二宮さんから差し出されたお茶を飲みながらおはぎを口に運ぶ。
「あ……うまい……」
「え?雅紀くんのお祖母さんが作ったんでしょ?初めて食べるの?」
「……はい。今までばあちゃんが出してくれても食べてなかったんで……」
都会育ちの俺にはおはぎなんて古くさいって食べる事はなかった。
「もったいねぇなぁ。こんな美味いおはぎ作れるばあちゃんなんてそうは居ないぞ。」
そう言いながら大野さんは美味しそうにおはぎを食べていた。
俺が食べないと言った時の祖母の悲しげな顔が浮かんで胸がチクッと傷んだ。
「……俺、ばあちゃんに悪い事しました……」
「それに気付けたから良いんじゃねぇの?孝行した時にババアなしだぞ」
ちょっと口は悪いけど大野さんが言ってる言葉は凄く優しかった。そして、そんな大野さんを見る二宮さんの瞳はもっと優しかった。
「あの……二宮さん……」
「ねぇ、それ止めない?二宮さんってやつ。和でいいよ。」
「えっ!?和って……えっと……じゃあ……和さん……」
「ん~……まあ、それで良いや。」
二人の関係を聞きたかったんだけどいきなり和って呼べと言われ混乱した俺はそんか疑問などすっかり飛んでいた。
「智、もう休んでた方がいいよ。」
「ん……そうだな……」
大野さんは体調が悪いんだろうか。二人の会話を聞きながらよく見ると大野さんは色白と言うよりも顔色が悪かったんだ。
「あ……ごめんなさい、俺帰りますから……」
「雅紀くん、気を使わせちゃったみたいだね。ごめんね。また遊びにおいで。」
俺の気持ちを察したのか、和さんは申し訳なくなさそうにペコリと頭を下げて大野さんを支えながら奥の部屋に消えていった。
不思議な二人……でも何故だか居心地が良いこの空間を俺は気に入っていた。
この日から俺は毎日のように二人が住むこの家を訪れるようになっていた。