貴方と云う人の

「弱さ」



先週

貴方の父親代わりのひと
Jさんが 此の家にやって来ました



Jさんは

花屋さんを 一緒に連れて来る事を 
貴方に約束をして居て

でも




彼女は  と
貴方が聞くと
Jさんは



あいつは京都に行きたいんだってさ  と



花屋さん  と云う人は
こうやって 外国に行く時は

何時も
何処かのお国の 警察官を伴って



今回は
TさんとU女史が
その役を 買ってくれて

特に別段
変わった様子は無いですよ  と

東京も暑いけれど 京都のは何だか違いますね  と



U女史は
何時もと変わる事無く 報告の電話を入れてくれました



木曜日
Jさんと 大使に会いに
貴方とわたしは大使館へ

其処で
新しい局面に入っている
貴方の前の 赴任先の状況と
今後の予定の説明を聞きました



だけど
Jさんは ずっと

物憂げに 下を向いて

時折
指に持ったペンを くるくると回していました



夕食後
わたしたちはJさんに
食後のお酒に誘われて

貴女は来た事が無かったね   と

Jさんが泊まっている ホテルのラウンジへ



わたしたちは
何も言われずに

奥の個室へ 通されて



日本だと
大体は此処なんです   と



其処は
彼らの

「内緒話をする為の部屋」



此処なら
居場所が明らかだから
逆にMちゃん達に 入って来られなくて済む  と

貴方は
困ったように 笑いました



彼女も一緒でいいのかい  と
Jさんは 言ったけれど
貴方は



構わない
もう 話はしてある   





其の時に
話題に上ったのは

去年
一度戻って来た時に聞いた



「3つめのお仕事」の 話



貴方は時折
わたしに知らない事が有ると

事情を
挿み挿み
説明してくれて



思ったよりも
ひとつめの仕事の期間が長引いている事

ふたつめは 依然流動的
そして

みっつめに入る前に
余計な場所に 行かなくてはいけなくなった

そう




貴方と云う人の「仕事」は 

未だ 終わりが見えてはいないのです




「彼」は
如何しているの




相変わらず元気さ
まあ
こうなったのなら寧ろ仕方無い

一度逃した期は
直ぐには立て直せんよ  と



3つめのお仕事とは

Jさんと 花屋さんの利害が
珍しく  一致した
共同で



極秘の ミッション



わたしは
何も言わずに




此れが終わったら
本当に

貴方と云う人は 解放されるのだろうかと



其の事ばかりを
考えていました



あいつは
来週だな

まあ
此処に来たら 連絡する



ひろのんちゃん

「済まないね」






いえ





わたしは
其れだけしか

言えなくて




金曜日

痛い腰を 何とかお薬で黙らせて
木曜日の通達に対する
場の対応を見乍ら

下半期の計画を K君と立てて



貴方は
其の様子を

暫く何も言わずに 眺めて居たけれど
突然



貴女は
如何して



止めてはくれないの   と




昨日
如何して

僕が彼処へ貴女を伴ったと思う  と



貴女は
秋に成ったら

また大変な治療が有るのに
如何して
こんな時にこそ



ひとりにしないでくれと 貴女は僕に言わないの

今 僕は
貴女の夫なのだから

僕にとっての「最優先」は




妻の貴女の「我儘」なのに








でも
わたしは

其の貴方の言葉の
熱の無さに 気が付いていました



貴方は
わたしの我儘を自分の理由にしたいのでしょ

やりたくないのなら
初めから そう云えばいいのに



わたしの
大切な「願い」を




貴方の弱さの 言い訳にはしないで




そう言ったら

貴方は
何かを言いかけたけれど



そう


言って




其の侭
家を出て行きました




……

あーあ、、、言っちゃった、、、、、、、、



直ぐに
後悔をしたけれど
でも



怒らせた事や
言い方を
後悔をしただけ

わたしは
間違ってはいない   と



何度も
何度も

自分に 言い聞かせたけれど



何時間か
電話もメールも無いと

やっぱり 気に掛かる




悔しい …………………




何時かみたいに
怒鳴ってくれた方が

幾らか
気がましだ



如何して

確かに貴方も 間違っては居ない
だけど



だけど



そうこう
悶々として居るうち

どの位
時間が経ったのか



Mちゃんが
恐る恐る 部屋を伺って

喧嘩でもしたんですか  と
気に掛けてくれたけれど



ひろのんさん
何 どーしたの

アイツ
Kをアル中にするから(←…)
此処で飲みすぎんなって言ったら
飲み直して来るって 出て行っちまった  と

呆れた少年から
電話を貰って



うん
まあいいの

ちょっとだけ
やり合っちゃって  と言ったら
少年は 大笑いをして



今日の
アイツの顔
超見せたかった

いいじゃん
もっとやり込めて
ちょっとは鼻 へし折っといてよ  と



大丈夫
アイツは



ちゃんとあなたの所に帰るよ   と






そうなのかな
もし

あのひとが 此処に居たなら



貴方の
弱さを知る



あなたは今 此処に居るのに




そんな事を
うじうじと

食事も喉を通らずに
週末のひとり打ち上げをする Mちゃんにそっくり差し入れて




やっぱり
後悔じゃんか  と

ひとり お布団で
あの瞬間



貴方は何処で





何を 憶ったのだろうか





土曜日の朝
ふと 目が覚めたら



黒い毛玉が
ベッドの下で





入って来たらいいのに  と
思わず言ったら

いえ




手を取られて
其の手で

自分の頬を 何度も撫でて



あの
済みませんでした  と



僕の負け








お布団に
頭だけを乗せて

困ったような顔をしているので
つい
可笑しくなって



うん
喧嘩は両成敗なのだから  と
此方こそごめんね

弱さの表現も 課題だったもんね  と

笑い乍ら言ったら



貴方は
増々眉が下がって



ほとほと

困ったような顔をして




いえ

「図星でした」   と



そう
言って

わたしの手で
自分の頬を



ぺちぺちと 打ったのでした




そして
今日

U女史から



今日
彼女と一緒に東京へ戻りますと

ひろのんさんに
お土産を 選んで居られました  と

そう



連絡が 入りました