京都で学生時代を過ごしていた私の下宿に、高校時代の友人が、自転車に乗って遊びに来た事がありました。その友人は大学には進学せず、東京で漫画の専門学校で学んでいましたが、そこで知り合った友人と一緒に、自転車で日本一周をする事になった様で、既に東京から出発して東北、北海道を周り、これから沖縄に向けて南下するタイミングで立ち寄ったのでした。二人が乗っていた自転車はブリヂストンのユーラシアと言うモデルでした。
その友人は、四国、九州、沖縄も制覇して真っ黒に日焼けして、帰り道にも立ち寄ってくれましたが、その後、無事に東京に帰り着いて、自転車による日本一周が完結したとの知らせを貰いました。その後、その友人が、再び、遊びに来た時には、なんと、自転車からバイクに乗り換えていたのでした。そのバイクは、ホンダの水冷4ストV型2気筒のGL-400でした。彼はヘルメットを2個持って来てくれていたので、二人乗りで、観光がてら京都市内を走り回ってくれましたね。
当時の京都市内には、ホンダGL-400に乗っている人が少なかったのか、どこに行っても注目を浴びた事で、友人もとても嬉しかったのか、益々、色んなところに行ってくれました。そんな光景を、目の当たりにした私に、与えたインパクトは相当なものでした。これは!バイク元年だ!とばかりに、早速、中型二輪免許が取得可能な、自動車学校に申し込む事にします。その頃には、普通免許は取得していたので、朝晩2回の集中講習で最短で取得する事にします。
最初こそ、指導官のレクチャーを受けたものの、その内には、他に手の掛かる人がいた所為なのか、コース内を自由に乗る事を許されました。スラロームも一本橋も、急制動も一発でクリアし、終了試験も一発合格でしたが、試験官から最後に不吉な言葉を投げ掛けられます。「一発合格した奴は必ず事故を起こす」と。試験官は戒めのつもりで言った言葉だったと思いますが、当時は、生徒の一発合格を喜べよ!って思ったものでしたね。笑
免許が手に入ってからは、バイクが欲しくて堪らなくなるのは必然でした。新車を買える訳もなく、中古販売店を梯子しても、高価なバイクばかりでした。そこで、個人売買ならリーズナブルなバイクが手に入るかも知れないと、当時人気だったバイク雑誌「モーターサイクリスト」と「オートバイ」の個人売買コーナーに注目すると、意外と人気のバイクが、手頃な価格帯で表示されていました。私はこれだ!と思います。
そこで、時間勝負とばかりに力技で対処する事にします。両雑誌の販売日当日に、烏丸通りと北大路通りの、交差点近くにあった本屋に、開店前から待機して、本屋のシャッターが開くのを待つ事にしたのでした。時間が来てシャッターが開いたと同時に店内に飛び込み、両雑誌の個人売買コーナーを見比べて、これだ!と思うバイクが載っている雑誌を購入したのでした。そのバイクの売主は大阪府高槻市の人でした。直ぐに取りに行ける地域も重要なポイントでした。
私が注目したバイクは、ホンダのエルシノアMT-250でした。価格は7万5千円と表示されていて、正に私の希望価格内でした。早速、電話して取りに向かう事にしました。売主の方も、まさか、速攻で購入に来る輩がいるとは、思いも寄らなかった様で、電話した当初はドギマギした感じでしたが、私の熱意?に動かされたのか、その内には、分かりました!お待ちしています!と言って頂けました。住所を見ながら訪れた売主のご自宅は、洗濯屋さんでした。
早速、挨拶を交わして、バイクを置いてある場所に案内された私でしたが、そこで、ある嬉しいポイントに遭遇する事になります。と言うのは、高槻市の洗濯屋さんは、所有者としては二人目で、最初に新車購入された方から譲って貰ったものの、殆ど乗る事は無く、玄関(室内)に置いていたそうで、走行距離も僅か1万1千Kmでしたが、その殆どは、最初の所有者によるものだと言う事が判明したのでした。
購入代金と引き換えに書類を受け取り、速やかに手続きする事を告げて、近くのバイク屋を教えて貰って、取り敢えずはヘルメットを購入する為に向かいました。選んだヘルメットは「SHOEI」のGOシリーズと言う、顎の部分が黒いフルフェイスでした。私は、意気揚々と、そのヘルメットを持って売主の元に戻りました。売主の方からも、えっ?フルフェイスなん?と驚かれましたが、それを被って、バイクに跨った私は、売主に見送られながら京都の下宿先に向けて出発したのでした。