aさんは90歳を超えた女性だ。
残念ながら治療の術が無くなりうちの病院へ
回されて来た。
悲しいけれどここは そう言う人達の受け入れ先なのだ。
若い頃から精神を患い、家族や親類に見捨てられた人。
認知症になり、いろんな施設をたらい回しにされた人。
子供に裏切られて捨てられた高齢の親。
僕の勤務先は
そう言う方達の終の住処となっている。
aさんは治療の手段がない。
ただただ生命を維持する数値が低くなって行くのを見守るばかりだ。
今日は親類が集められ、医師からの説明を受けた。
親類は遠方に居て何かあっても直ぐには駆けつけられない。
今日が最後の別れだと覚悟して会いに来た。
親類が僕ら病棟スタッフに願うことは
みんなで笑顔で見送ってあげてください。
これだけでした。
実は当の本人であるaさんはとてもケロっとしていて普通に会話をして意識もしっかりしている。
今日のお見舞いには、孫、ひ孫まで集まりサヨナラしに来たのだが、aさんはあんまり子供が多いから知らない家の子が混ざってるかと思った!
などと冗談を言っている。
もうすぐ別れが来るのを知っていながら接するのは辛い。
今日撮影したレントゲンはaさんの肺の片方が
水が溜まり真っ白になっていた。
今日、僕はレントゲン台の上で
aさんと手を繋いで話した。
遠い遠い昔の話だ。
本人はとても明るく話すのにもうすぐお別れ、と知ると涙が出そうになる。
aさんもお兄さんと話すの楽しみなんだ。とずっと僕の手を離さない。
明日も出勤だよ。明日も来るから。またね。と手を振って別れた。
今日はなんだか切ない気持ちになり、そのまま家に帰らないでずっと港から海をみています。
明日もaさんと話せるかな。
