いまから10年以上も前のこと。
真夜中に放映されていたとあるテレビ番組では
見慣れないちっちゃなグローブをはめた外国人が
リング上で闘う様子を流していた。
見たことも聞いたこともない選手同士の
打撃によるチャンピオントーナメント。
オランダからやってきたという
ブランコ・シカティック選手が優勝を飾った。
K-1 第一回大会のことだ。
いち出版社という身分を越えて
「自分たちの仕切りで」東京ドームにプロレス団体を集めて興行を打つなど
絶頂期を迎えていた週刊プロレス。
当時の編集長は、K-1出現を見てこう言ったそうだ。
「大のオトコが問答無用で殴り、蹴りあう。関節技のような膠着シーンもない。
しかもルールもわかりやすい。ボクシングに比べKO率も高い。
これは実にテレビ向けのソフトだ。いつかK-1や格闘技は、プロレスを抜き去り
ゴールデン番組で放映されることだろう」。
格闘技界も冬の時代だそうだが、この予言は見事に的中したと言える。
「プロレス? 八百長でしょ。 それよりアタシはK-1なら観てるよ」
若い女性がこう堂々と発言しても、何ら不思議ではない時代になった。
タイガージェットシンやスタンハンセンに追いかけられて、体育館を逃げ回っていた
小学生男子の姿は、いまやないのだ。
日本に定着した格闘技。
そしてついに、オリンピック金メダリストの転出も公になった。
小川や吉田のように、現役セミリタイアの選手とは意味合いが違いすぎる。
そして、こうも思う。
まだ21歳の石井選手にとって、格闘技とは幼い頃から身近にあった選択肢だったんだろうと。
大人が思っている以上に。
格闘技イベントの先駆者であるK-1が、仮に今から15年前にはじまったとすると、彼が小学生1年の頃には、普通にそれは放映されていたのだ。
普通にひとつの番組として。
ボクシングよりも定期的に。
大晦日には紅白よりもエキサイティングなものとして。
廃業した相撲取りがプロレスにいっていたように
これからは、著名なアスリートが格闘技に転出していくことになると思う。
石井選手は、日本に格闘技の興行が根付いて以来、はじめての
金の卵のような気がする。
蒔いた種はこうして芽吹き、業界に恩返ししてくれるといったところか。
では、プロレスはどうだろう。
先細りしている相撲部屋の新弟子志願者のように
明るい未来ではない気がする。