「どこか、二人きりになれる静かな場所がいいな。」
私は内心の動揺を隠して、しおらしく言った。
乙女の私から、ラブホがいいなんて、口がさけてもいえない。
「そうか、俺もそう思っていたんだよ。じゃあ、行くか。」
先生は、思いのほか喜んでくれた。
やったあ~、勝負下着つけてきた甲斐があるというもんだ。

しかし、先生が私を連れて行ってくれた場所は、漫画喫茶、漫喫だった。
確かに、条件は満たされているけど、私の欲望じゃなかった、
私の想いは満たされないわ。
「いやあ、最近ずっと卒論やら、採用試験の勉強で、ゆっくり
漫画読む暇がなくてさ。禁断症状寸前だったんだ。」
おい、おい、こっちはあっちの禁断症状だぞ。
気づけよ、馬鹿野郎。
何だ、その漫画は。刃牙道、龍の血を継ぐ男、ケンガンアシュラに
龍狼伝など、乙女の私にはまったくわからない世界じゃんか。
ちっとも、ロマンティックじゃない。
この、バカチンが。
私は、無言で漫画をむさぼり読む先生に、心の中で毒を吐いた。

面白くない私は、漫画を探しに行った。
お嬢様育ちの私は、漫画喫茶に入るのも初めてで、ずらりと林のように
立ち並ぶ本棚の数に驚いたが、正直、読みたい漫画は見つからなかった。
と言うより、あまり漫画に興味がない。普段、テレビでもアニメはあまり見ない。
ドラマは見るけどね。
由緒正しき綾小路家で禁止はされてないが、家風にあわないっていう感じかな。
パパなんか、テレビはNHKしか見ないぞ。

それは、さておき、ダーツゲームをやっているグループがいた。
珍しそうに見ていたら、いかにもチャラそうなリーダらしき男が、
声をかけてきた。
「君、一人。一緒に、遊ばないか。」
これって、もしかしてナンパ。今日は黒縁ではない眼鏡だけど、
私の魅力がわかってるじゃんか。
「え~、でも。私やったことないし。」
「僕が優しく教えてやるからさ。」
「え~、でも。私、運動神経ないし。」
「大丈夫、的に向かって投げるだけだから。」
「え~、でも。私、お箸より重い物持ったことないし。」
「面倒くさい、おい、みんな手伝え。」
業を煮やした男は、仲間に命じて、私を奥の個室に
連れ込んだ。
慣れたものらしく、役割分担ができていて、私の手足を
抑え込み、口を塞ぐ。
チャラそうな男が、素早く私の上着を上にまくし上げ、
胸をブラの上から両手で激しくもむ。
「こんなエロいブラ付けやがって。それに、俺の睨んだ通り、
 いい体してやがる。」
えっ、マジ。これって、もしかして集団レイプ。
こんな場所で、こんなことってあるの。信じられない。
おまえらのために、勝負下着つけてきたんじゃないぞ。
私は、嫌悪と憎悪に、憤怒と口惜しさに、必死に抵抗するが、
獣のように欲望を滾らせる男たちを喜ばすだけである。

私のブラがはずされそうになった・・・・。