【恋人たち】 | あっちこっち…より道したっていいじゃない

あっちこっち…より道したっていいじゃない

ミーハー万歳★
あれもこれも大好きってスバラシイ・・・




なんとなく、この映画は佐賀のシエマで観なきゃ、って思ってた。
なんとなく、大切にしなきゃいけない作品のような気がしたから。


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橋口亮輔さんの映画は、それとは知らずにこれまでも何作か観ていたみたい。「渚のシンドバッド」もそうだったのにはびっくり。1995年の作品で、あの浜崎あゆみが出ていたのだけれども、演技も上手で清楚な感じで、とても良い女優さんだな、と思った・・・まさか、あんなに派手でギャルな歌手になるとは思わなかったなあ(笑)

前作「ぐるりのこと」からは7年。なにかと話題になった新作「恋人たち」

理不尽なことばかりと思うかもしれないけれど、どうでもいいような日常のなかにだって、ささやかな笑いや幸せと希望が隠れているはず。どん底からだって、きっといつかは這い上がってこれるんだよ、というメッセージが、交差する3人の物語から伝わってくる。


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最愛の妻を通り魔に殺され、犯人を極刑にすることだけを生きがいにしているアツシ。
夫との仲はとうに冷めて、悶々とした毎日を送る主婦の瞳子。
想いを寄せている人がいるのに、気持ちを伝えることができない同性愛者の弁護士、四ノ宮。 

これは、彼らの毎日の生活を少しずつ切り取って、コラージュしたような・・・そんな映画。
笑いのつまった明るい映画ではないけれど、彼らは確実に前を向いて進もうとしている。
アツシは充分な法や保険の支援を受けられない怒りと・・・瞳子は認められたい、必要とされたいと思う願いと・・・そして四ノ宮は深く根付いている同性愛者に向けられた偏見の目と・・・それぞれが、それぞれの問題と戦いながら、もがきながら、どんなに苦しかったとしても、それでも前に進もうとしている。
その力こそが、生きるということ。それが、人生、というもの。

主演の3人が、オーディションで選ばれた新人さんだというのも、より親近感がわいて良かったのだと思う・・・リアルだった。本当に、すぐ身のまわりに居てもおかしくないような彼らに、どこか自分の姿を重ねていたりする。
周りのせいばかりにしていたら、変われるものも変わらないままになってしまう。時間はいくらかかっても良い・・・まずは1歩を踏みだしてみること。


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アツシの仕事は都内の橋梁の点検をすること。
瞳子も四ノ宮もアツシ自身も、自分自身を取り戻して少しでも明るい未来へ向かって「橋」を渡って行かなければいけない。まるでみんなが、安心してこの「橋」を渡ることができるようにと、アツシが今日も心を込めて仕事をしてくれているように思えてならない。
だから、きっと、みんな、大丈夫なはず…。



四つ葉



今回の佐賀へのプチ旅のもうひとつのお楽しみは佐賀県立美術館で開催中の「ユトリロとヴァラドン展」…特に詳しく知っているワケではないのだけれど、以前ユトリロについて読んだことがあって、彼の描いたもの悲しいモンマルトルをずっと観てみたいと思ってた。


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母であるヴァラドンへの想いや寂しさからアルコールに溺れ、皮肉にもそのリハビリの中で生まれた名作の数々。「白の時代」と言われるユトリロの描いた色のないパリ…。
「恋人たち」を観たばかりで、ちょっと繊細になっているワタシのココロには彼の孤独が痛いほど伝わってきて、ひとつずつ、じっくりと解説を読みながらユトリロに想いをめぐらせていた。彼もまた、どん底から這い上がってきたに違いない…やがて彼の絵は、ユトリロの「色彩の時代」へと移りかわっていく。



四つ葉



今年は、暑い暑い夏のあと、なんとなく寒くない秋がきた。このまま寒くならなければいいのに…と思ったりもしたけれど、こんな年は紅葉が見られないのだとか。
佐賀は武雄市の御船山楽園…紅葉の名所と言われ、ライトアップされた園内を散策しに足を延ばしたけれど、残念ながらほとんど色付いていない状態で、紅葉は見られず。
ここ何日間は急に冷え込んできたけれど、はたして今からでも赤くなるのかな。


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それでも池に浮かんだ灯篭と、水面に映るもみじはとても幻想的。
樹齢170年というもみじの樹も拝んだし、そのあとは冷えた身体を立ち寄り温泉で温める、という…これまでとはちょっと違った贅沢な佐賀での休日なのでした
カオ