81章、常夏の町は魅惑の光を浴びる | アヴァベル×ラノベ

アヴァベル×ラノベ

アヴァベルをラノベにしてみました(`・ω・´)
といっても完全に2次創作に近い感じになってますが(´・ω・`)
念のために言っておきますが、非公式です。

輝く太陽、青く澄み渡った海、ゴミ1つない砂浜。

「ひゃっほー!!」

今海に走っていったのは、(どこで調達したのか)水着姿のカナエであった。

「…ま、待ってください…!」

その後に、同じく水着姿のカグラが続いていった。
コウガたち一行の他にも、このビーチはたくさんの観光客で賑わっていた。

「水は苦手だぜ…」

一応水着に着替えているリンは、ローブを羽織って砂浜に座っていた。隣には完全防備のサキが日傘を差していた。

「何か…すごい格好だな…」

「元々皮膚が弱い体質なので。曇りなら私も泳ぎたいと思ってます。リンさんは?」

「え?あ、ああ、もちろん私も泳ぐに決まってんだろ?!」

リンが全く泳げないのを取り繕うように大袈裟に言ったが、近くで話を聞いていたマツリがボソッと言葉を漏らした。

「カナヅチ…」

「おい、マツリ!!」

リンは立ち上がり、マツリに詰め寄った。

「誰がカナヅチだぁ?!」

マツリはその場から逃げ出した。リンは拳を振り上げて後を追いかけ始めた。
その光景を、砂浜から1段上がった高台から、ソウマは眺めていた。

「また始まったか…」

ソウマは呆れたような表情をしていた。ソウマは何となく後ろを振り返った。すると、コウガとユキミチが近づいて来るところだった。

「どうなった?」

「9時過ぎに来いって。それまでは自由にしてていいらしいよ」













遡ること30分前。
町にたどり着いたコウガたち一行は、町の中心部にある町長の屋敷に招かれた。
その町長は強面の髭面のオジサンであり、サインとは真逆の人物であった。

『がっはっは!よく来たな!俺がこの町、べノンの町長、バルバロスだ!』

強烈なインパクトを受けた一行は言葉が出なかった。

『俺についてきてくれ!さあ、入った入った!』

バルバロスに連れられて来たのは、フカフカの1組のソファがカーペットの上に、豪華な装飾が施されているテーブルを挟んで置いてあるリビングだった。
一行はソファに座るよう言われた。

『実はサインのやつから、お前さんたちに休暇をくれてやれと言われててな!粗方の事情は知っているぞ!大変なんだな、お前さんたちも!そこでだ!』

バルバロスのやかましい声がより一層やかましくなった。

『ここにいる間は、俺の権限で自由に過ごせるようにした!宿も手配してある!この町で一番の宿をな!』













バルバロスはこのような調子で約30分間しゃべり続けた。途中からべノンの歴史や、サインとの思い出話に脱線していたのは内緒の話。
バルバロスに解放された女子4人+マツリは海に向かっていったのだ。
しかし、コウガとユキミチは残され、歓迎パーティーの打ち合わせに付き合わされた。
今、男3人はビーチが見渡せる、小洒落た喫茶店の屋外のテーブルを囲んで座っていた。テーブルの上には軽食が配膳されていた。

「さっきあの人の容態見てきたけど、相変わらず起きる気配が全くないよ」

コウガはテーブルのジュースを飲みながら言った。

「もしかしたら、もう2度と目が覚めないかもね」

「それは困るな」

ソウマは困った表情で腕を組んだ。

「どう転ぶにしろ、あいつが目覚めてくれないと、俺たちの負担が増える。いつまでも背負って移動するわけにはいかない。キズの方はもういいのか?」

ユキミチはどこか申し訳無さそうに言った。

「ええ。先程、コウガ殿と一緒に彼女の容態を確認しましたところ、キズは完治しております」

「そうか…」

「しかし、治癒魔法を彼女に唱えたところ、拒絶されました」

「拒絶?どういうことだ?」

ソウマの体が前に乗り出した。ユキミチの言葉を継いでコウガが話し始めた。

「どうだろうね。少なくとも、俺の目には自分の意思で魔法を受け付けてないように見えた」

「私もコウガ殿と同じでございます。恐らく、目を覚ましたくないのでございましょう。時が来れば、自ずと覚めるのではございませんか?」

「待つしかないか…」

ソウマが背もたれに寄りかかったその時、何かがソウマの頭をを直撃した。

「「あっ…」」

コウガとユキミチは少し驚いた様子だった。対照的にソウマはこめかみに血管を浮かび上がらせていた。
飛んできた物体の状態は人の頭より2周りほど大きい白色のボールだった。
リンが下から声をかけてきた。

「おーい!ボールそっちに行っちまったから取ってくれ!!」

ソウマはボールをわしづかみにし、柵から上半身を乗り出した。

「…こいつを投げ込んだのはお前か?」

「投げてねぇよ!カナエが本気でスパイク撃ってくるからよ、弾いたらどっか行っちまってさ!気づいたらそっちに飛んでってたんだ!」

「わかった。返してやる」

「ありがとう!助かったぜ!ソウ…」

ソウマはボールを全力でリンに向かって投げつけた。見事リンの顔面にクリーンヒットした。
ボールが顔から落ちると、リンの顔は真っ赤になっており、鼻血を出していた。

「ってーな!おいソウマ!何しやがんだ!!」

「自業自得だ」

リンはぶつぶつと文句を言いながらも、ボールを持ってカナエたちの元に向かっていった。

「…ったく、いくらなんでもはしゃぎすぎだろ」

ソウマはコウガとユキミチの方を向き直した。

「気持ちはわかるよ。ずっと極限状態にいたわけだしさ。リラックス出来るいい機会だと思うよ」

「そうは言っても歳考えろよ、歳を」

「カナエちゃんたちみんな俺たちより年下だよ?」

コウガに言われて、ソウマはモヤモヤした表情になった。コウガが19歳、カナエが18歳である。ちなみに最年長のユキミチが21歳、最年少のカグラとマツリが15歳である。

「ソウマ殿、あまり堅くならないでくださいませ。私もコウガ殿と同じ考えでございます」

「いや、息抜きすること自体に反対はしていない。ただな…」

ソウマが話を続けようとしたとき、再びボールがソウマの頭を直撃した。

「あー、2回目…」

「これはいけません…」

「こうやって周りに迷惑をかけるから嫌なんだよ!!」

完全にキレたソウマは転がっているボールを持って、柵からビーチに跳び降りて行った。

「おい、今当てたやつ、誰だ!」

ソウマはゆっくりとした足取りでカナエたちに近づいていった。

「あーあ、行っちゃった」

コウガは頭の後ろで手を組んだ。

「ソウマ殿も気が短い。これからどうなさいますか?」

「もう1度あの人の様子を見に行ってみるよ。起きた時に誰かが近くにいないとね」

「なるほど。私もお供させていただきます」

コウガとユキミチはバルバロスが手配した宿に向かった。













ビーチから歩いて3分もかからない場所、南国植物が出迎えてくれる宿が、コウガたちの宿泊場所であった。
老若男女の観光客とすれ違いながら、コウガとユキミチは部屋の一室に向かった。和室の、いっぺんに大人数が止まれる部屋であった。
その海が一望できる窓際に布団が敷いてあり、アツミが寝かされていた。

「やっぱり眠ったままか…」

「先程申し上げた通り、私は、この方は自分で目を覚ますのを拒否しているように思われます」

「そうなのかな…」













『また来た…』

アツミは意識のない中で、2人の気配を感じ取っていた。

『まだ起きる訳にはいかない…』

アツミは目の前に広がる光景に意識を集中した。色鮮やかだった光景はモノクロになり、全てが停止していた。女の子が連れ去られる場面であった。

『もう少しで何かが見えてくるはず…それまでは…!』

アツミは鞭をしならせ、ところ構わず振り回した。鞭は気や岩などの物質がない場所でも跳ね返った。

『あの辺りね…』

アツミは鞭が跳ね返った場所に近づき、そっと手を触れた。それは丁度絶望に表情を歪ませる少女の、家族に助けを求め、必死に伸ばした右手だった。

『…ごめんね』

アツミはその手をゆっくりと握り締めた。
そして、目を黄色に光らせ、その箇所を思いっきり殴り付けた。
すると、その箇所からモノクロの景色にひび割れが走り、激しい音をたてて割れた。そして、新しい景色がアツミの目に飛び込んできた。場所はさっきと変わらなかったが、鮮やかな色がつき、写真から映像に変わっていた。

『これは…』

アツミは辺りをゆっくりと見渡した。そして、視線を前に戻すと、道の向こうから歩いてきた人物に、衝撃を覚えた。

『なぜ…あのお方が…?!』

アツミはその場から1歩も動くことが出来なかった。













アツミの異変は、部屋でくつろいでいたコウガとユキミチにもわかった。

「うっ…ううっ…」

アツミが苦しそうな表情で呻き声をあげていたからである。

「うなされてる?悪夢でも見てるのかな?」

コウガはアツミに近づき、顔を覗き込んだ。

「少し様子がおかしゅうございます。しばらく警戒しておきましょう」

ユキミチはコウガの肩をつかんで、上体を起こさせた。

「…が……ちが…」

アツミが再び呻き声にも聞こえる寝言を言い始めたので、コウガとユキミチは意識を集中させた。

「…違…う……違う…こんな…の…」













『私は覚えていない!!』

アツミは目の前に繰り広げられている惨状を受け入れることが出来なかった。
なぜなら、今起こっている出来事は、かなり衝撃的な出来事にも関わらず、アツミの記憶には少しも刻まれていなかったからである。

























作者コメント

海行きたい_(⌒(_´-ω-)_

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序編

草原階層前編

草原階層中編

原階層後編

湿原階層前編

湿原階層中編

湿原階層後編

雪山階層前編

雪山階層中編

雪山階層後編

洞窟階層前編

洞窟階層中前編

洞窟階層中後編

洞窟階層後編

砂漠階層前編

砂漠階層中前編

砂漠階層中後編

砂漠階層後前編new!!

砂漠階層後後編new!!

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