2025年は海外アーティストの来日について、単独公演志向がますます強くなったことが印象的でした。これとは対照的だったのがロックフェスの顔ぶれ。フジロック、サマーソニック共に海外のフェスに比べればラインアップの見劣りが否めず、一方で、入場料が数万円以上の単独公演が増えましたね。もう元には戻らないかも。
洋楽アルバムの国内盤が発売されないケースも、もはや珍しくなくなりました。その象徴というか、最強のラインアップを誇る文京区図書館では毎月の新着CD資料点数(国内外、クラシック含む)がピーク時に300点を超えていましたが、最近は100点を切るようになりました。もう20年以上、アルバムを図書館でレンタルしてMDに録音するという習慣を続けてきましたが、これも風前の灯火。新品MDの発売も終了しましたしね。
などなど、時代の変化を突きつけられた2025年ではありましたが、今年も優れたアルバム50選を選出できたのは嬉しい限り。今年は珍しく邦楽アルバムが3点ランクインしています。
まずは表彰式の写真から。
●1位~10位
1 レディー・ガガ - メイヘム
Lady Gaga - Mayhem
レディー・ガガ自身がこれまで体験してきた悪夢などのカオス体験をモチーフにして制作されたアルバム。一時期はオーソドックスな路線に向かうかとも思えていたガガですが、デビュー時を遙かに上回るパンチの効いた楽曲の数々にノックアウトされました。配信で見ることができた海外フェスでのパフォーマンスも破格の出来映えでしたね。間もなくの来日が楽しみ。
2 パルプ - モア
Pulp - More
僕が全く通って来なかった1990年代のブリットポップブームをOasisやBlurと共に牽引、その後は第一線を退いたかに見えていたPulpが、まさかの復活で正月明けフェス来日、そしてまさかの新作、その新作がまさかの極上とは恐れ入りました。改めて全盛期のアルバムを通しで聞きましたが、全盛期とされる時代を凌駕する完成度ではないでしょうか。
3 Alex G - ヘッドライツ
Alex G - Headlights
洋楽好きのコアファンの間では以前から関心を集めていたAlex G、通算10作目に相当するこの作品で、初めて良さに気づきました。
4 Matt Berninger - Get Sunk
Matt Berninger - Get Sunk
The Nationalのフロントマン、Matt Berningerのソロ第2作。The Nationalのセンチメンタル色をぐっと濃くしたサウンドと、彼のジェントルな歌声に惚れ惚れしました。
5 マイリー・サイラス - サムシング・ビューティフル
Miley Cyrus - Something Beautiful
ドスの効いた彼女のタフネスな声には以前から一目置いていましたが、アルバムベースではこれが最高傑作でしょう。ともかく楽曲が良くて粒ぞろい。
6 Sombr - アイ・ベアリー・ノウ・ハー
Sombr - I Barely Know Her
彗星の如く現れたオルナティブ・ポップのアーティストのソロデビュー作。ウォール・オブ・サウンドを彷彿とさせる分厚い音作りと親しみやすいメロディラインに魅せられました。
7 Horsegirl - フォネティクス・オン・アンド・オン
Horsegirl - Phonetics On and On
女性3人組インディロックバンドの2nd。一切の装飾を排して“素”のスタジオ同録をそのままパッケージしたような、フレッシュな作品。音はあどけないが、グルーブが効いていて、アレンジも面白い。1stから一気に進化した感じ。
8 Perfume Genius - グローリー
Perfume Genius - Glory
2020年には前々作を1位に挙げていたパフューム・ジニアス、彼のナイーブな声、そして身体表現も含めて大好物なんですよね。フジロック2025ではレッドでかぶりつきで鑑賞できました。彼氏(key担当)との愛しいMVをどうぞ。
9 Wolf Alice - ザ・クリアリング
Wolf Alice - The Clearing
前作は2021年度の1位としていたウルフ・アルスの新作。ややロック色が後退した代わりに、表現にバリエーションが広がった気がします。正月明けのロックフェス、僕にとってはヘッドライナーです。
10 石橋英子 - Antigone
Eiko Ishibashi - Antigone
大貫妙子の声質に似た石橋英子の、浮遊感のあるボーカルが楽しめる作品。当然の如くアレンジにはジム・オルークが全面的に参加していると思われ、サウンドに深みとバラエティ感があって聞き飽きません。邦楽アルバムのベスト10は僕は初めてです。
●11位~20位
11 David Byrne - フー・イズ・ザ・スカイ?
David Byrne - Who Is The Sky ?
トーキングヘッズを通って来なかった僕が初めて彼の作品に魅せられたのは2004年の「グロウン・バックワーズ」だったかな。映画「アメリカン・ユートピア」では圧倒的な存在感を感じて、ますます好きになりました。新作は突き抜けるような多幸感と豊かな含蓄。
12 Yungblud - アイドルズ
Yungblud - Idols
PopsとRockの間を縦横無尽に渡り歩き、エモーショナルなボーカルはそのままに、今回は楽曲の良さが加わって、彼にとっても代表作になったのでは。最近はスティーブン・タイラー(Aerosmith)と互角に張り合ったEPもリリースされましたね。伊藤政則さんも推し始めて、HR/HMファンにも名が知られるのは嬉しい。
13 Sharon Van Etten & The Attachment Theory - (selftitle)
Sharon Van Etten & The Attachment Theory - (selftitle)
SSW、フォークシンガーとして世に出たシャロン・ヴァン・エッテンが初めてバンド名義でリリースしたアルバム。良き仲間を得て解き放たれた躍動感がよく表れていると思えます。バンド名義で来日してほしい。
14 FKA Twigs - Eusexua
FKA Twigs - Eusexua
エッジが立ちまくりのFKA Twigs、ますます過激に、キレ味の鋭いアルバムを出してくれました。リミックス音源を使用したと思われるMVは今年最高のブッ飛び作ではないかしらん。
15 Wednesday - Bleeds
Wednesday - Bleeds
カントリー基調のオルタナバンド、ガレージなザラザラ質感が素敵。
16 青葉市子 - Luminescent Creatures
Ichiko Aoba - Luminescent Creatures
海外の音楽誌で最も評価されている日本人アーティスト、青葉市子。ありふれた日常をファンタジックに変換した楽曲揃い。
17 Lorde - ヴァージン
Lorde - Virgin
痛みと背中合わせで制作されたLorde復活作。紆余曲折を経て、ようやく自身の表現手法を再び獲得した感があります。このMV、泣けてくる。
18 CMAT - Euro-Country
CMAT - Euro-Country
僕的には今年の切り札のつもりだったんですが、いやいや世界ではとっくに評価されていたのね。ケルト・カントリーを出発点にしながらも世界で通用するキラキラポップ作。
19 Big Thief - ダブル・インフィニティ
Big Thief - Double Infinity
過去作よりも耳馴染みは良いのですが、ずいぶん型にはまっちゃったな、という印象も正直ある。でも入門編にはなり得るのでは。MVは彼ららしいサイケさがあって面白い。
20 藤井風 - Prema
Kaze Fujii - Prema
初めて彼のアルバムが好きになった作品。1990年代あたりのサウンドをなぞったような音作りですが、BGM的な馴染みがよくてドライブ中によく聴きました。アジアでは受け入れられそう。この曲、好きなんだよね。
●21-30位
21 スウェード - Antidepressants - 抗鬱剤
Suede - Antidepressants
全盛期を思わせる作風は前作(2022年度のマイベスト6位)からですが、その勢いを保ち続けています。
22 Oklou - choke enough
Oklou - choke enough
2025年の音を醸した、圧倒的にサウンドプロデュースの勝利作。フランス人SSWとは知りませんでした。世界の音楽誌の年間ベストでは穴馬的な存在。
23 Japanese Breakfast - フォー・メランコリー・ブルネッツ (&サッド・ウィメン)
Japanese Breakfast - For Melancholy Brunettes (& Sad Women)
前作のポップ作で日本でもお馴染みになった彼女の、心象風景を綴った作品。地味な路線ではあるけど彼女がやりたいのはこっちかな。
24 Geese - Getting Killed
Geese - Getting Killed
NYアートロックの新星と音楽通の間では大評判。海外の音楽誌では年間ベストの呼び声が高い作品です。僕は遅ればせながら10周くらい聴いてようやく好きになれました。
25 Blood Orange - Essex Honey
Blood Orange - Essex Honey
ネオR&Bの世界で異彩を放つブラッド・オレンジの新作も鉄板の心地よさ。
26 Mei Semones - アニマル
Mei Semones - Animaru
日本人の母をもつメイ・シモネスのボッサな歌声が軽やか。日本語歌詞と英語歌詞の混濁ぶりが彼女のアイデンティティを感じさせます。
27 d4vd - ウィザード
d4vd - Withered
甘くとろけるような歌声を聴かせるネオR&Bのソロシンガー、デイヴィッドの、前作(EP)を経てのデビューフルアルバム。フジロック2024の夕景が未だに鮮明。
28 Florence + The Machine - Everybody Scream
Florence + The Machine - Everybody Scream
6作目のマンネリ感がなくはないけど、フローレンス・ウェルチ姐さんは健在。ハイテンション・ボーカルがますます冴え渡る。唯一の来日(赤坂ブリッツ)から13年か…。
29 Blondshell - If You Asked for a Picture
Blondshell - If You Asked for a Picture
米国西海岸のSSW、ブロンドシェルのデビューアルバム(2023年のマイベスト45位)に続く2nd。KEXPのライブも拝見。派手さはないけど、ソングライティングも歌声も手堅く力をつけてきている感じがします。
30 Turnstile - Never Enough
Turnstile - Never Enough
ハードコアというジャンルにおさまらない、プログレッシブな側面も見え隠れするバンド。フジロックでは見逃してるなあ。
●31-40位
31 Lucy Dacus - Forever Is a Feeling
Lucy Dacus - Forever Is a Feeling
さまざまな弦の響きが彼女のふくよかな声と共鳴していて、とても繊細で上品な仕上がり。琴線に触れる楽曲が多い。MVも面白いよ。
32 Wet Leg - moisturizer
Wet Leg - moisturizer
鮮烈のデビュー盤と比べればキメ曲が乏しい感じがありつつも、まさかの復活劇は嬉しい。自分たちの立ち位置をしっかり定めた感がある2nd。
33 Divorce - Drive to Goldenhammer
Divorce - Drive to Goldenhammer
イギリスのオルタナカントリーバンド。パンク系のエモーショナルなサウンドを織り込みつつの、ゆるーい感じが心地よいんだよな。フルアルバムとしてはデビュー盤。
34 HAIM - I quit
HAIM - I quit
素晴らしかった前作からのトーンダウンは否めませんが、過去を生きることを「私はやめた」というタイトルに潔い決意が滲みます。フジロックで観られなかったのは残念。
35 The Last Dinner Party - フロム・ザ・パイヤー
The Last Dinner Party - From The Pyre
シアトリカルな音作りが彼女たちの持ち味だと再確認した2nd。来日公演でのチームワークの良さも印象的でした。
36 Cate Le Bon - Michelangelo Dying
Cate Le Bon - Michelangelo Dying
Wilco最新作のプロデュースを務めたことで関心を寄せたケイト・ル・ボン。バックの多様な音作りが心地よくて仕事中に頻繁に楽しみました。
37 Black Country, New Road - アンツ・フロム・アップ・ゼア
Black Country, New Road - Ants From Up There
鮮烈なデビュー後にフロントマンを務めていた男性が抜け、空中分解かと思いきや、女性ボーカルを前面に出して正常軌道に辿り着いた感があるBC,NR。KEXPのライブも拝見しましたが、このフォーメーションとても良いですね。
38 Jeff Tweedy - Twilight Override
Jeff Tweedy - Twilight Override
Wilcoのフロントマン、3年ぶりソロ作は3枚組の大作。近しい人たちとホームで手作りしたような楽曲が並んでいて、無造作ながらも彼の世界感が窺える。
39 Mavis Staples - Sad and Beautiful World
Mavis Staples - Sad and Beautiful World
バラカンシネマフェスティバルで観た彼女のドキュメンタリー映画の興奮と地続きにある作品。タイトルにある悲しくて美しい世界、それは彼女が体験してきた86年間の人生そのものでもあるのでしょう。映像は2025年に収録されたTVショーから。
40 Tate McRae - ソー・クロース・トゥー・ワット
Tate McRae - So Close To What
とてもバランスのとれたポップスアルバムだと思うのですが。若手女性シンガーが数々あれど、僕的にはイチオシ。
●41-50位
41 caroline - キャロライン 2
caroline - caroline 2
複雑に絡み合う音と音が一本の線になって織りなすグルーブがスリリング。
42 Selena Gomez / Benny Blanco - アイ・セッド・アイ・ラヴ・ユー・ファースト…アンド・ユー・セッド・イット・バック
Selena Gomez / Benny Blanco - I Said I Love You First
ダンスポップから一転、囁きポップスに徹したこのアルバムには驚いた。テイラーにとっての「folklore」のような位置づけの作品。新婚様お二人のラブラブ共作。
43 Panda Bear - シニスター・グリフト
Panda Bear - Sinister Grift
アニマル・コレクティヴのフロントマン、パンダ・ベア。2015年「Panda Bear Meets The Grim Reaper」(同年の年間ベスト24位)以来の久々の快作。
44 Rosalía - Lux
Rosalía - Lux
海外音楽専門誌では年間ベスト級の評価を得ているスペインの女性シンガー、ロザリアの新作。クラシカルな歌曲も交えたジャンルレスなアルバムですね。MVはとても豪華。
45 Little Simz - Lotus
Little Simz - Lotus
ヒップホップは基本的に馴染めないのですが、彼女のアルバムはトラックの面白さが際立ってる。
46 PinkPantheress - Fancy That
PinkPantheress - Fancy That
ハイパーポップ。おじさまたちをノックアウトか。
47 These New Puritans - Crooked Wing
These New Puritans - Crooked Wing
Hostess Club Weekenderで観た当時のThese New Puritansが戻ってきた。MVの楽曲はポラチェックの参加が効いてますね。
48 Psychedelic Porn Crumpets - Carpe Diem, Moonman
Psychedelic Porn Crumpets - Carpe Diem, Moonman
おもちゃ箱をひっくり返したようなサイケパンク。
49 Damiano David - Funny Little Fears (Dreams)
Damiano David - Funny Little Fears (Dreams)
マネスキンがどうも肌に合わなくて、僕はソロ作の方が好み。悪しからずです。
50 Yazz Ahmed - A Paradise In The Hold
Yazz Ahmed - A Paradise In The Hold
女性トランペッターによるエキゾチックなフュージョン。行ったこともない海外のいろんな風景が目に浮かぶ。Radioheadの作品に参加したこともあるよう。動画MVは見当たらないので静止画の1曲目を。
●番外編●
Lola Young - This Wasn't Meant for You Anyway
UKの新星、Lola Youngの2ndアルバム。SNSでバズったらしい楽曲「Messy」のMVを「ベストヒットUSA」で和訳付きで見てイチコロになり、勢いでアナログも購入。ふてぶてしい顔のジャケットも最高でした。自らが抱える傷を曝け出してソウルフルに歌いますが、どこかコミカルなところ、チクチク刺すところもあって実にキュート。日本では輸入盤CDが2025年3月に発売されたらしいから今年度に入れてもいいのだけど、サブスクでは2024年6月にリリースされたらしいので、なくなくリストから外しました。本来ならベスト30クラス。YouTubeには和訳を紹介したコンテンツもありますよ。
●ベストライブ●
〈単独公演〉
Billie Eilish(8月17日、さいたまスーパーアリーナ)
Black Country,New Road(12月10日、EX六本木シアター)
〈フェスティバル〉
St.Vincent(rockin’on sonic、1月4日)コスモステージ
Perfume Genius(フジロック、7月25日)レッドマーキー
English Teacher(フジロック、7月26日)レッドマーキー
Yungblud(サマーソニック、8月16日)マリンステージ
Beabadoobie(サマーソニック、8月16日)ソニックステージ
2026年からは、既に購入済みのコンサート以外は大幅にセーブする予定。もうね、オールスタンディングのライブは足腰がキツイのよ。開演と同時に全員が立ち上がる指定席のライブも結構しんどくなってる。フジロックに行くことだけは決めています。



















































