────「行こうよ。」
「え?でも危ないんじゃないの?」
「大丈夫だよ。兄ちゃん武術ならってるし、
いざとなったら暴獣だってやっつけちゃうさ。
見たいんだろ?この花。」
そう言って本に描かれている、ピンクの花を指差す。
「うんっ。でも、本当に大丈夫?」
「はは、大丈夫さ。兄ちゃんに任しとけ。」
「・・・ありがと。お兄ちゃん。」
そうして、ファウスは松葉杖のミリィと家から出て行った。
────妹は、ミリィは、もってあと半年の命だった。
痺死病(ましびょう)という、手足の痺れから始まり、
最終的には呼吸器官などが麻痺し、
呼吸ができなくなる病気を煩っていた。
それは1万人に1人と言われている、先天性のもの。
有効な治療法は無く、潜伏期間が長い、
そしていつ発症するかわからない。発症してからは、もって2年。
そして、ミリィは麻死病が発症してから半年、既に
歩くことさえままならくなってきていた。
ガイアル市の東口付近にある、ファウスの自宅から
東に5~6ヤージほどの草原につくと
ファウスは早速花を探し始めた。
「よし、じゃあ兄ちゃんが探してみるから
ミリィはちょっと休んでていいよ。」
口には出さなかったが松葉杖で、
ここまで歩ってきたミリィはもうへとへとだろう。
「ありがとっ、ちょっと疲れてたんだ。」
彼女は愛らしく微笑んで、近くにあった
座りやすそうな石の上に座った。
「あ、そういえばあの花の名前はなんていうんだ?」
「えー、お兄ちゃん知らなかったの?」
頬を膨らませながら続ける。
「あの花はね、セルンドランズっていう花だよ。
色も好きなんだけどね、花言葉が特に好きなんだっ。」
「へえ、どんな花言葉なんだい?」
「淡く輝いて消える、っていう花言葉だよ。
なんていうか、私にぴったりだよね?」
えへへ、とミリィは小さく笑う。
「────っ」
ファウスは何も、言えなかった。
気まずい沈黙が流れたその時────。
ズシン、ズシンと何か大きな生物の足音が聞こえた。
※ 1ヤージにつき約830m
