先のジャズユニットはリーダーの名前をとって「キセバンド」と名乗っていました。

メンバーが抜けては新しいメンバーが入る、音楽やエンタテイメントとは関係のない業種の社内なのに

不思議とメンバーには事欠きませんでした。

 レパートリーも増え、会社での認知度も上ってきて、それなりに充実した音楽状況でした。

しかし、これはあくまでも自分の表現ではないという思いが募ってゆくのです。

仲間と曲を仕上げていく、創意工夫が演奏に反映され、アンサンブルも洗練され、多くの人の前で

演奏する機会もある。

 それが楽しければ楽しいほど満たされない気持も大きくなっていきました。

 

 転機は静かに訪れました。

今のマリーアンドファナーズのギター、佐々木氏が四国から転勤してきたのです。

博多出身の彼とは音楽の趣味は合うのですが、博多んもん特有の押しの強い性格がどうにも

苦手だったのですが、バンドの中で一緒にやりだすと、意外や物事をおろそかにしない人間性に

感心させられました。

 ギターも丁寧に弾くし、フレーズのアイデアも豊富で、今まで以上に楽しく演奏ができるようになりました。

ロックやポップスの曲を取り入れ、パッキングの振り分け、ギターソロの交換など、バンドの音楽性も

飛躍的に高まっていきました。

 

 そして、「キセバンド」からスピンオフユニット「コルゲートマシーンズ」が誕生します。

リーダーを除いた4人でロックのコピーをやり、友人の結婚式の2次会などで演奏しました。

散発ユニットである「コルゲートマシーンズ」の活動をパーマネント化してオリジナル曲をつくり、

ライブハウスで演奏したいという気持ちがこのころ芽生えたのでした。

 

 佐々木とはよく飲みに行きましたので、この話を何度もしました。

が、意外と義理堅い彼は、私のバンド乗っ取り案件を潔しとはしませんでした。

リーダーが作ったバンドだからそんな仁義を欠くようなマネはしたくないというのです。

 

 ある日、「キセバンド」のベース、千田氏が詞を書いてきたのです。

唐突なことだったのですが、数日後、この詞に佐々木が曲をつけてきました。

解放感あふれる歌詞と軽快なメロディー、何かが始まる予感がしました。

この曲こそ、マリーアンドファナーズの代表曲「メトロでGO」だったのです。

しかし、マリーアンドファナーズはまだ「キセバンド」でした。

 

つづく。