結局、私は空港からタクシーをひろい、この地に足を運んだ。
空港からタクシーに乗り、タクシーの運転手が「ここがカオサンだ」と指差したときのことは忘れることは出来ない。私が想像していたほどの広さはなく、だが、そこの一角だけが、現地時間で深夜1時過ぎと言うのにも関わらず、きらびやかに輝いていたからだ。
私はとりあえず、カオサン近辺の宿におろしてもらい、なんとかチェックインを済ませると、興奮冷めやまぬまま、カオサン通り(カオサンロード)に向かうことにした。
私が泊まった安宿(ゲストハウス)はカオサンからは程よく離れており、その喧噪をききとることができなかったが、カオサン近辺に入ると、騒々しい音楽と、人々の笑い声がきこえてきた。
ドキドキした。
「ああ、旅が始まったんだな」と、これから待ち受ける何かに胸を膨らませる想いと、「本当にこの先、私一人でやっていけるのだろうか」という大きな不安、それらが複雑に入り交じり、私の感情を右へ左へと大きく揺さぶった。
カオサン通り(カオサンロード)に入るなり、人々がどっと押し寄せ、まるでここで毎晩お祭りが行われているかのような錯覚に陥った。人々は酒を片手に通りを行き交い、ぎゅうぎゅう詰めになりながらも、みな笑顔で、飲み食いして叫んでいる。
通り沿いにはストリートミュージシャンもおり、その音楽を店の軒先に並んだテーブルに座り遠目で眺めている人たちもいる。大道芸人も、そこかしこでパフォーマンスをしており、みなそれぞれ笑い転げたり、真剣にその芸を見つめる仕草をしている。
立ち並ぶ露店では、食用の虫がこんがりと揚げられ売られていたり、ビタミンをふんだんに含んだ新鮮な果物が並べられていたり、みたこともないような食べ物がずらりと並んでいた。
建物の看板に装飾されたネオンは、きらびやかに輝き、まるでその光に誘われるかのように多くの人々が押し寄せていた。
「・・・自由だ」
私とカオサンとの出逢いは「自由」という言葉ではじまった。
・・・
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