「雅紀くん?どうしたの、こんな所で……」
「あ、翔ちゃん……」
「雅紀くん、やっぱり痩せたよね?足元もフラフラしてるし。」
「あー、昨日から何も食べてないから……」
「なにやってんだよ。夏バテじゃないの?って、雅紀くん、今何処から出て来た?」
「何処からって……別に翔ちゃんには関係ないだろ。」
和さんとの事は誰にも知られたくない。邪魔されたくない。
「関係ないって……俺たち友達だろ?」
「友達?俺らいつから友達になったん………だ……よ………」
「っ!?雅紀くんっ!雅紀くんっ!」
一瞬、目の前がグラリとしてその後の記憶はない。次に俺の目に飛び込んで来たのは見慣れた祖母の部屋の天井だった。
「…………あれ…………なんで…………」
「雅紀っ、良かった……」
次に目に飛び込んで来たのは心配げに俺の顔を覗き込む祖母と翔ちゃんの姿だった。
「雅紀くん、俺と話してる途中で倒れちゃったんだよ。やっぱり夏バテしてんだよ。」
「ん……ごめん…………って、今何時っ!?」
ふと、窓の外が暗い事に気付いた。和さんとの約束っ!早く行かなきゃ!
起き上がる俺を驚きながら翔ちゃんが止めた。このままじゃ引き留められて和さんの元に行けない。
「わ、わかったって……寝てるから大丈夫だって。翔ちゃんはもう家に帰って。うちの人心配してるよ。」
「ほんとにちゃんと寝てるんだよ?」
やはり翔ちゃんも家の人に心配かけたくないだろう。俺の事を気にしながら家に帰って行った。
ごめん、翔ちゃん。俺、和さんに会いたいんだ……ほんと、ごめんね
翔ちゃんが帰ってしばらくしてから俺はコッソリと家を抜け出した。
早く……早く……和さんの元へ……
もう辺りはすっかり闇に呑み込まれたように暗くなっていた。