1927年・・・・・【ジャズ・シンガー】
世に初めてのトーキー映画が送り出されました
セリフと音楽で華やかに飾られた新しい映画の形に多くの人が夢中になりました
しかしその舞台裏ではサイレント映画の芸術性を守ろうとする人たちのドラマもたくさんあったのです
声や訛りのせいでトーキー時代が到来すると姿を消さざるを得なくなるスターも数多かったとか…
ブロードウェイ舞台俳優に声がかかるようになり
ミュージカル映画全盛時代に突入するのもちょうどこの時期
チャップリンが「彫刻に着色するようなものだ」と言い
最後までトーキーに抵抗してサイレントにこだわったのは有名な話です
さて・・・本年アカデミーを受賞した【アーティスト】もこの時代を背景とした作品
3DやCGに彩られ最新テクノロジーを駆使した映画が相次ぐなか
あえてモノクロのサイレントで挑むところが新鮮
(まあ…この世界観を出せたのは現代の技術があってこそなのでしょうが…)
ミシェル・アザナヴィシウス監督はこの作品を撮るにあたり
かなりの数のサイレント映画の研究を重ねてきたそう
映画の原点に帰り新たな目線で映画愛をつづった素晴らしさには思わず涙が・・・
サイレント映画の時代が終わりを迎えていることを感じながらも
それを受け入れることができず最後まであがきながら没落していくジョージ
映画への愛とプライドとの間で揺れ動く姿がやるせない
一方エキストラからの道を一歩ずつ駆け上がり
トーキーのスターの座を手に入れるぺピー
ジョージを愛する気持ちは変わっていない…
それなのに心を閉ざしてしまった彼にそれが届かないのが切ない
さりげなく目を伏せたり眉を動かしたり
ぱっと咲く笑顔や哀愁ただよう横顔…そのたび白黒の濃淡が作り出す陰影には詩的なものが漂って
音楽にのせてセリフ以上に心情をとらえ物語をしっかり伝えてくれる
サイレント映画ならではの美しさがココロに染み入ります
あらゆるものを失ったジョージの孤独な後姿を
車の中から見つめるぺピーのシーンがあるのですが
その頬を伝う彼女の涙の美しいことといったら!!
もらい泣き必須です
酒に酔い投げやりになったジョージはある日
彼に唯一残された財産であるフィルムに火をつけてしまいます
燃えさかる炎の中…我に返った彼が必死で守ろうとするのが
ぺピーと初めて共演した作品のフィルム・・・
ダンスをともにする短いシーンだけれども
それは二人がお互いの愛に気づいた大切な瞬間がおさめられたもの
ジョージ・・・どうか助かって
ジョージの映画にも出演しパートナーとしてずっと彼を支えてきたアギー
話題どおり見事な演技をみせてくれました
最近では【人生はビギナーズ】のアーサーにも癒されましたが
アギーも期待を裏切りません
これは・・・まさにワタシが求めていた映画