以前働いていた職場でこんなエピソードがありました。
児童発達支援の事業所で、幼稚園児のお帰りの時間が迫ってきました。
職員のAさんが、子どもたちを一人ずつトイレに促しました。
Bくんがトイレから出たので、次はケンちゃん(仮名)に声をかけます。
「ケンちゃん、トイレ空いたよ」
「は~い」
普段からあまのじゃくというか、職員の言うことを聞かないケンちゃん、
返事はするけど、いつまでも走り回っています。
Aさんはちょっと怒り口調になって言いました。
「ケンちゃん。トイレ空いたよ!ちょっと、聞いてる?」
「は~い」
それでもパタパタと走り回るケンちゃん。
傍で見ていた私もつい口を出してしまいました。
「ほら、ケンちゃん、トイレ行っといで」
「は~い」
ケンちゃんは、一目散にトイレに入って行きました。
え?
私が声かけしたら随分素直にトイレに行きました。
そこで違和感を感じて、しばらく考えてみました。
そして、気づいたのです。Aさんと私の声掛けの違いに。
Aさんが言ったのは「トイレ空いたよ」という、状況説明。
私が言ったのは「トイレ行っといで」という指示。
ケンちゃんは、言葉通りに従ったのです。
定型発達のお子さんであれば、
「トイレ空いたよ。(だから次はあなたがトイレに入る番だよ)」
と、理解するのでしょうか、
自閉症スペクトラムのお子さんはカッコの所は言わなければわからないのです。
状況説明に対しては「は~い」という他ありません。
たとえば、ヤカンでお湯をわかしているところに
「ピンポーン」と、お客さんが来たので
「ヤカン見ててね!」
なんて言い残してその場を離れると、
自閉症スペクトラムの子は、見てます。
ずっと、見てまず。
沸騰してヤカンの蓋がガタガタするのも、じっと見てます。
そしてお母さんが戻ってきて
「あらあら、見てたんなら止めてよ~」
と言われると、
「止めて欲しいならそうやって言えばいいのに!」
と、思うわけです。
して欲しいことをちゃんと伝えたら、
自閉症スペクトラムの人はちゃんと動いてくれるのです。
納得すれば。