私が養護施設に入園した直後だった。
同級生の京子ちゃんが、いきなり私のことを「ホタル」と呼び始めた。
なぜホタルなのかを問い質してみても要領が得ない。
その内に、施設の保母さんや間名指導員さえも「ホタル」と呼び始めた。
自然、私の名前を呼んでくれる人も少なくなり、ホタル=私と化してしまったのである。
ある日、京子ちゃんに、
「何でホタルなん?」と、真剣に聞いてみた。
「ホタルっち、見たことあろうもん?!
いっつも、大人しかばってん、怒ったらお尻に火がついたようになるけんくさ。」
ホタルが怒ると、お尻に火を付けるのかと言う疑問はあったが、分かったようで、分からない理由で私自身も納得し、施設を出るまでホタルと呼ばれることになり、何ら疑問を抱くことはなかった。
その、京子ちゃんは泣き虫で甘えん坊ではあったが、私にとって初恋の女性でもあった。
両想いと言って良いのか悪いのか、京子ちゃんといつも一緒にいたような気がする。
そして、とんでもない要求で私を振り回していたが、私のことを1番に理解してくれていた人であった。
京子ちゃんとの思い出は、決して楽しい事ばかりではなかったが、私にとって、大切な思い出、大切な時でもあった。
・・・幼い日の思い出は、秘めて大切にするのも良いだろう。
けれども、小さな時の流れのなかで
ひとつひとつの想い出を手繰りながら、
自分を、本当の自分を、見つけることも大切である。
確実な一歩を踏み出すために探そう。
本当の自分自身を探す旅に出よう・・・