【R15】朱の洋館1【ホラー】 | さいですか。

さいですか。

ゲスくて畜生な内容ばかりです。よろしくおっぱっぴー。
※一部記事タイトルに好きな曲の歌詞の一節を使用しています。


※未完。完結する見込みも分りません。53ページほど。
※あまり怖くないかも
※暴力シーン・流血シーン・犯罪的なシーンがあります

※フリーホラーゲーム作ろうと思ってC言語やプログラムに悩まされた結果小説になりましたとさ。

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†1
 ことは非常に理不尽だった。部活の先輩の八つ当たりだ。雰囲気だけで付き合っているカノジョと上手くいっていないからと後輩にあたるのは間違いだと思 う。そしてそんな先輩一人の提案に乗ってしまう周りの先輩も。高校の裏には山がある。そして山頂に洋館がある。いつ建てられた物なのかは分からない。学校 側も近寄らないよう呼びかけている。けれど、ホラー小説や都市伝説でよくある、『あの洋館に行って帰ってきた者はいない』だとか『何かが出てくる』だなん て話は聞いたことがない。









───お前等、ちょっと裏山の洋館に行って、写真でも撮って来いよ────





 数十分に言われた言葉を思い出すと、天城(テンジョウ)はイライラとして身体が熱くなるのが分かった。洋館に行くための山道を歩き始めてすでに40分 経っている。帰る頃には部活終了の時間を軽く越えられるだろう。周りの風景といえば少し仄かな灰色の空と、それを覆うような深い緑の木々。今になってきち んと断ればよかったと思うが、断って「はい分かりました」といく相手ではない。顧問にありもしないことを言い、新人戦に出すの出さないのと騒ぎになるのが 過去の経験から分かっている。そんな先輩だから完全に先輩の忠犬になっているグループと天城がいる先輩否定派のグループに分かれている。洋館に行く面子は 2年が先輩否定派に含まれる4人と、3年の女子マネージャー1人、たまたまそこに居合わせた1年1人の計6人だ。


「龍宮(タツミヤ)先輩、来ちゃって大丈夫なんすか?」

  女子マネージャーの龍宮に天城は訊いた。龍宮はこくりと頷いた。女子マネージャーは2人いて、もう1人の方は先輩にちやほやとされているが龍宮は冷遇されている。その所為か龍宮は1、2年と関わることが多かった。

「あそこにいても、やることないから」

 そう言って龍宮は微笑んだ。運動は苦手だ。だからマネージャーに就いた、と言っていたが、やはり登山紛いなことをしてでもあの部活での冷遇は嫌だったのだろう。
「どれくらいかかると思う?」

「順調に行けば6時半くらいには帰れるんじゃないか?家に着くのは7時半から8時くらいだろうが」

 生意気な顔立ちをした色素の薄い短髪の渡島(ワタシマ)が腕時計を見ながらそう言った。運動部とは思えない色白さとつり目が特徴で、冷静かつ毒舌だ。生徒会の会計をやっている。

「順調って?」

「館に入ってすぐに撮影すれば、それでいいだろ?別に、何を撮って来いと言われた訳でもない」
 天城が渡島に訊き返すとすぐに答えが返ってきた。
「いきなり怒りだすなんて、ひどいですよね…」
 1年の和泉(ワイズミ)が呟くように言った。黒い短髪に幼さの残る大きな瞳。ここには年上しかいないが臆することもなく、共についてきた。
「いつものことだよ。多分彼女と喧嘩中だって聞いたよ。きっとそれで苛ついているんじゃないかな?」
 さらさらとした茶色のストレートヘアに眼鏡を掛けた城崎(ジョウザキ)は温厚な笑みを和泉に向けた。
「あんまり怒るとハゲちゃうよな~」
 あははと呑気に笑うのは外見は長身で大人っぽいのだが精神年齢が低いと先輩から馬鹿にされている白江(シロエ)だ。
 天城は先頭を歩いた。隣をまだ余裕のある龍宮が歩いている。一番後ろを渡島がだるそうに歩いている。城崎と後輩の和泉は足元に気を付けながら並んで歩いているが、中間を歩いている白江は鳥や虫を見る度に瞳を輝かせ動作が少し鈍くなる。
「ホント、何考えてんだか。和泉、巻き込んじまってごめんな」
「せめて君だけでも部活に残れるよう頼めればよかったんだけど」
 天城の言葉に城崎も言葉を乗せた。
「いえ、いいんです」
 そこの1年お前も行け、と天城や先輩達の近くでボール広いをしていた和泉も洋館に行かなければならなくなった。
「1年にも忠犬組みたいのがあるのか?」
 渡島が訊ねた。
「先輩達みたいなのですか?ありますよ」
「…へぇ。先輩等の引退が楽しみだ」
 渡島は鼻で笑うように言った。3年が夏に引退すれば主導権は2年に渡る。1年の忠犬組はどんな風に自分達先輩に媚びてくるのだろうか。けれど、媚びるのは自分達と相対する同級生のグループだろう。
「先輩達みたいなのって随分棘があるなぁ…」
 白江は苦笑いした。しかしそれが一番下の和泉達の正直な見え方なのだろう。
「仕方ないだろ。先輩等や後輩等にも分かるくらい露骨だってことだな」
 渡島が嘲るように鼻で笑った。そんな渡島を天城はちらりと見た。顧問はどうやら次期部長を渡島にしたいように天城には見えている。だが生徒会で忙しいだのと渡島はきっと断るだろう。
「仲、悪いんですか?」
「仲が悪いとか良いとかじゃないよ、多分。考え方が違うんだ。あとはプライドの問題」
 城崎は和泉の問に答える。
「プライドなんて、学生生活までだ。社会人になれば嫌でも頭下げないと生きていけないしな」
 渡島がそう言った。
 すでに山の半分は登ったのだろうか。振り返ってみると、背後の道の最奥は白く霞んでいる気がする。
「不気味だね~」
 白江が天城に声を掛けた。天城自身は大して不気味だとは感じなかったが、言われてみると、意識してしまう所為かそわそわとした何かが感じられた。
「白江、怖いのか?」
 痛いところを突かれたとばかりな表情をして、頷いた。白江の素直な性格は男子にはからかいの対象になっているが、女子には好かれている。
「天城(テンジョウ)は怖くないのか~?」
「帰るの遅くなって母親に学校に連絡される方が怖いな」
 顧問と今日は会議でいない部長にこの奇抜な練習メニューという名の後輩いじめがバレたらエスカレートすることなど目に見えている。先輩との1年半弱の付き合いで学んだことだ。
「天城(テンジョウ)の家、結構遠いから渡島の計算上帰れるの8時半くらい~?」
「そうだな。電車があれば7時半くらいかな」
 学校の近くに駅があるが、自転車通学の方が融通が利くので電車は部活が無い時しか使わない。ただ帰りが遅くなるのなら一晩くらいなら学校に自転車を置いても構わないだろう。
「きっと先輩、先帰っちゃうよねぇ」
「逆に待ってたら明日は大嵐かもな」
 確かに、と白江はくすくすと笑う。白江の動作は小動物のようだが図体がデカイ所為であまりかわいくない。女子にはウケるようだが、天城には分からなかった。
「天城は本当に先輩嫌いなんだね」
 後ろで城崎がそう言った。
「好きならここにいないだろ」
 渡島がそう言った。
「龍宮先輩、ああ言っちゃってますけど」
 天城が龍宮に話を振る。まさかそこで話を振られると思わなかった龍宮は苦笑
した。