歩いているというよりは、今すぐにでも走り出しそうなオレの横を
花束を抱えたオッサンがさらに速い速度で駆け抜けていった。
オッサンのさらに前には、大きすぎたせいで花が紙袋からあふれ出ている学生風もいる。
名駅から試合会場のzepp nagoyaまでは普通なら歩いて10分ほどでつく。
けれど昨日ほど、その道のりが長く感じたことはなかった気がする。
チケットを持ってないけど、気付いたらノアの試合会場前にいたオレは
「いま、ATMから全額降ろしてきた。これで買える中で一番いい席をくれ」といった。
「ノアがやばい。プロレスがやばい」。そう感じたファンが詰め掛けたであろう昨日は
予想通りチケットは売れまくり、残されたチケットは4枚だけだった。
窓口の担当者はまるでトランプでもするように、4枚のチケットを差し出し
好きな1枚をとってくれ。と言った。
ご存知の方も多いと思うが、zepp nagoyaは入って正面にドリンクカウンターがあり、イベントホールへの
通用口となるトビラはさらにその先にある。
カウンターの女性スタッフは、普段のライブなどでは絶対に目にしないであろう献花台が目の前にあることに
少しだけとまどっていたように見えた。
献花台はたくさんの花で埋まっていた。昨日は、あの人の誕生日だったのだ。
オレは花束でなく、大好きだったと本を読んで知ったグレープフルーツサワーの缶を供えた。
ノアの試合はどれも素晴らしかった。
あたらしくGHCのベルトを巻いた潮崎選手も、小橋も、フリーの立場なのに
明らかに気合が入りまくっていた健介も、そして地元の大声援を受けた斉藤も良かった。
変なニュースばかり耳にして、オレはダンボみたいになっていた。
日曜日に泣いて、月曜日にも少しだけ涙した。
けど「あぁ、ノアって大丈夫じゃないか」と思った。
試合どころじゃないはずなのに、なんだ全然大丈夫じゃん、と感じた。
オレはビールを飲みながら、ベルトのかかったシングルマッチなみにやりあった
小橋と健介のチョップ合戦に見入った。
なんだか最近のオレは、屁理屈ばかりこねる陰気臭いファンだったような気がする。
この日のようにビール片手に、また見にくればいいんだ。
そう思った。
三沢さん、ノアのプロレス、楽しかったですよ。
