昨夜
貴方と 喧嘩をしました

…喧嘩 と言っても
わたしが一方的に 怒られた…だけなのですが



でも
複雑だけれど 今は少し嬉しくも感じました



昨夜
貴方はやっぱりあの時間 「花屋さん」と連絡を取っていました
来週 渡航する事に成ったのですが
その最終の打ち合わせと
彼女の 近況について

話をした らしいです



部屋から出て来たこの人を わたし どんな顔で見て仕舞ったんだろう

何か言いたげですね  と
一言 声を掛けられて



わたし
きっと

嫉妬しているんだ
あのひとに



勿論 そんな事は言えなかったけれど
相当しどろもどろに 花屋さんの事を聞いたのだと思う
如何しておられたの とか

どんな風に 会うの とか



別にそんな関係じゃないって 前にも言ったでしょう と
貴方は少し 溜息を付いて
手を 取ろうとしてくれたけれど

何故だろう
わたし

びくっと躯が硬くなって 拒んで仕舞ったのです



貴方を



この人は そんなわたしに 少し驚いて
少し黙った後

急に 手を伸ばして
わたしの左肩を掴んで



余りの手の強さに
わたしは思わず 痛みに顔を顰めたら
貴方は言った

如何して  と



やめて としか 言えないわたしに
言いたい事があるならはっきり言え  と
掠れた声で 怒鳴られて



貴女が彼女と僕の間を疑うんなら
僕も貴女と「S」の間を疑う  と





正直 この言葉には本当に驚いて
わたしは 何も言えなくなって

だって K君にはSちゃんが と迄言うのがやっとで



貴女は知らないんだ
この間 貴女が眠っている間
あいつが僕に 何を言ったのか

貴女は憶えておいた方がいい あいつは「本気だ」 
そんなあいつと貴女が一緒に居るのを 僕が何とも思って居ないと

貴女は本当に

そう思って居るの  と



其処迄貴方は 一気に言って
わたしは肩を掴まれた侭 ソファに強く押し倒されて

暫く茫然と 貴方の顔を見る事しか 

出来なかった



今朝
少し遅い朝を 一緒に迎えて

わたしは貴方に 昨夜はごめん と謝られて
あのね  と

花屋さんという女性の 人となりを
初めて貴方の口から 聞きました
そして



彼女の「名前」 を



彼女の強さとは
臆病さの裏返しである事
彼女は本当は とても神経質なひとで

何か有る度に 人とは怖いものなのだと 何時も何時も話をしていたこと

「貴方」と一緒に居ると
余計な言葉が要らないから 楽ね と 笑って居たと

つい何年か前迄
この二人は「男と女」の関係で
でも其処に 恋と云う感情は無くて

有る時貴方の方から そんな関係を断ったのだと
その時に 
彼女は


大丈夫
あなたと私の間は 「悪くはならない」 と

出来るのなら
私をこれからも助けてくれたら 私は嬉しいんだけど  と



そう
わたしの前から この人が居なくなった時
貴方は 他に行く所が無かったのです
彼女が何をして居るかは 貴方はこの時も解ってはいたけれど
自分が行けば 何をしなくてはいけないのかも 解ってはいたけれど



唯 彷徨うには

今は 「辛過ぎるから」



わたしは 本当に驚いて

何だか 本当に驚いて



K君が 何を貴方に言ったのか
その事は 教えてはくれなかった
それは 「ルール違反」だから  と

貴女にそれを言った所で あいつはきっと喜ばないよ  と



もう一度言います
僕は 「光の有る貴女の方を選んだ」

其処に 迷いや後悔は
神に誓う
何も もう無い





彼女が貴女と話したがっているんだ
今夜 いいかな と
その後ぽつりと言われました

如何してだろうね 彼女が他人に興味を持つってことは 余り無いんだけど と



そうやって
遠くの雨雲を見ている貴方は

やっぱり「花屋さん」に 何処か似ている気がする

少年よりも長い時間を 濃密な関係で過ごしたからなのだろうか
彼女が 貴方に似たのだろうか
それとも貴方が

彼女に 似たのだろうか



K君とはわたし 何にもないよ と言ったら
知ってます と

でも内緒にしている事は有るの と言ったら
それも知ってます と
 
笑って



夕方 一瞬雨が降って
その時に

暫くしていなかった キスをした
この人は



嘘は 吐かない



もう少ししたら 電話が繋がるそうです
何だか 改まると緊張するなあ

でも
謝らないといけない事が いっぱいある
そして
聞いてみたい事も
話してみたい事も



そうしたら 何か解るだろうか
貴女と云う 

嫉妬する程に 焦がれた



ひとりの女性の 物語が