
IKEAで食器を買うと、なぜか長持ちしない。
グラスも、箸も、お茶碗も。
価格からして、脳のどこかで、消耗品と認識しているの
かもしれない。
先日ある漆職人さんの話を聞いた。
漆塗りのお茶碗は、価格と耐用年数がほぼ同じだそう。
300円のお茶碗は、300日。
3,000円のお茶碗は、3,000日。
そう考えると、1年もたない300円のお茶碗は
購入時の瞬間コストは安いが、やはり単なる消耗品以外
何物でもない。
だって、1年経たずにさようなら、なのだから。
そこに「道具を愛する」という心は芽生えにくい。
逆に言うと、3,000円のお茶碗は、財布からお金を出すときは
一瞬躊躇しそうだが、8年間大切に使う事が出来る。
どちらも同じ1日1円だが、断然後者の方が愛着を持って
道具を使うことが出来、それはとても人間的である、と思う。
そう思ってから、義母に無水鍋を送った。
ガシガシと使って、そして大切に手入れをして欲しいと願って。
6人の子供がいる母親が使い倒した無水鍋を、
将来譲り受けようと思う。
そうすることで、母親が愛用した鍋を使うというストーリーが
付加された、世界で唯一の鍋になるだろう。
空間プロデューサー
和泉