1阿部2阿部3花井 | 実録鬼阿部日記

1阿部2阿部3花井

それは途中までは非常によくある昼休みの出来事だった。

オレは⋯席替えでせっかく遠く離れた席になったのに、なんとなーくつい阿部と花井の傍に寄ってってご飯を食べちゃってたんだ(や、だって後でさか⋯他のクラスの野球部の奴が来たりしたら一緒したいじゃん?)。

その日のオレのオカズのメインはエビフライだった。
エビフライ⋯あのさくさくでほくほくで美味しい食べ物エビフライ⋯(愛)
B型なのに珍しいねーって言われるけど(てゆか血液型でそんな決まってるもん?良く知らないけど)、オレは好きな食べ物はあとの楽しみにとっておく方なんだよね。
なので当然この日も⋯他の煮物とか卵焼きとか(それも好きだけどエビフライ様には叶わないのだ)をじわじわ食べつつ、本日のメインイベントを楽しみにしていた⋯⋯のに⋯!



悲劇は突然に起こった⋯⋯

突然だけど⋯⋯悲しいくらい想定内(流行ってるよねーこれ)だった⋯⋯




横からサッと現れた黒い物体⋯その名も阿部の箸が⋯!
オレの⋯⋯オレのエビフライ様を拉致したんだ⋯!(泣)
しかも拉致するなり奴はエビフライ様を恐怖のブラックホール⋯その名も阿部の口へとポイっと⋯!!


オレ「あ、あべー!?なにしちゃってんのー!」

阿部「は?持て余してんじゃねえのか?」

オレ「なんで!?違うよ!食べるよ!だいすきだもん!」

阿部「⋯⋯ならなんでわざわざ弁当箱からコレだけ蓋の方に避けたりしてんだよ」

オレ「だ、だって絶対最後に食べるから⋯!愉しみにとっておいたんだよ~!」

阿部「チッ⋯⋯紛らわしいんだよ」

オレ「ひどいー!阿部ひどいー!返してよオレのエビフライー!!」

阿部「食っちまったモンは仕方ないだろ、⋯ほら、代りにこれやるよ」


そう言って阿部がオレの弁当箱の蓋にポンと載せたのはそら豆だった。



  そ    ら    豆    ⋯    !



なにこれ⋯
何をどうしたらコレがエビフライ様の身代わりになると?
あんまりだー!!


オレ「うっ⋯⋯うう⋯っ(泣)」

花井「こら、阿部。あんまヒデーことすんなよ」


うっ⋯花井やさしい⋯さすがキャプテン⋯!
でも⋯でも優しくしてくれてもオレのエビフライはもう⋯⋯


阿部「フン、」

花井「最近のお前のソレ、目に余るぞ」

阿部「ソレってなんだよ」

花井「だから、お前ばっかり水谷を苛め過ぎだろ」

え、花井ってば⋯!
今の件だけでなく、日々の阿部の横暴に意見してくれちゃってるわけ!?
うわーすごい⋯!流石、主将様⋯!!
も、もしかしてこの抗議が通ったらオレの生活に平穏が⋯!?(ドキドキ)

しかし次の瞬間、恐怖の魔王はとんでもない事を口走った。




阿部「フン、⋯⋯⋯嫉妬かよ?」




⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯は⋯⋯?

あ、あべくん⋯⋯?ワンモアプリーズ?いやいややっぱいいや!
え⋯ていうか何?何を言い出しちゃったワケ?阿部は⋯


花井「⋯⋯チッ⋯⋯うるせーんだよ⋯」


ええっ、ていうか花井ーーーー!!??
お前はなんで顔を赤らめてんの!?
そりゃ普段から赤面がちな坊主だとは思ってたけど⋯

なに?この場面で赤面って何?まさか阿部の謎発言が当たってるの?


嫉妬って⋯⋯嫉妬って⋯⋯⋯⋯誰に?なんの嫉妬!?!?



阿部「悔しかったらお前もやりゃいいだろ」


!?!?!⋯⋯や、やるって⋯なにをなさるんですかァーー!!!(白目)
え、この話の流れ⋯⋯
まさか⋯まさか花井は阿部の横暴を止めたワケじゃ無いってこと?
は、花井もほんとはオレを虐めたいとか思ってるって事ォ!?!?(震)


花井「チッ⋯⋯そんなんじゃねえよ」


あ、違うんだ⋯ヨカッタ⋯!
そりゃそうだよね~


花井「オレは⋯お前みたいに歪んだコトする気ねえからな!」


そうそう、いじめなんてほんとにさ⋯!


花井「でもお前が水谷を独占すんのは我慢なんねーんだよ、いい加減!」




⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯へ⋯⋯⋯⋯⋯⋯?



あ、の⋯⋯はないくん?キャプテン?
アナタ今、一体なにを⋯?


阿部「だから悔しけりゃお前もやってみりゃいいだろ?」

花井「だから、オレはそういう形で発散する気ねぇっつってんだよ!」


え、あれ⋯二人の言ってる事がさっぱり理解できないんだけど⋯
ソレ、ナニゴデスカー?(逃避)


阿部「なら今まで通り頭ン中だけでモンモンとしてりゃいいだろ?いい子のキャプテンはよ」

花井「うるせーな、好きなやつ虐めるなんて小学生以下の奴に言われたくねーんだよ!」


ちょちょちょちょっと待ってーー!
どさくさで恐いの聞こえた!へんなの聞こえちゃった!!


阿部「花井、お前は一つ間違ってる」


⋯⋯まさか阿部に救われる日が来ようとは⋯
そ、そうだよね⋯花井は何か衝撃的な勘違いをしてるよね⋯?


阿部「オレが水谷を好きだから虐めてんじゃねえ、水谷が虐められるのが好きな奴だからオレは虐めてやってるんだ」


なに言っちゃってんスか阿部くーーーん!!(白目)


花井「そんなワケねえだろ、勝手な事言うな、阿部」

そうだよそうだよ⋯!
やっぱり花井の方が断然常識人だったよ、ごめん花井、疑ったりして⋯!


花井「お前の愛情はトンガリ過ぎてんだよ!もっと水谷を包んでやろうって気にはなんねえのか?やっぱそんな奴には水谷は任せらんねえな」


あ、あの⋯⋯はない⋯⋯?
今のなに⋯⋯?
や、トンガリ発言とかふつうなら笑うとこなんだけど⋯一瞬突っ込もうかなーと思ったんだけど⋯⋯
な、なんだろう⋯オレは一言も喋って無いのに今にもつっこまれそうなこの気持ちはなんだろう⋯突っ込み違いってやつ?アハハ(壊)
⋯い、今すぐ椅子ごと逃げたいけど恐くて立てない⋯!


阿部「なにが包む愛だ、それでお前に何ができるってんだ?聞かせてみろよ」


いや出来たら聞かせないでくれないかな⋯!


花井「⋯⋯⋯オレはな、決めてるんだ⋯」

阿部「なにをだよ?」

花井「今度からレフトに飛んだフライも全部オレが取ってやる、ってな。水谷のエラーはオレが守ってみせる⋯!」


え、あれ⋯なに⋯ここまさかオレ、キュンってすべきとこ⋯?
残念ながらムカっとションボリと、あとゾワゾワ~っていうのが大部分なんだけど⋯!
ちょ、ちょっとさ⋯この会話いい加減さ⋯悪い冗談はさ⋯⋯


阿部「⋯⋯クッ⋯⋯⋯そう来たかよ⋯!」


えーーー!なにそこで勝手にダメージ食らってんのー??
もうお前らの会話の基準がわかんねーよ!


花井「フン、キャッチャーにはひっくり返っても出来ねえ事だな。それで腹いせに虐めてんのか?」

阿部「そんなんじゃねぇよ、大体お前、後から割り込もうって魂胆が汚ぇんだよ」

花井「割り込むも何も、水谷はお前のモンじゃねえだろ?」


当たり前だよ⋯!!!(震)
そう、そういう当たり前の事忘れないでー!
お前らの会話おかしいことになってるから!


阿部「いや、暫定オレのモンみたいなもんだな」


あ、あべー!?
⋯って突っ込みたいんだけど⋯⋯⋯ザンテイってなんだ⋯⋯?


花井「だから勝手言うなっつてんだ!まだ勝負はついてねえ、水谷は渡さねえからな!」

阿部「オレだって手放す気はねえよ!」

オレ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」



こ、ここまで⋯⋯色々逃避しながら聞いてたけど⋯⋯
黙って聞いてたけど⋯⋯⋯

え⋯⋯なにこれ⋯⋯まさかなの?そうなの??


コイツらオレを奪い合ってるの⋯⋯!?!?


一体何故そんな恐ろしい展開に⋯!?
マジで恐い⋯!特に花井!!(だってオレにとって昨日まで花井は常識人で⋯!阿部はある意味今更だけど⋯いやでも阿部も普段の200倍恐い⋯!)

ほんとになんでこんな事に⋯!?



花井「来い、水谷!お前阿部といたらボロボロにされちまうぞ!(右腕グイッ)」

阿部「バカ、ここにいろ水谷!お前は既にオレ無しじゃいられない筈だぜ?(サムズアップ)(そして左手グイッ)」

オレ「ちょ⋯っ!痛い痛い痛い~~!離してよー!」

阿部「そんな事言って痛いのが好きなクセによ。⋯⋯ほら、見てみろよ花井、イイ顔してやがるだろコイツ」

花井「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


だからなんでそこで赤面すんのー-ー-!?(白目)
も、もう花井も信用ならない⋯!(いや今日のここまでで既にそうだけど)


神様⋯!オレが一体何をしたっていうのー?
もうこんなキモいのやだよー!



これならただいじめられてる方がマシだよー!






オレ「⋯⋯はうあ!!!(ガバァッ)」





だらっだらの汗をかきながら、気付いたらオレは自分の部屋のベッドの上に起き上がっていた。



ゆ⋯⋯⋯夢⋯⋯⋯!!!!



そ、そうだよね⋯あり得ない⋯!!
うわ~~よかった~!夢だった⋯!
ビクトリー!勝訴!おせきはーん!!



オレ「は~~~~もう焦ったよ~⋯んもー新年そうそ⋯」



そこでオレはハッと気付いた⋯⋯
お休みなのでアラームは止めたけど枕元においてある携帯をカパっと開くとそこには⋯⋯


「1/2  ○:○○」




今  の  が  オ  レ  の  初  夢  !  !



不   吉   す   ぎ   る   ⋯   !





ああ⋯今年も⋯⋯今年もオレは酷い目に合い続けるんだろうか⋯

神様どうかお手柔らかに⋯!