ちわわわっす
。なんちゃってアジアン逆ハーレム創作【彩の雫】の24話~
。24話を自サイトに掲載したのが6月のあたまです
。自サイト掲載分が新章入ってしまっているのでなんだか懐かしい心持ち
。
。なんちゃってアジアン逆ハーレム創作【彩の雫】の24話~
。24話を自サイトに掲載したのが6月のあたまです
。自サイト掲載分が新章入ってしまっているのでなんだか懐かしい心持ち
。 今回は、乙女ゲームでいうところのヒステリック若造くんと“イベント”がありますな
。イメージ的には
。後半のワーカーホリック真面目くんとのデートは強制イベントみたいなものなので
。イメージ的には
。あくまでわたくしのイメージですけど
。
。イメージ的には
。後半のワーカーホリック真面目くんとのデートは強制イベントみたいなものなので
。イメージ的には
。あくまでわたくしのイメージですけど
。 そんな感じで

登場人物
灰白(極彩)…突然襲撃された故郷・四季国の仇討ちを企み風月国の城に潜む。穏やかだか直情的な一面がある。
珊瑚…風月国の三公子。立場的に情緒不安定だったが長兄の死によって攻撃性が増す。
群青…風月王と二公子の留守を預かる若い官吏。仕事中毒。現在右腕骨折、左足首捻挫中。極彩(灰白)に買い物に誘う。
縹…灰白(極彩)が城に入るよう仲介する共謀者。叔父と姪の関係を偽る。温厚で陰険。24歳。
山吹…著しい知能の遅れが見られるため公子の座を外された。珊瑚が唯一心を開く少年。
朽葉…風月国第一公子。珊瑚と山吹の兄。国賊とされ賜死を受け切腹。介錯は群青。◇◆◇◆◇◆◇◆
離れ家に戻る途中で竹林が目に入る。蘇る、竹林の果てに置かれた石。吸い込まれるように竹林へ足が進む。おおよそ見当はついている。朽葉の墓。落ち葉や枝を踏み締める。木々の匂いがする。
誰かいる。石の前に座る華奢な体躯。珊瑚だった。鳥籠を脇に、不自然に置かれた石を見つめていた。
「誰」
落ち着きのなくなった鳥の様子から珊瑚は人の気配を感じ取る。鋭い眼差しが灰白を覆う竹林に投げられる。
「あんたか」
気分を害したわけではないようで珊瑚の興味は失せ、また視線は石へと向かった。
「ここで…何してるの?」
「別に。何ってことはしてない」
灰白に顔を背けたまま冷たく吐き捨てる。鳥籠の中の鮮やかな色を持つ黒い鳥は珊瑚を見上げていた。ここで引くのがいいだろう。縹にも迷惑をかけず、群青の仕事を増やすこともない。分かってはいる。
「山吹様も、ここにいたから」
「…ここが何だか、知ってるの」
項垂れた細い首。朽葉より緩く波を打った毛が白い頸を滑る。
「ううん。山吹様は、ナイショって言ってたけど」
「なんとなく分かるだろ。大兄上の墓。大兄上はこの国を裏切ったことになってるから、同じ墓には入れないんだとよ。だから、作った」
土へ指を立てる。白い手が汚れる。灰白は黙って石を見つめた。
「大兄上を少しでも良く思うなら誰にも言うなよ。何も埋まっちゃいないけど、身内の墓暴かれて良い気はあんま、しないから」
掬った土を投げ、珊瑚は静かに言った。
「妙な籠入れられて、この御時世にわざわざ牛車(ぎっしゃ)なんか使って、街中引き回されてさ、首まで晒されて、墓も入れられないなんて、大兄上は本当に公子だったのかよ」
土にまみれた手がまた土を抉る。
「何も埋まってねぇよ、大兄上の遺骨も、何も。形見だけだ。王家の価値なんてない、ただの形見だけ…」
籠の中を跳ねる鳥。灰白は震えた珊瑚の声を黙って聞いていた。
「せめて俺たちの思い出くらい埋めたっていいだろ」
朽葉と会った日のことを思い出していた。珊瑚の言葉通りなら、朽葉はあの森の中で会い、別れた後に壮絶な運命を辿ったということだ。
「選択を間違えば、こうなるんだよな」
珊瑚は石に透明な液体をかける。酒か水か。石の周りの湿った土がまた湿る。
「何を信じればいいか分からなくなる。群青だって大兄上に心酔してたクセに結局斬った。縹だって!あいつだって大兄上のこと!今になって戻って来やがって!あいつの頭なら避けられたはずだ、諌められたはずだ!」
縹なら朽葉を止められたのだろうか。朽葉が首を振っても、縹なら止めさせられたのか。朽葉の意志を捻じ曲げても。
「信じなければいいよ、何も」
そう口にしていた。裏切るから。群青のことも、紫暗のことも、山吹のことも。そしてこの少年のことも。裏切ることになるのだから。
「信じられないなら信じなければいいよ。盲目になったら自滅するだけ。何も考えないで寄りかかって、一緒に落ちていくどころか、あなただけ背中を押されてあなただけ落ちる」
けれど落とすのは自身で。珊瑚は訝しげに灰白を振り向く。
「何か成すなら、仕方のないことでしょ。ずっと白か黒かではいられないんだから」
美しい肌に、眉に刻まれる深い皺がより深くなる。
「さすが、縹の姪。そういう風に生きてきたわけ?」
「ううん。そういう風に生きていくの」
群青の柔らかな笑みが怖い。あの笑みを奪うのが怖い。紫暗の優しい手。山吹の無邪気な態度。目の前の少年の脆い情動。自身の手で消すのが怖くて、怖くて。
お待たせしてしまいました。時間通りだが先に待ち合わせ場所にいた灰白に申し訳なさそうに謝った。群青は普段のきっちりした服装とは違ったゆとりのある格好をしていた。右腕はやはりまだ吊り上げてある。
「ちょっと気が急いちゃって早く来ただけだから」
さようでございましたか。わずかに目元を染めて視線は合わず足元を泳ぐ。
「じゃあ行こうか。何屋さんだろ。雑貨屋さん行ってみる?」
「はい。その後に裁縫店に寄ります」
「分かった」
群青は左足を庇いながら歩いているようだ。灰白は歩く速度を落とす。訊けば無理をしそうだ。
「この辺にはよく来るの?」
「いいえ…とはいえ長年暮らしているので地理は把握しています。ですが新しい店となると…開店願の書面でしか知りません」
以前灰白が勤めていた茶屋のある繁華街・不言(いわぬ)通りを歩きながら群青と雑談を交わす。城から繁華街は大きく長い坂を下らなければならないため、多忙な群青が来る機会はそうないらしかった。
「そうだよね、群青殿、忙しいもんね」
「極彩様は、どうですか。お詳しいですか」
「わたしは…前…、この辺りに住んでたから、それなりには。他の地区のことは分からないけど」
どこを曲がれば茶屋に行き、どこを曲がれば紅と住んだ長屋に繋がるのか、分かってしまう。あともう数分歩いた先の十字路のさらに先。紅はどうしているだろう。
「この辺りにお住まいでしたか。少々意外です」
「そう?どうして?」
「わたくしの力不足でお恥ずかしい話ですが、あまり治安が良くありませんから」
洗朱通りとは言わなかったが、おそらく洗朱通りに近いからだろう。縹の住んでいた建物があった退廃した地区だ。無理矢理な増築を繰り返したような、外観だけでも複雑な構造をしているのだと分かる建築物がたくさん並び、そして一部崩壊、崩落していた。縹の住んでいた建物は大きく崩れていたがまだ人が住んでいた形を残していた。そして実際縹はそこに住んでいた。
「そうなんだ?あまりそういう風には思わなかったけど」
そこで話したことは群青に知れてはならない。灰白は縹の住んでいた建物も、洗朱通りの荒廃した雰囲気も、路上に死んだように寝そべる者たちのことも忘れたふりをした。見なかったことにした。知らないことにした。気付かないことにした。
群青は穏やかな顔つきで灰白を見つめていた。城で見せる隙のない姿とは正反対だ。格好のせいもあるだろう。年相応の柔らかさがある。
誰かいる。石の前に座る華奢な体躯。珊瑚だった。鳥籠を脇に、不自然に置かれた石を見つめていた。
「誰」
落ち着きのなくなった鳥の様子から珊瑚は人の気配を感じ取る。鋭い眼差しが灰白を覆う竹林に投げられる。
「あんたか」
気分を害したわけではないようで珊瑚の興味は失せ、また視線は石へと向かった。
「ここで…何してるの?」
「別に。何ってことはしてない」
灰白に顔を背けたまま冷たく吐き捨てる。鳥籠の中の鮮やかな色を持つ黒い鳥は珊瑚を見上げていた。ここで引くのがいいだろう。縹にも迷惑をかけず、群青の仕事を増やすこともない。分かってはいる。
「山吹様も、ここにいたから」
「…ここが何だか、知ってるの」
項垂れた細い首。朽葉より緩く波を打った毛が白い頸を滑る。
「ううん。山吹様は、ナイショって言ってたけど」
「なんとなく分かるだろ。大兄上の墓。大兄上はこの国を裏切ったことになってるから、同じ墓には入れないんだとよ。だから、作った」
土へ指を立てる。白い手が汚れる。灰白は黙って石を見つめた。
「大兄上を少しでも良く思うなら誰にも言うなよ。何も埋まっちゃいないけど、身内の墓暴かれて良い気はあんま、しないから」
掬った土を投げ、珊瑚は静かに言った。
「妙な籠入れられて、この御時世にわざわざ牛車(ぎっしゃ)なんか使って、街中引き回されてさ、首まで晒されて、墓も入れられないなんて、大兄上は本当に公子だったのかよ」
土にまみれた手がまた土を抉る。
「何も埋まってねぇよ、大兄上の遺骨も、何も。形見だけだ。王家の価値なんてない、ただの形見だけ…」
籠の中を跳ねる鳥。灰白は震えた珊瑚の声を黙って聞いていた。
「せめて俺たちの思い出くらい埋めたっていいだろ」
朽葉と会った日のことを思い出していた。珊瑚の言葉通りなら、朽葉はあの森の中で会い、別れた後に壮絶な運命を辿ったということだ。
「選択を間違えば、こうなるんだよな」
珊瑚は石に透明な液体をかける。酒か水か。石の周りの湿った土がまた湿る。
「何を信じればいいか分からなくなる。群青だって大兄上に心酔してたクセに結局斬った。縹だって!あいつだって大兄上のこと!今になって戻って来やがって!あいつの頭なら避けられたはずだ、諌められたはずだ!」
縹なら朽葉を止められたのだろうか。朽葉が首を振っても、縹なら止めさせられたのか。朽葉の意志を捻じ曲げても。
「信じなければいいよ、何も」
そう口にしていた。裏切るから。群青のことも、紫暗のことも、山吹のことも。そしてこの少年のことも。裏切ることになるのだから。
「信じられないなら信じなければいいよ。盲目になったら自滅するだけ。何も考えないで寄りかかって、一緒に落ちていくどころか、あなただけ背中を押されてあなただけ落ちる」
けれど落とすのは自身で。珊瑚は訝しげに灰白を振り向く。
「何か成すなら、仕方のないことでしょ。ずっと白か黒かではいられないんだから」
美しい肌に、眉に刻まれる深い皺がより深くなる。
「さすが、縹の姪。そういう風に生きてきたわけ?」
「ううん。そういう風に生きていくの」
群青の柔らかな笑みが怖い。あの笑みを奪うのが怖い。紫暗の優しい手。山吹の無邪気な態度。目の前の少年の脆い情動。自身の手で消すのが怖くて、怖くて。
お待たせしてしまいました。時間通りだが先に待ち合わせ場所にいた灰白に申し訳なさそうに謝った。群青は普段のきっちりした服装とは違ったゆとりのある格好をしていた。右腕はやはりまだ吊り上げてある。
「ちょっと気が急いちゃって早く来ただけだから」
さようでございましたか。わずかに目元を染めて視線は合わず足元を泳ぐ。
「じゃあ行こうか。何屋さんだろ。雑貨屋さん行ってみる?」
「はい。その後に裁縫店に寄ります」
「分かった」
群青は左足を庇いながら歩いているようだ。灰白は歩く速度を落とす。訊けば無理をしそうだ。
「この辺にはよく来るの?」
「いいえ…とはいえ長年暮らしているので地理は把握しています。ですが新しい店となると…開店願の書面でしか知りません」
以前灰白が勤めていた茶屋のある繁華街・不言(いわぬ)通りを歩きながら群青と雑談を交わす。城から繁華街は大きく長い坂を下らなければならないため、多忙な群青が来る機会はそうないらしかった。
「そうだよね、群青殿、忙しいもんね」
「極彩様は、どうですか。お詳しいですか」
「わたしは…前…、この辺りに住んでたから、それなりには。他の地区のことは分からないけど」
どこを曲がれば茶屋に行き、どこを曲がれば紅と住んだ長屋に繋がるのか、分かってしまう。あともう数分歩いた先の十字路のさらに先。紅はどうしているだろう。
「この辺りにお住まいでしたか。少々意外です」
「そう?どうして?」
「わたくしの力不足でお恥ずかしい話ですが、あまり治安が良くありませんから」
洗朱通りとは言わなかったが、おそらく洗朱通りに近いからだろう。縹の住んでいた建物があった退廃した地区だ。無理矢理な増築を繰り返したような、外観だけでも複雑な構造をしているのだと分かる建築物がたくさん並び、そして一部崩壊、崩落していた。縹の住んでいた建物は大きく崩れていたがまだ人が住んでいた形を残していた。そして実際縹はそこに住んでいた。
「そうなんだ?あまりそういう風には思わなかったけど」
そこで話したことは群青に知れてはならない。灰白は縹の住んでいた建物も、洗朱通りの荒廃した雰囲気も、路上に死んだように寝そべる者たちのことも忘れたふりをした。見なかったことにした。知らないことにした。気付かないことにした。
群青は穏やかな顔つきで灰白を見つめていた。城で見せる隙のない姿とは正反対だ。格好のせいもあるだろう。年相応の柔らかさがある。