その日、朝は少し遅かった。
タフな2日間の研修と、懐かしい友人たちとの再会と新宿の夜がもたらした興奮の余韻がまとわりついていた。
 シャワーを浴びた。
中央線で西を目指す。

 どうしても受け入れられない事実がある。信じたくない真実がある。どんな言葉を重ねたところで表現なんかできない。

 僕は、覚悟していたつもりだった。いつか、僕の心の中にあるあの人がいなくなることを。その時は淡々と事実を認め、うろたえることなどなく、同じ時代を生きることができたことを誇りにしようと。

 しかしその衝撃はあまりにも大きく、とても受け止められるものではなかった。
そう、受け止められなかった。

 あの日以来、あんなに好きだったその音楽を聴けなくなった。聞けば泣いてしまうだろう。それを過去のものにしてしまうだろう。他の何かで癒されるようなそんな気持ちじゃなかった。

 レコード屋、本屋、FMラジオ、スカパー、NHK、もうやめてくれ、俺だって見たいし聞きたいし、まだまだこの人のこと知りたい。でも、まだ無理なんだ。

 これじゃダメなんだ。ずっとそう思ってきた。自分なりの供養をしなければ。
自分のなかで、この人のことを本当の神様にしなければ。

 あの日からずっとそう思っていたんだ。

 そんな折、東京へ出張が決まったのは、偶然ではなかったのかもしれない。