故郷 ー拘置所・独居房にてー | 寿 栄 -鎮魂の歌

寿 栄 -鎮魂の歌

養護施設生活&矯正施設生活を総算すると人生の半分以上の割合を占める悪たれ人生を、最後の懲役となる約8年余りの服役生活のなかで、思い描いた文章をまとめています。

 

7月の風

 

7月の風が叫んでる。  故郷に帰れと叫んでる。

気まぐれな風は 急に立ち止まっては去り 僕を置いて行くけど

僕の本当の心は 遠い故郷に忘れて来たよ。

 

獄につながれ ひざを抱えて 涙を流して

7月の風が初めて 僕に、優しく教えてくれた

故郷に戻れ 幼い日のこころに戻れと教えと教えてくれた。

 

生まれたままの姿で戻れば 素足のままで戻れば

故郷に忘れ 時の流れに忘れた

  あの日のこころを取り戻されるでしょうか。

 

 

 

 

泣いたよ あの日 空に母さんの面影を抱きつつ

笑ったよ 仔犬を抱きしめ 生きてることを感じつつ

 

時代の流れのなかで故郷の町は 大切な姿は失われ行くけど

こころのなかで生きているあの町へ

探しに行こう 見つけに行こう

悲しみと 涙と 孤独に耐えたなら

きっと探せる あの日のこころを探せるさ。

 

7月の風は気まぐれだけど 僕に呼びかけ叫んでる

くたびれ疲れた僕の胸に あの日に帰れと叫んでる。

 

遠い遠いあの日の僕の 本当の自分を探しに

 故郷に帰れと叫んでる。