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4,2017年10月、PGD経験者の話を聞く
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あっという間に令和の日々が過ぎていきます。
GWの夫の休みは3日間のみ。
なんとかネモフィラをねじ込み、ネモフィラに囲まれた頂上で土砂降りにあうという雨女ぷりを発揮してきました。
そして5月から一応時短勤務のまま、担当部署が代わり、あまり替えがきかない持ち場になりました。
そんなバタバタした日々の中ずっと、
長男から移された風邪をきっかけに平成から引きずっている副鼻腔炎、
というか、多分、後鼻漏からくる湿った咳が1ヶ月以上続いていて、じわじわ体力を消耗しグッタリしています。
さらに喉の激烈な痛みもここ数日で悪化( ˘•ω•˘ )
さすがに怖くなってやっと隙間を見つけて耳鼻科に行き、
RBの既往と放射線が鼻にも当たっていること、
遺伝子変異の特徴と、だから可能性は低くても鼻周りのガンが怖い、と長々問診票を書きました。
レントゲンと、その読影をしながら副鼻腔のガンだったらこうこう、という怖い説明もしてもらって、
でも今この写真だけでがガンだったら、副鼻腔炎の人みんなガンだわ、と、
めでたく?普通の副鼻腔炎との診断がおり(笑)、再びクラリスとお友達生活をしています。
ほとんどが杞憂だと思ってはいますが、
もしかして、という怖さはやはりあります。
そして妊娠以降、やはり体力と免疫力が落ちたままなう、なのは確かなので、
次子妊娠の前に一度体力作りしたい。
というわけで、またもや長めに振り返り。
●動き出した気持ち
2017年後半、1歳半になった長男の左目再発治療を続けながら仕事復帰=保育園通園開始。
その頃、自分や友人のPGD(現在はPGT-M)を承認してもらうため、患者会として活動するという方法を真剣に考え出しました。
大学病院の主治医によると、このままではRBのPGDはまず通らない。
医師や学会が動くには何より患者の声が必要、らしい。
20年後に叶っていたら、ではなく、PGDを希望している患者が今現在、複数いる。
海外では他の遺伝性疾患のPGDも進んでいる。
遠回りに思えても、きちんとした会を作り、患者の声を集め、同じくPGD適用を求める人たちと繋がり、医療者と意見を交わし、社会を動かしていくことが、実は近道なのでは、という考えでした。
そして、友人とやり取りするきっかけはPGDだったので、もちろん入り口は遺伝に関する話ではありましたが。
さらに言えば、結婚して家族ができ、子供を産んで、
自分が保護される側から保護する側になって、
産後の体調の変化や、加齢を感じることも増える中で
二次がんが怖くなってきたことも大きかったです。
子供が大きくなる頃にはガンで死んでたりするのかな。
「幼い子供を残して、かわいそうに」とか言われたくないんですけど。
と、強迫観念みたいな不安がうっすらつきまとっています。
それを友人も感じており、会を作ろうという気持ちを後押ししてくれたと思っています。
ある時、子供の入院が一緒になった、同じく親子間遺伝の経験者のお母さんが、
「もう、私ががんになるなら末期でわかってほしい。治療できなくていい。子供の治療だけで十分だわ」
と、ポツンと言ったことがありました。
普段、本当に明るくていつも私が元気づけられていたお母さんなので、
その言葉は衝撃だったけど、どこかで共感できる自分もいました。
子供のことなら頑張れるけど、自分のことなら諦めてしまうかも、という虚無感みたいな。
でも、それだめですからーー!!!(笑)
ガンになるにしても、早く発見して、スパッと治して、生きなくては。
まだまだやりたいことたくさんあるし。
ガイドラインに記載されている海外の論文によると、
両眼性RB患者の二次がん罹患率は60歳までに50パーセントだそうです。
はい、また確率確率(笑)
放射線を当てている私はよりリスクが高く、
ただ、照射部位から発生する骨肉腫や、成長期に多い骨肉腫や横紋筋肉腫は発症せずに過ぎているので、トータルのパーセンテージは下がったのか?とか、
欧米の論文ではメラノーマが多いという話だけど、日本ではメラノーマの発症例はない、じゃあ確率はどうなる?とか、
二次ガンについては疑問だらけ。
そもそも国内では参考となる統計すらありません。
これまで、肝臓がんや胃がんや大腸がん、膀胱がんに絨毛がん、卵巣がんなどに、RBの成人患者が罹患したという話を聞きましたが、
それは、その部位に発症した「肉腫」ではないのか?とか、症状は普通のがん患者と同じなのか?進行の速度はちがうのか?など疑問は多いです。
全てに医学的で確実な答えは出せないのも分かっているけど、
それなら、せめて、なりやすいガンやそれを早期発見するための対処法を知りたい。
世界的にも、スクリーニングや早期発見のガイドラインは存在せず、個人の神経質さに委ねられいるのが現状だとか。
話をどこに聞きに行けばいいのか、不安があるとき、誰に助言をもらえるのか、
様々な検査のたびに、「私はガンになりやすいんです!!」って自意識過剰感たっぷりに(笑)言わなくても通じる手段が欲しい。
正直、同じ検査でも、何もないでしょって目線と、何かあるかもって目線じゃ見方が変わるだろうし。
友人と、不安(てか愚痴w)を言い合う中で、そういった問題も、個人ではどうしようもないよね、という話になり、
ますます会の必要性を強く感じるようになりました。
誰かがいつかやってくれたら、と待っていても、こんな母数の少ない希少がん、「誰か」を何もせずに待つよりも、
いつやるの、今でしょ、と。
本当に自分たちでも思ってみなかった方向に、自然と進み出した気がしました。
そして。
患者会発足の前からずっと友人と話し続けていた長期フォローアップの話は、やっと今年、少しずつ方向性が見えてきました。
やっぱり、まだやりたいことはたくさんある。
二次がんにかかっている場合ではないのだ!
また形になったら報告できたらいいな。
●手探りの日々
成人患者を対象とした患者会を作ろう。
そんな壮大なこと言いながら、当時は本当に何から手をつけていいかわからず。
メールアドレスとかいる?
資金は持ち出し?
任意団体って何?
会員規約って何?
銀行口座って作れるの?
と、グーグル先生に質問をしながらラインで打ち合わを続ける毎日。
ソーシャルワーカーに相談したり、あちこちの患者会を作ってる人たちに話を聞いたり、先生たちに思いをぶつけてみたり。
結論から言って、私たちの気持ちが通じないこともたくさんありました。
例えば、
小児がん関係者が集まって、気持ちをを分かち合う、とか、みんなでキャンプをする、とか、
治療した病院で子供向けのボランティアやイベントをする、とか、
啓発のために募金やウォーキングでPRするといった活動は、
100人いれば100人が素晴らしいことと称賛してくれる活動にくらべて。
遺伝の問題、ましてやPGDの問題、
まだ道もないフォローアップの問題は、
賛否が分かれていたり、患者本人ほど危機感がなく、温度感も様々。
ふーん、そういう話もあるよね、と聞いてくれる人もいれば、
国(学会)が認めていないことには賛成できない、と言われたり。
一番辛かったのは、
出生前診断と着床前診断を混同したままの知識で、
遺伝してたら堕ろすんでしょ?と遠回しに言われたこと。
私は、妊娠前に遺伝子検査をして、夫と子供について話し合い、妊娠して喜び、出生前診断で遺伝がわかってどん底に落とされ、それでも迷うことなく長男を産みました。
その気持ちがあなたにわかりますか?
という言葉を、悔しさとともにぐっと飲み込んだこともありました。
無知であることは悪いことではないけれど、無知の知覚は必要だと思います。
知った上で否定するのは個人の自由だけど、それを基準に他人を判断してほしくないとも思います。
いくら、PGDだけやりたいのではない。
PGDを含め、遺伝についての知識や選択肢を正確に伝えて、患者が自分自身の人生を選べる権利を尊重する社会にしたい。
自分だけできればいいのではなく、将来他に同じ道を望む患者が出てきた時に、道を示せる社会にしたい、と伝えても、
子供がRBやなにかしらの疾患を持っている人にとっては、
PGD=命の選別=病の否定や排除=子供の存在の否定
と受け止められたり。
なにか、本来してはいけないこと、公に語るべきではないこと、褒められないことをしようと主張している、
と敬遠されたり。
そして、痛感したことは、
RB患者を子供に持つ親や家族は、
遺伝の基本知識についてあまりにも知らなさすぎること。
当たり前なんですけどね。
私も、結婚して子供を考える時まで、具体的な行動はなにもしなかったし、両親に何か伝えられたこともなく、自分でネットで得た情報でした。
小児がんなんてテレビの話だと思ってた、
と、よくお子さんが罹患した親御さんがいいますが、
いきなり子供がガンと宣告され、治療だ、義眼だ視力だ、となれば、
将来の遺伝なんて先の話より、目の前の心配事の方が優先されるに決まってます。
私も、分かっていたと言いながら、長男の治療を始めて感じた治療のあれこれは、やはり事前に見聞きしていた文献やネットの知識とは違った。
知ってることと経験することはまた別の話なんだなーと思います。
反対に言えば、
やはり患者の親は、「子供が小児がんを発症した親」という当事者であり、
「患者」ではないということ。
親の、守ってあげる、あなたの目の代わりになってあげるという愛情や決意と、それによる行動は絶対に子供の助けになると思いますが、
大きくなれば多かれ少なかれ子供は自立を余儀なくされ、
その後の選択は患者本人にしかできません。
だからやはり、遺伝を含めた疾患に関する正しい知識は、患者である子供が大きくなれば必要な知識です。
今は知らなくても、必要な時に「ここに相談すれば、情報を得られる」という情報を親が持っておくのは重要だと思います。
情報リテラシーは、発信側だけでなく、情報の受け手側にこそ求められるもの。
本当に難しい。
小児の疾患は治療方針の決断で一番親が苦しみ、
その後の長い人生で、その決断がもたらしたものを子供が抱えて行かなくてはならない。
親は、支えることはできてま、子供の人生を一生背負えるわけではない。
親の手を離れたその先、を、同じ患者の立場で支える一助になれたらと思っています。
そして、それ活動が将来長男を助ける何かに繋がることを願います。
てなわけで、
とりあえず作ってみよう!
と、ほぼそんな感じで、外枠だけ雰囲気で作り上げて、
2018年3月に、
RBピアサポートの会を立ち上げました。