平成2年に取得した「大型2種免許」ですが、ゴールド免許になったのは、まだ僅か直近の3回足らずだった事もあり、万年ブルー免許の輩ゆえに、ほぼ3年毎に実施される免許の更新には、本当に苦労して来ました。それでも、平成を乗り切り令和に食い込むまでの、約34年間(内、3年間は訳あって普通)に渡りキープ出来た理由は、偏に試験管の温情に拠るところが大きかったですね。大型免許の適性検査には、「深視力」と言う検査があるのですが、左右の視力に差がある私は、その検査に、毎回、手こずってしまいます。視力差が無ければ簡単な試験だと思うのですが、普通免許と同じスコープを覗き込んで、視力検査の後に大型免許は、同じスコープで引き続き、深視力検査が実施されます。

 

最初は、機械の中心に棒が3本立っているのですが、開始と同時に、真ん中の棒だけが前後にスライドします。3本の棒が重なった瞬間にボタンを押して、連続3回の結果が誤差の基準内であれば合格となる仕組みです。(これまで、誤差は5cm以内だったと聞いていましたが、R4年の更新では、2.5cm以内と言われました)まず重要な大前提として、この大型2種免許を持ってる人は、職業ドライバーの方が殆どです。しかも、公道を走行出来る免許としては、最高位に位置する免許ですから、試験管から受ける雰囲気や、対応も格段に違うと感じています。一応、視力検査はパスしている段階での検査なので、かなり甘くなるのが常でした。

 

視力検査の対策としては、メニコンのハードレンズを使用して、完全に矯正したレンズを装用して臨むので、視力検査は難なくパスするのですが、そのコンタクトを装用した状態で受ける新視力検査は、難解を極めてしまいます。しかし、誤差が大きく出ても「はい、休憩!外の緑でも見て来て!」と、何度でもチャレンジさせてくれるのですね。そんな試験官の温情を受けながら、毎回、ギリギリの体で、更新をクリアして来た私でしたが、平成17年の更新時の事です。例によって、視力検査の後で行われる深視力に苦戦していた私は、出張前で苛ついていたのか、何故かその日は我慢が足りず、深視力の検査の途中で、新視力検査を放棄して普通免許になることを申告したのでした。

 

試験管は、驚いた表情で「まだ、更新期限まで日数があるから、そんなに焦って結論出さなくても、コンタクトを新調してから、また受けにおいでよ」と、いつもの優しい対応でした。しかし、私は頑なに「いいえ、もう良いですから、本当に普通免許でお願いします」と繰り返しました。すると、試験管も「貴方が、本当に普通免許を希望しているのか、分かりませんが、一時的な気の迷いかも知れないので、今回は「降格」という扱いにしときましょう。また、後から免許が必要になった時は、窓口で今回の仔細を伝えて、深視力検査だけ受けに来たら良いですよ」と言ってくれたのでした。

 

その後、次の更新までの期間、新視力の追加検査を受ける事もなく、普通免許という立場で過ごした私は、相変わらずの変わり映えしないブルー免許で、平成20年の更新年を迎えました。その時、3年前の試験管の「今回は降格にしときます」と言う言葉を思い出して、思い切って、窓口で申請してみたのでした。すると、私の様なケースは珍しいのか、かなり待たされましたが、僅か、1回だけのチャンスでしたが、「昇格」が出来ると言う返答を職員の方から頂いたのです。そして、その後、視力検査の後に深視力検査を実施し、その時も、かなりの甘々で対応して頂き、平成20年の更新検査で見事に大型2種免許に返り咲く事が出来ました。

 

しかも、その時の返り咲きには、副産物というか副賞が同時に授与されて来たのでした。その時の私は、過去3年間で「無違反」という状態ではなかったので、平成20年の更新で、短期の違反者講習の後に、免許を交付されるという流れだったのですが、違反者講習の前の適性検査後に、「昇格」が決定した為、免許センターでの違反者講習が自動的に免除となったのでした。ただ、免許センターの違反者講習は逃れても、免停者に実施される違反者講習は、更新以前に決定していたので、なるべく短期間に終わらせようと、早目に予約を取って準備していました。その講習と言うは、1発で免停になった違反者ではなく、小さな違反を繰り返して累積点数が6点になった違反者に課せられるものでした。

 

覆面パトカーとかねずみ取りで、1発免停になったのであれば、必然的に行政処分付の1ヶ月免停になります。しかし、私の場合は累積で免停になったので、「行政処分のつかない免停講習扱い」でした。それは、講習期限までに自動車学校等で受講すれば良いのですが、そんなに累積違反者は居ないだろうと、悠長に構えていました。ところが、いざ予約しようとすると、既に広島市内には、私の期限内に受講できるところは皆無でした。仕方がないので、電車で片道1時間半の福山市の自動車学校を予約したのでした。早朝からJRで福山市に移動しました。通学や通勤客の中で、場違いな私服の親父がいる風景は周囲に違和感を与えるには十分だったでしょう。俯きながらも何とか1時間半を過ごし、目的地に到着したのでした。

 

福山駅からは、安易に徒歩移動にした所為で、予約した自動車学校は、予想したよりも遠かった事もあり、タクシーにすれば良かったと後悔しながらも、最後は走ってなんとか間に合います。免停講習は、二つの選択肢が用意されていて、料金が高い「運転講習」か、料金が安い「交通安全活動体験」のどちらかでした。その日の講習者は全員で6人で、運転講習が2名で、交通安全活動体験が4名と分かれました。私は、料金が安い「交通安全活動体験」を選んだのですが、最初は、違反者6人全員での、ビデオや事故体験のシュミレーションの授業を受講しました。午後から、2グループ分かれての実地講習でした。

 

運転講習の詳細は不明ですが、私の参加した「交通安全活動体験」は、交通安全のたすきを肩に掛けて、横断歩道に立ち、道行く人を誘導すると言う役割でした。つまり、早朝からPTAのお母さんが、子供達の為に実施してるような誘導が違反講習の内容でした。私達のグループは、丁度、4人だった事もあり、福山駅前の交差点の四隅に、それぞれ立って、約1時間半くらいに渡り、横断歩道を利用する歩行者を誘導したのでした。私の担当した場所は、駅前方向に直結するポイントだったため、引っ切り無しに人が行き交い、他の人よりも誘導時間が長かった気がします。

 

そんな中、歩行者側から見たら私達は「善意の人」でした。ボランティアで活動してる様に見えていた事でしょう。いろんな人から暖かな激励の言葉を受けて、笑顔で返したものの、その都度、心の中では「これは、単なる違反講習なんですよ~!本当は、嫌々やってるんですよ~!」と叫んだものでしたね。監視人の講習終了の合図を受けて、誰一人として、後ろ髪を引かれることも無く、ササッとその場をあとにする私達を見て、歩行者は唖然としていました。自動車学校に戻り、画面を見ながらの反射反応体験(急な飛び出しに対応出来るかを検査)を最後に「行政処分無しの免停講習」の終了となりましたが、運転講習者の余裕ある表情を見たら、私も4千円高い「運転講習」にしとけば良かったかなと、少し後悔したものでしたね。

 

下の写真はイメージです。