音楽にまつわるデスクワークの中では、これがいちばん楽しい。

作曲した「曲」というのは、素材であって、メロディー、コード、詞が決まっている程度のもので、

ギターで弾き語りができる程度の完成度なのです。

 そこから、バンドでどのように演奏するのかを決める作業が、編曲です。アレンジ。

 

 まったく、料理と同じで、その素材をいかに生かして、おいしいメニューとして提供できるか。

拍子は? 速さは? どの楽器をどう鳴らす? 2本のギターの振り分けは?

 この作業で、楽しい曲が、より楽しくなったり、また、悲しい歌詞が、少し抑えた表現になったり、

素材が、料理として出来上がってゆくのです。

 

 例えば、今回の新曲、「太陽」の場合、弾き語りしながら、イメージがふくらんでいきました。

田舎の未舗装の一本道を、夜明けとともに歩きだす感じ。

 具体的には、ビリージョエルの「Say good-bye to hollywood」とか、ザ・ブルーハーツの

「青空」の感じ。テンポは、ミドル。シンプルなギターカッティングを丁寧に弾く、そして、ギターソロは

あえて入れないことで、物語としての連続性を意識した曲にする。

 

 さて、デスクワークとしての編曲は、このあたりまで。MTRで作り込みたいところだが、正直、時間が

それを許さないというのが昨今の事情である。

 で、この状態で、スタジオでメンバーにお披露目。弾き語りして、こんなイメージと口頭で伝える。

バンドの初期には、ここからの作業がこなれていずに、時間がかかっていたのを思い出す。

ああしよう、こうしようという意見がまとまらなくなってくるワケです。

 

 ここで、マリーアンドファナーズは、ルールを作るワケです。結局、アレンジに関する堂々巡りは、バンド

にとって不毛な時間なのです。特に、この練習時間の限られた「遠距離恋愛バンド」にとって、致命的な

ロスとなりかねません。名付けて 「作曲者優先制度」。

 アレンジの最終決定権は、作曲した者が持つ、というシンプルなものです。シンプルであるからこそ、

これは有効に機能しています。

 

 さて、そうして、バンドで、演奏しながらアレンジしてゆくのです。

最近は、すっかりこの短時間で仕上げる感じに、皆が慣れてきたようで、まとまるのも早いです。

というか、そうせざるを得ない状況に良く順応していると言うべきかもしれません。

 

 例えば、ボーカルは、弾きながら歌うので、凝ったフレーズを弾けません。そこで、もうひとりのギターが、

高音のギターフレーズを絡めます。ドラマーとベースは連携して、リズムの綾を織っていきます。

ときどき、ハッとするような素晴らしいバッキングが聞こえてくるのです。震えますね。

これが、編曲の楽しさの本質です。

 信頼するメンバーが、曲を理解し、より良いものへと向上させていくわけです。この「曲が成長する」、

そんな感覚なのです。

 

 高校のとき、初めてバンドを組んで、スタジオの重いドアを開けたときの感触を今でも覚えている。

それが、今でも、スタジオのドアを開けるとき、蘇る。

 そう、スタジオの練習も、あのころと変わらず、とても新鮮なワクワクするような気持ちで入っています。

それが、新しい可能性の扉だから、なのかもしれません。