貴方に
触れる時



腰に腕を回す方が気持ちいいと
気付いたのは何時からだろうか



貴方は何時も
わたしの頭を撫でてから

少しずつ下がってくるけれど



わたしは
目を合わせるのが 恥ずかしいのか何なのか
つい



腰に 手が伸びて仕舞う



無駄の無い
男性の腰は

とても官能的だ



服を着ていると 余り気付かないけれど
この人の胴回りはがっしりしていて

掴んでも
掴み切れない

その感じが 好きだ



ゆっくり
背中を撫でて

骨格を確かめるのが謂い



ぴったりくっつかないと
ちゃんと触れられない感じが謂い



ふざけて触ると くすぐったいらしいけれど

ちゃんと その気の時は 
ちゃんと 伝わるらしい



簡単な テレパシー
此れ位なら



弟子にだって 簡単



夢に出てくる貴方は
後ろから

するっと 触れていくけれど
わたしには



触れる事は 出来ないのが虚しい



姿は見えないのに
何時も
消える間際



貴方の手が ぎゅっと拳に成るのが見える
ひょっとしたら



此の瞬間は「確かめて」いるのだろうか

そんな気が する



わたしは幻影ではなくて
体温の在る 貴方の腰が好き



その腰や お腹に
力が籠る 瞬間が好き



膝を付いて
足の裏の 筋が延びて

強い力の指先に
掴み取られそうな程



深く

もっと突き上げて欲しい



筋肉の束が
柔らかく撓るのを

首に入った力で
その筋が 浮き上がるのを



脇の肉の窪みや

緊張感に満ちた 鎖骨や



湿った息を吐く 鋭角に延びた顎の先迄





もっともっと 「見て」いたい





子供の頃
長い間

男の子になりたい 本気でそう思っていた
だけど



もし男だったら
こんなにも美しい躯を

こんなにも近くで 見ることはきっと無かったのだ



男性は 女の躯を見て
目で官能を感じると云うが

女でも



目から感じる 官能が在るのだと

わたしは貴方から




教わったのだ




彫刻家でもなく
写真家でもなく

小説家でもなく



普通の 唯の女として



貴方と云う人の
躯を



感じられる事の 歓び



表現する 語彙を必要としない分
その歓びを



全部 わたしの中に注ぎ込んで
喉を 潤すように



全部
残らず 

飲み干して 謂いのだと





貴方が もし
必要なのなら



夢に出て来て
触れて

時折 感触を思い出せば謂い



でも
わたしは駄目なの



ちゃんと
其処に 体温が無いと



ちゃんと其処に



貴方が 居ないと