さて改めて(気合 ←やっぱり体育会系…)



昨日のことをまただらだらっと書きそうだったのですが
やたらめったら長くなる (いつもか 笑) なので
「貴方」が取ってくれていたわたしの昨日のモレスキンの記録を
ちょっと一部訳してみました



まとめるとこんな感じです



診断
明細胞腺癌 1c(以上) 陽性
腹水8780ml 腫瘍1470g

卵巣の一部に破損の跡が診られる
表層一部悪性腫瘍化
全摘出をしていないのでステージ断定は不可能
腹水の一部から癌細胞が認められる
転移の可能性は有るが金曜の血液検査での腫瘍マーカーの数値/観察程度

治療法
明細胞腺癌は「抗癌剤」が効きにくい
関係臓器の摘出を求めるが病理の進行は「緩やかな」部類と判断
(ここは「貴方」の見解だと思います)
摘出の場合 左卵巣と卵管 子宮と大網 腰のリンパ節
予後を鑑みるに摘出を薦める が

「彼女」は妊孕性を温存する為 摘出を拒否

治療法として化学療法を今後検討
セカンドオピニオンの受診も可能
21日「彼女」の意思の再確認/回診時

一旦退院の許可 若しくは入院の続行



…わたしの手帳だから だろうか
随分「貴方」は 「端折っている」気がします
Y先生が言われた通り この人は昨日 わたしたちの全く知らない単語を幾つか話して居ました
確かに例のCancerCellsは出てきましたが

この「明細胞腺癌」と云う言葉は 初め先生の口からは出なかったものです
ClearCellAdenocarcinoma と云う単語は 他ならぬ「貴方」が言った言葉で
Y先生も此れには驚かれて まあ腫瘍の所見から と言葉を少し濁されたくらい 
両親もYさんも そんな貴方に唯 驚いていて(…そりゃあ そうだろう…汗)



でも
わたしのここ暫くの「日常」は この人が一番よく見ていた訳で
わたしは昨日 両親とYさんに



やっぱり わたしは
この人の「子供」が 如何しても欲しいんです と



先生の説明を 一通り受けた時 
自分の意思を改めて 伝えました



病室に戻った後
母は 傍目にも動転していて わたしにこう言いました

先ずは生きてこそ でしょう と
転移が見つかってからでは遅いのよ 数値が低くてもあなたには腰の血塊も有るし
先生が摘出を勧めるのに何故 あなたはそんな無茶を「今更」言うの



子供なんて絶対にいらない と言ったのは あなたでしょう と



そう

わたしは確かにこう言いました
わたしが今の 少年の年の頃

これは母しか知らない事だったのだけれど 
昨夜母は「貴方には」もしかすると言ったのかも識れません



今日夕方 
Y先生が来られて わたしはもうベッドに腰掛けていて(寝てると躯が…い 痛い…)
わたしが将棋の駒を並べているのを見ると お いいですね と
其の侭暫く二人で指しました(先生…お お仕事は…)

聞けば先生は ちゃんと連盟からアマチュアの免状を貰っている方らしく(おおおおお)
わたしが並べた局面から その続きをやって
でも わたしはこの時 少し「ひらめき」が有って
結局 持ち駒の多い先手側を先生にお渡したのだけれど 勝っちゃいました 笑



もう一度その局面を並べ乍ら
この局面は わたしの方が圧倒的に「不利」な筈だった
守る物も無いし 玉は不安定だし



でも 「こういうこともある」と思うんです と ぽつっと言ってみたら



○○さんの「ご主人」は お若いのにとても頼もしい方だ
是非一緒に仕事をしてみたいね なんて 先生は笑って

本当はこのステージではね 摘出を勧めるんです僕としては と
でも確かにこの「角」は

活路ってやつですかねえ うん 



○○さん あなたとご主人と「一緒に」頑張って みますか と



あなたの治療が上手くいったら 僕は学会にちゃんと発表しちゃいます 
なんて笑ってらして
野望ですか なんて ちょっと可笑しくなって言ってみたら
いやあ医者なんて言ったってねえ あなたもお勤めはされていたんでしょう
何も変わりませんよ 一緒ですよ と



何だか
この先生なら 信頼出来る気がする

降って来たように そう思って



そう言って下さるんなら セカンドオピニオンは別にいいです
面倒だし しんどいし お金高いし と言ったら 先生は大笑いして

是非そうして頂けると嬉しいな 折角特別室まで使ったのに 高いって と

先生 
わたしが終わる迄 出世とか異動とかしないで下さいね とお願いしてみたら
先生は じゃあ僕を「出世させて下さいね」 と

肩をぽんと叩いて 静かに笑って下さいました



整形外科の先生も 丁度Y先生が出て行く時に来て下さって
おお将棋ですか と(案外ここ将棋好き多い! 嬉)
ええY先生 負けちゃったんですか と
Y先生は おかしいんだよ ○○さん強いですよー なんて笑って仰って
暫くY先生迄一緒に わたしの肩の傷の様子を見ておられました
(だから先生…お仕事は… 笑)



この病院に来てから 「貴方」が手配してくれたお陰で
手術後毎日わたしは ちゃんとリハビリとマッサージを受ける事ができて

この傷すら ちゃんとここ迄善くなったのだもの
左指の先の先迄 ちゃんと「感じて」「動く」のだもの



わたしの躯は まだ「活路」がある



そう思いました



貴方が此処に来たのは 最後の夕食を頂いた後
ちょっと面会時間 延ばしてもらってきた と一言言って
結局今日も 仕事には行かなかったのだと
少しホテルで仕事したし 
明日の指示も もうしてきたから貴女は気にしなくて謂い と

折角Yも来てくれたしね 
Yが居てくれると何かと「言い訳」し易くて謂い と笑って

(Yさんは「あの方」にも面識のある この世界ではちょっとした有名人なのです)



あとね と

例の「携帯電話のような物」を取り出して 今繋がってる と
わたしに手渡してくれました



開口一発 よ 人妻 と少年は言って 笑

昨日の診察の時は悪いけど今回も聞かせて貰った 
ひろのんさん「本気」なの と

だって「人妻」だもん と言ったら
少年は笑って



アイツが何度も言うんだ 「大丈夫」だって
オレ今回ばっかは信じようと思う と
調子良かったらアイツと一緒に来てよ 

オレひろのんさんに「話したい事すげえある」 と



わたしは 何故だか其の言葉が とても とても嬉しくて



うん 

わたしも話したい事いっぱい いっぱいあるよ と
これまた何故か 涙が馬鹿みたいにいっぱい出て来た



落ち着いたら一度おいでよ と少年は言って
オレはここで 「何時でも待ってるから」 と

其の時彼も 声を詰まらせた気がしたのは わたしの気のせいだろうか



ああそうだ ヤツの事は気にしなくて謂いから と何故か少年はK君の事を言って
何かSにすげー事させてるみたい オレコドモだからコワくて覗けねえ と笑って
(…K君…い 一体 な 何を… 汗)

オレもやっと一昨日あたりからかな すげえ寝てるよ 
大丈夫だよ

やっぱちょっと どこか「安心」したのかもしれない 







電話を切って 貴方に手渡すと
貴方は何時ものように電池を抜いて



ご両親 やはり物凄く心配しておられましたよ と静かに言って
僕も正直 貴女がああ言ってくれなかったら 挫けそうでした と

貴女はお母様に何か「言った」んだね 
確かに貴女の家には「滲み」が少し 「見える」 と



わたしが何も言えないでいると 
貴方はわたしの頭を ぽんと叩いて
今は謂いんです こう云う事は「誰にでもある」 と



でもアレだね 今回ばかりは「身に染みましたよ」 とこの人は笑って

僕の「予感」は案外当るものなんだな 
彼は相当気味悪がっているみたいだけれど
自分の「イメージ」なんて そんな物僕は何時も鼻っから信じていない と

えええええ そ そうなの???? と 
わたしは何だか狐に摘まれたような気分に成って
貴方はそんなわたしに大笑いをして



いや 
だから今回こそは「信じてみよう」と思うんですよ 
この間も言ったけど 何をどう考えても「貴女のイメージは悪くはならない」
あの時と何も変わらない 

貴女は絶対に 大丈夫なんです

「こんな僕」でも他でもない 貴女の役に立てるのだったら
僕はこの「血」に 今回ばかりは寧ろ感謝します と

そして



貴女だって 
僕が「こう言ったから」「意思を持った」訳では無いでしょう



と 静かに言った



おいで


と 貴方は自分が座ったソファにわたしを呼んで 
腰を取ってくれて 
自分の脚の上にわたしをゆっくり座らせて

其の侭わたしを ストールごと強く抱き寄せて
頭を胸に寄せて 頬と額を強く擦り付けた



吐息が生地を伝って わたしの胸元に絡みついて

その熱さに
手に篭った力に

わたしは
躯の奥に 滲み出るような痺れを感じて 思わず
声を 零して仕舞った



僕は

貴女に「受け入れて」貰った
こんなにも

此れからは どんなにか叫んでも 
貴女の事が こんなにも好きだと
どんなにも 愛しても 

謂い と



それが

どれほどの 「歓び」か







痺れの中で 聞いた
貴方の 掠れた声の その言葉は

貴方の其の髪と声と 息と一緒に
ゆっくりと わたしの中に 融けこんで



思わず 頬に手が伸びて 頬を撫でた後
わたしの好きな その首筋に
その髪の中に 指を准り入れて

貴方の唇を 唇で 強請ってみた



貴方は初め 少し驚いた目をしたけれど
その後 ふと微笑って



わたしに唇を ゆっくりと委ねてくれました
濡れて 熱く



熱く





明日 退院します
静かな夜景も 今日で 「取り敢えず」

見納め です



わたしの愛する ひとたちに
どうか いい夢と 休息を






おやすみなさい