【innocent】4 ※微グロ | さいですか。

さいですか。

ゲスくて畜生な内容ばかりです。よろしくおっぱっぴー。
※一部記事タイトルに好きな曲の歌詞の一節を使用しています。


木と木の間に観月がいる。
スラックスはきちんと穿いていたが、ワイシャツは脱ぎかけてある。

天前は唇を噛んで彼に近寄った。観月の肌に赤い傷痕が生々しく見えた。



──── 遅かった…


観月は気を失ったまま動かないが、息はある。
天前は観月にきちんとワイシャツを着させると背中に担ぎ上げる。背丈はだいたい同じくらいだ。体格もだいたい同じ。


天前は右足引き摺っていた。数日前に体育で捻挫したばかりだ。


呑気にボールで遊んでいた日々を思うと笑えてくる。


痛む右足。観月の微かな体温。まだ生きている。まだ、死んでいない。

痛覚などなければいいのにと天前は思いながら右足を引き摺って歩いた。我慢して右足に体重をかけると痛みとともに力が抜けて転倒しそうになる。

いつもなら小さいと思っていた校庭が広い。

ざーざーと降る雨のせいかもしれない。


「おい」
背後から声がかかった。恐る恐る振り返った。

「てめえ、何勝手にそいつ連れ帰ってんだよ」
ここの制服ではない、学ランを着た男子生徒が眉間に皺を寄せて立っていた。

学ランの男子生徒の手には折り畳み式のナイフがあった。


「ガキ、そいつは返しな」
天前は後退った。痛めた右足が2人分の体重を支えきれるとは思えない。雨が頬や額を伝う感覚が鬱陶しい。


「……だ……」
雨が煩くて自分の声すらも聞こえない。何が言いたいのかも分からない。


「いやだ……っ」

折り畳み式のナイフが開かれて、ギラギラと血を求めているようだった。


勝ち負けに興味はない。けれど、死にたくない。死にたくない。けれど観月を渡すことも出来ない。


「なら、力ずくで渡してもらおうじゃないの」

ナイフをちらつかせ、学ランの男子生徒は笑った。
命を何とも思っていない。そんな笑みだ。


「天…前…」
耳元で囁かれた自分の名前は鮮明だった。

「観月…」
背中から離れていく観月。目を見開いた。

「観月、行くな…」

学ランの男子生徒がナイフを持ったまま2人に勢いよく向かってきた。
自分から離れていく観月に手を伸ばした。

「ありがとうな」

よろよろとした身体で学ランの男子生徒とナイフを受け止めた。スローモーションで流れていく映画のワンシーンのようだ。

「観月…?」
口に出せば、速さを取り戻した。

観月が動く。男子生徒の両腕を掴み、まるで吸血鬼のように顔を男子生徒の首筋に持っていった。

耳を塞ぎたくなるような悲鳴と、口元を真っ赤に染める観月。学ランの男子生徒は地面に倒れた。

「観月!」

腹を刺されている。
観月は後退して腹からナイフを抜いた。そして地面に何か吐き出した。

真っ赤な塊。

学ランの男子生徒が喚きながら首筋を押さえている。

脈を喰い千切ったのだ。














雨が降っている。

水溜まりが観月から溢れる血液を広げる。



 少し離れたところから別の赤も流れてくる。



「お前の墓、造るから」

こいつの墓標を。


「生き残ってやるよ」


空を仰ぐ瞳はどこか虚ろで焦点が合っていない。


「お前の墓、絶対造るから」



微かに上下していた胸の動きが止まった。