おひとりさまでいることが罪である世の中…
妻や夫と別れたり死別した場合、45日以内に新しい相手を見つけなければ、罰として動物に変えられ森に放たれるという。
なんともシュールで奇妙なお話。こんな設定はコメディそのものだというのに、全編うす暗くゆっくりで淡々としていて音楽も静か。もっと軽いノリかと思っていたけど意外にもしっかり映画だった。生きていく上で、決して逃れることのできない「人との関係」について、つい考えさせられてしまうような…。
身柄を確保されたおひとりさま達はホテルに送り込まれ、そこで新しい相手を見つけるようにと、婚活合宿さながらの生活をしなければならない。ひとりでいることは罪…よって、合宿生活が楽しいものかというとそうではない。
更には、みんなが、新しい出逢いに胸をときめかせているのかというと、そういうことでもない。
森の奥には、ホテルから脱走した人たちや、独身を貫こうという主義の反逆者たちがひそんでいるのも事実だ。
ただ、人間という生き物はおもしろいもので、限られた状況の中でも譲歩なり妥協なり、ときには嘘をもつきながら自分にとって都合の良い相手を見つけようとする。そしてその人を愛しているような錯覚に陥り、その愛を信じようとする。
デヴィッドも、妻に捨てられこのホテルに送り込まれたひとりだけど…不条理で狂気じみた生活から、ある日、森へ逃げることを決める。
愛する人を見つけなければいけない世界から、誰も愛してはいけない世界へ…。
皮肉にもデヴィッドは、この森でのルールに反して運命の人に出逢ってしまう。
もし本当に「独身でいること」が罪だったとしたら、世の中はなにか良い方向に変わっていくだろうか…結婚することが当たり前とは言えない今の時代、正直それは分からない。
「結婚=愛」の公式が成立せず、コミュニケーションや思いやりが欠如していても夫婦でありさえすれば人として生き延びていけるというのなら、それもまた理不尽な話である。
それか…いっそのこと、なんの動物になるか考えておこうか(笑)
つくづく恋愛観、人間観の問われる映画である…
そして、夫婦であれ恋人であれ友人であれ、人間関係というのは、いつ何時でも悩みの種であり、永遠に解決することのない問題なのだと痛感した。
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