やサリーの転送能力だけじゃ厳しいんだとよ」

「…かなり本気ですねぇ」

エスナは『トゥルムス』の看板を悲しそうに眺めた。

「…やっぱ心配か?」

「そんなわけない……と言ったら嘘になりますねぇ…。内縁の妻と義弟が巻き込まれるとなると…」

「……」

リグルは何も言い出せなかった。エスナの複雑な心境を察してのことであった。
その重苦しい雰囲気をさらに重くするような人物が2人の背後から現れた。

「いた…!!」

溢れる怒りを隠すことなく、サリーは2人に近づいていった。

「こんなとこで何してんの?!!謀反人としてグランゼール様の前につき出すわよ?!!」

今にもエスナを殴りかかろうとしているサリーをリグルが宥めた。

「おいサリー、静かにしろよ。ご近所の皆様が起きちまう」

「黙れ!!!」

サリーは左手から緑色の液体を噴射し、リグルを吹き飛ばした。リグルは街路樹に激突した。

「何を…!」

リグルは両手に竜巻を纏わせ、臨戦態勢をとった。エスナも両手を刃に変え、攻撃に備えた。

「…何その態度?私を誰だと思っているの?」

2人はサリーの言葉の意図がわからず、困惑した。

「そのなめた態度…2度と出来なくしてやる…!!」

サリーは頭上で左手の指を鳴らした。すると、地面から十数体の骸骨兵が現れ、2人に襲いかかった。
そこに、ランニング中のユキミチも登場した。

「これは…!!」

ユキミチは目の前に広がっている光景を理解することが出来なかった。

「よう、へなちょこ!」

骸骨兵たちの攻撃をさばいているリグルは、ユキミチの存在に気づいた。

「リグル…?!」

さらにユキミチは奮闘しているエスナと、近くの椅子に座って足を組み、不敵な笑みを浮かべながら、戦っている光景を眺めているサリーを確認した。

「エスナやサリーまで…。仲間割れか…?!」

「半分正解で半分外れだ!」

リグルは炎のパンチで骸骨兵の頭部を砕いた。
両手の刃で攻撃を防いでいるエスナが、それに付け加えた。

「そこのサリーが一方的に我々を攻撃しているんですねぇ…!」

「サリーだと…?」

サリーはゆっくりとユキミチの方を向いた。

「あら。これはこれは」

サリーは椅子から立ち上がり、ユキミチの方に近づいていった。

「誰かと思えばいつかの僧侶じゃないの」

「こんな朝早くから、あなたは一体何をお考えになっているのですか」

「あんたには関係ないこと。そうね…私の言うことを聞かないモルモットにお仕置きをしている…とでも言っておこうかしら」

ユキミチはサリーから発せられる異様なオーラを察知し、グッと身構えた。

「あんたが出てくるのは予定外だったけど…ちょうどいいわ…?」

サリーの表情が段々と狂気染みてくるのを、ユキミチは肌で感じていた。

「解剖実験の献体になりなさい!!!」

サリーはローブを脱ぎ捨てた。すると、失っているはずの右腕が、緑色の、怪物の腕になっていた。肩には羽毛が生えており、爪は血の色に染まって、鋭く尖っていた。左腕と比べると、腕全体の長さが若干長くなっていた。

「私にもがき苦しむ姿を見せてちょうだい…!!」

サリーはユキミチに考える隙を与えず、右手の爪を突き立て、ユキミチに襲いかかった。
ユキミチは右手首と襟首を掴み、背負い投げの要領で地面に叩きつけた。

「なんとまがまがしい…!」

ユキミチの顔には恐怖と驚きの感情が混じっていた。サリーはピクリとも動かなかった。
突然、サリーはニヤリと笑った。ユキミチは攻撃の気配を感じ、咄嗟に跳び退いた。
その直後、サリーの右肩から、鋭く尖った羽が乱射された。

「あーあ。当たると思ったのに」

サリーは服についた汚れを払いながら立ち上がった。

「でも、次は外さない…!」

サリーはユキミチに向けて緑の羽を飛ばしてきた。

「もはや人では…!」

ユキミチは前方に金色の円柱状のバリアを張り巡らせ、攻撃を防いだ。

「あーあ、めんどくさ。なら、みんなまとめて吹き飛ばしてやる…!!」

サリーの右腕が、緑色の羽となって空中に分散した。
極めて強力な攻撃の気配を感じた、リグル、エスナ、そしてユキミチは、サリーと距離をとった。

「甘いわ!!」

サリーは左手を頭上に掲げた。空中を舞っていた羽が鋭い針となり、一斉に、同心円状に降り注いだ(以下、マドネスケミストニードルと呼ぶ)
勢いもさることながら、羽の量にも圧倒され、3人とも攻撃をもろに受けた。骸骨兵も巻き込まれ、粉々になった。

「そんなに弱いのに、よく私に盾突こうとしたわね」

サリーはうずくまって動けないリグルとエスナに向けて言い放った。

「これからは私の僕として働いてもらうわ」

「僕…だと…。…バカ言うなよ」

リグルは体の痛みをこらえながら立ち上がった。

「こんな暴力上司……私は絶対に嫌ですねぇ…!」

エスナは口の中に溜まった血を吐き捨てて立ち上がった。
そんな2人に対して、サリーは冷たく言った。

「潰すわよ」

地面に突き刺さっていた緑の羽が集まり、サリーの左腕となった。

「わかったらついてきなさい。それと…」

サリーは片膝をついて、肩で息をしているユキミチに視線を向けた。

「次は容赦しないわよ」

サリーは右手から緑の霧を発生させた。霧が消えると、サリーだけではなく、リグルとエスナも姿をくらましていた。

「リグルがあそこまでやられるとは…」

「……あっ……あの……」

ユキミチは背後から声をかけられた。

「…大丈夫ですか…?」

それは心配そうな表情をしたブーカであった。

「ブーカ殿…。私なら大丈夫でございます。お怪我はございませんか?」

ユキミチの言葉に、ブーカは少し驚いたようだった。

「…は、はい…。僕は…大丈夫です…」

そこにメロウが血相を変えて走ってきた。

「大丈夫ですか?」

「そなたは?」

「ブーカの姉のメロウと言います。酷い怪我…。家で手当てしましょう」



























作者コメント

暑くて溶けそう(切実)

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