理性は
剥がれ落ち

でも 再び拾い集められる



欠片たち



土曜日の晩
帰って来た 貴方は

やっぱり
日曜日は 苦悶し続けた



帰国してからは 精神の疲れだったらしく

身体は疲れていないので
バランスが取れない  と



仕方が無い
帰国してからの 二週間は



このひとにとっては
監禁生活 だった



膝の上で
唸って

冷汗で目覚め

水を浴び



でも

お願いだから
離れないでくれ

傍に居てくれ   と



懇願され




腰が前より細い

ちゃんと 食べてる ?



そう
心配事を言う割には

食事を取りに行こうとしても
引き留める



昨日は
買い置きしてあった
バナナと林檎

ペットボトルのお水
ブドウ糖の お菓子

唯其れだけで 丸一日を過ごした



わたしが
寝間着を着ると

引き摺り落すように
直ぐに 剥がす



風邪をひくよ
貴方も 着よう

そう言って
身体に触れると



熱い風が ひゅうっと吹いて

不思議と 暖かくて



腰に
しがみ付いて

なかなか 離してくれないので



抱き枕  と言ってみたら
そう   と



怖いの  と言ってみたら



そう   






背中に
爪を 立てられて

きっと 赤くなった



腕を掴まれて
痛みを訴えると

途端に
狼狽えて

ゆっくりと 離して

撫でて
また掴み

次第に 力が籠る



そんな事を 何度も

何度も繰り返し



やっと眠って
目が覚めると

今度は
馬乗りに覆い被さられて
身動きが 取れない



いろんな所に
指が入って来て

好き勝手に
わたしの身体を 弄んで

髪を掴んで
頭を何度も叩き付け
やがて



首に手を這わせ





締め上げる





落とされると
思う程に
其れは 苦しいから

いっそ息を止め
思い切り 咳き込んだ振りをすると



我に帰るのか
驚いて
目が泳ぎ

So sorry. と
囈言のように 繰り返し



抱き寄せて
そろそろと 撫でて

目を閉じて





眠った





このひとの
仕事明けの
此の行為は

今迄ひとりの時は
どんな風に 消化されてきたのかと
理解に苦しむ程に



ひとりの中の
様々な 「自身」が

何度も
去来する



でも
どれも

紛れも無く




貴方 自身なのだ





昨日は
一日 ベッドに引き留められて
わたしも疲れて仕舞い

夜 メールを見に起きる振りをして
傍で 見守って



お布団に
頭を埋めるようにして眠る
この人を見乍ら



わたしは不思議と
身体だけは ずうっと暖かくて

噫やっぱり
貴方だな  って

寝顔が可愛らしいな  って



あちこち
奔放にされて 確かに痛かったけれど





そんなもの さえ





わたしは結局 
なかなか寝付けずに

随分 遅くなって仕舞って
起きたらもう すっかり夕方の雰囲気で

気が付くと
隣で



物凄く
場都の悪そうな顔をした貴方が

わたしを 見下ろしていて





大丈夫?  と思わず聞いたら



あの
本当にご免 と



昨日のは忘れて   と




何か作る
貴女は食べないと  と
台所に立って

トーストと
卵を 焼いてくれて

珈琲豆を 切らしていて
牛乳を 暖めて
緑茶を飲んで



その間も
ずうっと 何か

困惑を しているように見えたので



うん
痛かった

優しくしてね
壊れちゃうから  と



少し 苛めてみたら



うん
大丈夫



「ごめんなさい」

そう言って




頭を 下げた




わたしは
この人が頭を下げるのを 見た事が無くて

驚いたと同時に
妙に 可笑しくなって

お辞儀をする外人ってヘン  と  思わず笑って仕舞って

そうですかね  と
悪かったので  と
貴方は少し 拗ねた



でも
其の時
思わず



「おかえりなさい」



口から零れた




すると
貴方は 

微笑って




「ただいま」




そう 



言った