初めて小津安二郎作品を見た。
退屈であったという感想を見る前から用意していた。
いつか見ようとずっと思っていたのが今日になった。1953年作品。
事前に用意した感想はくつがえされた。
なんともテンポがよいし、心地よいリズムがある。
遠く離れて暮らす家族の物語には、これといった派手な事件もない。
一般的で地味な話。
監督名も役者も伏せて、あらすじだけ読んだとすると、誰もこの映画を見たいとは
思わないだろう。
だからこそ、映画としての基本的なことがしっかりとできていないとおもしろい
ものにはならないであろう。シンプルな素材こそ、料理の腕がためされるのであろう。
俳優の演技力。
原節子の自分に対する憤りの表現には、しびれた。
感情を抑えることで激しい内面を伝える。声を荒げたり、オーバーなアクション
ではなく、抑制によって波立つような強い感情を表現する。
そして、すべての風景が、日本的であると感じた。
着物、下駄、木造家屋、土間、瓦屋根、土手、古寺、灯ろう、機関車、居酒屋。
おそらくその時代の象徴であることを認識されていたそれらは、すなわち、
いずれ失われるであろう、はかない日常であるがゆえに美しい。
後世に、なつかしいものとなる予言であったかのように思えた。
このシーンが、いちばん好き。

じつは、このストーリー、今の自分の状況と通じるところがある。
全くの偶然のタイミングで見たストーリーも知らない60年前の映画に胸打たれた。
そのことが最も大きな驚きであった。