先日。
車で朝通勤していると、具合がとても悪くなってきた。
頭は冴えていていつも通りに後方や両側を意識しながら、右足でアクセルとブレーキを操作し、ハンドルを動かす。
だけど、腰から膝にかけて鈍痛が走り、冷や汗が出てきた。
運転を続けるのが少し怖くなって、私は、車を停めて休憩する事にし、ギアをパーキングにしてサイドブレーキをキツく引き、シートを倒した。
頭がクラクラして腰の鈍痛も治まらない。車の中で目を閉じ、小さく音量を絞ったカーラジオを上の空で聞いた。
私は、初潮の時から生理痛が強かった。
小学校で教わった性教育で、女には生理(月経)が毎月起こること、それは妊娠するために必要な体の機能であると知った。私は何故か大人への憧れが強かったせいか、生理が来たら一人前の大人になれるんだ、いつなるんだろう? と思っていた。
そんな私の初潮(初めての生理)は中学二年生だったと記憶している。下着が赤く染って具合が悪いし、下腹に感じる「内臓を雑巾絞りされているような」痛みに辟易して、あれだけ憧れていた生理がこんなにも辛いものかと、喜ぶどころか自分の体を呪った。あてがうナプキンの分厚さと通気性の悪さ、身体の痛みなどなど、これが何年も何年も継続するのかと思うと、女に生まれたくなかった、と少し親を憎んだ。
20代で妊娠と出産をした私は、世の中でよく言う「出産すれば体質が変わって重かった生理痛は軽くなる」という話を鵜呑みにしていた。確かに出産して母乳を与えている時は生理もなかったので、生理痛へのフォーカスはなかった。育児というもっと大変な事柄でそれどころではなかったが。
しかし、パニック障害を発症してから服薬のために母乳を与えられなくなった私は、母乳が止まるまで溢れる母乳を洗面所で絞る毎日を続けていた。元々母乳とミルクの混合育児をしていたので、こどもが泣きわめくことはなかったが、ほどなく生理が再開するとやってきたのは下腹部痛。
あれ?
生理痛、なくなるんじゃないの??
裏切られた! と泣きたくなるくらい、私はまた毎月鎮痛剤を握りしめるようになった。
あれからずいぶん年月が経ち、そろそろ更年期というワードが気になる年頃になった。
40代に入ってから私の生理はハードモードに突入した。生理痛、腰痛、頭痛、前々からあった月経前症候群(PMS)による精神不安定。それに加えて強い貧血が出てきた。
心療内科で鉄剤も処方してもらっているが、それでも鉄分が足りない状態だ。
……車の中で目を閉じていたが、カーラジオから流れてくるジングルで、いつもなら会社に着いていなければいけない時間だと悟り、慌ててシートを起こしてゆっくり仕事場へと向かう。
やはり頭は冴えていて、的確に運転は出来ていた。
が。
やっとのことで会社の駐車場に車を停めて、エンジンを切る。さて、と立ち上がろうとした瞬間、私はアスファルトに倒れ込んだ。
膝と腰に、全く力が入らない。
車の横で座り込んでしまったまま、焦る私。
会社へ行くには少し歩かなければならないが、その「少し」すら出来ない。
半ばパニックになりながら私はパートさんの携帯に電話をした。パートさんも私が車からなかなか降りてこないのに気づいてくれていたらしく、そっちに向かってますから、と答えてくれた。
その日は結局、必要最低限の仕事だけして、あとはソファのある部屋で休憩させてもらい、やはり起きても仕事にならないぐらいの体調だったために早退する事になった(翌日からは平常に戻ったが)。
今回の生理がその日から始まり、そろそろ生理も落ち着く頃になるが、これを書いている今も下腹部痛とめまいが強く、毎度の事ながら子宮の暴れっぷりに振り回されている私。
毎月毎月面倒で苦痛なこの生理とは、まだあと数年付き合っていかなければならない(平均の閉経年齢は50歳前後とされており、出産をしている人はその分閉経が数年後になるらしい)。
女特有の機能である生理。
個人差のとても大きい機能で、痛みを感じない人、動けなくなる人、すぐに終わる人、1週間ほど続く人、と、ひとくくりに出来ないから、生理ごときで、なんて言葉を受ける人も多い。
しかも、特別な事情(子宮を取った人など)がなければ生涯の半分の期間、この忌々しい機能に振り回される。
歳を経て生理が無くなると女ではなくなる、なんていう声もあるが、もうサッサとこんな辛い機能とはオサラバしたい。
人間の体は不思議だな、とか思うといえば思うが、ホント、毎月のこの辛さはなんとかならないだろうか??
(※これは私の場合で、すべての人に当てはまるわけではありません)