娘とふたり、早朝福岡空港から、

わたしは、東京に向けて旅立った。

娘が一歳の頃、里帰りをして、

そのとき高校の友人達に会ったから、

久しぶりの東京である。

羽田空港に着くと、

わたしは、電車で移動した。

祖母の家はその頃は、

高輪ではなく、横浜の上大岡にあった。

老後は、そこで、

亡くなった義祖父と一緒に住んでいた。

羽田からモノレールで移動して、

浜松町から品川まで出て、

京浜急行に乗ったのだが、

(当時は羽田空港に京急乗り入れはまだない)

ちょうど朝の出勤ラッシュで、

電車は混雑していた。

座れないので、

娘を抱っこしながら立っていると、

満員電車で人が多いせいか、

急に娘が泣き出してしまった。

ギャー!!という、

まるで沈黙した電車空間を突き刺すような、

突然の娘の泣き声に、

まわりを見回すと、

出勤前のラッシュの中で、

まわりが冷たい視線を投げかける。

わたしはそのとき、

(あー、泣いちゃった!)

(こんなぎゅうぎゅうの電車に乗らなきゃ良かった…)

(上大岡なら羽田からもっと違う行き方あったかなぁ…)

と、娘にストレスがかかる、

この満員電車に乗ってしまったことを、

今更ながらに、後悔していた。

わたし自身も、

早朝福岡から出て来て、

娘を抱っこしてこの電車にずっと立っているのは、

さすがに疲れてしまった。

上大岡の駅に着くと、

兄がクルマで迎えに来ていた。

わたしは、ホッとして、

お兄ちゃん、久しぶり!

と、声を掛けた。

それからクルマに乗り込むと、

わたしたちは、祖母の家に到着した。

祖母の家に入ると、

祖母とわたしの父親と叔母夫婦(父親の妹)が、

いた。

Keiko 

つづく