雨で午後から予定していたテニスが中止になった。

いつもは夜に聞くジャズを朝から聞いてみる。

 

ピアノが揺れている。

きしんでいる。

ベーゼンドルファーは華奢なので、あながちあり得ないことでもないかもしれない。

 その揺れが心を乱している。

レコードなどというものは、しょせん、パッケージされた商品で、娯楽として消費され

消耗するものだと思って聞いてきた。

 

 このピアノのタッチの強さはなんだ。

そうか、これはオスカーピーターソンからのメッセージなんだ。

 

「ピアノを弾くんじゃない、マイクを通して、その向こう側で聞いているヤツに伝えるんだ。

言葉じゃない。

音だ、音楽だ。

こんなに自由で良いんだぞとピアノの音で伝えるんだ。」

 

そんな1959年の意志がこの部屋の真新しいB&Wのスピーカーから聞こえた。

それは言葉にできない気持ちだ。

とても速いテンポで始まって、ゆっくりした曲、小さな音もエネルギーに満ちている。

 

「ここの客は、皆、裕福だ。俺が若いころなら一週間で稼ぐ金をこの店で一晩で使っちまう。

俺は裏口から入って、ラインより向こうに行くことはない。

しかし、こっち側には最高のピアノと最高のバンドマンがいる。

誰も見たことのない夢をこっち側とあっち側で同じようにみているんだ。

わかるか、これが音楽だ。

この世は平和じゃないかも知れないし、誰も平等じゃない。

生きていくことはとてもへヴィーなことさ。

でも、だれもが自由になれるのさ。

あいつらも、俺たちも。

さあ、はじめようぜ。」

 

雨は降りやまない。

オスカーからの45分間の手紙を読んだ。